第5話


 とぼとぼ歩くのも限界に近づいていたが、帰るのもまた一苦労だった。


 地下での道を思い返しながら帰る。


 そして気付けば地下と同じように暗くなっていた。


 あぁ、これが晩か。


 晩は思っていたよりも明るかった。


 何故ならライトがいたるところにあって人々を照らしていたからだ。


 地下でもライトは必須だが、こんなに色んな形や色は初めて見た。


 地上は晩も綺麗なのか。

 少し心が癒された気がした。


 そして、俺はこんな時こそ冒険しようと思い立った。


 疲れた体に鞭を打ち、寄り道をしてみる。


 そういえば地上に来てから何も食べてないな。

 食べることすら忘れていた俺は考えた途端にお腹が鳴った。

 

 ポッケを探ってみると現金が1000円と520円あった。


 こんな大金持ってたっけ?まぁいい今はそんな事。


 色んな店が立ち並んであり、俺はどこで何を買ったらいいのか迷っていた。


 とりあえず目についた店に入ってみる事にした。


「いらっしゃいませ〜何名様ですか」


「一人です」


「お好きな席どうぞ〜」


 俺は適当に空いていたカウンターに座った。

 どれどれ、机に張り付けてあったメニューを見ると、ぎゅうどん?と書いてあり、とにかくお腹が空いていた為それを頼む事にした。


 注文すると、ものの数分で目の前に運ばれてきた。


 何やら茶色一色で彩りはなかったが、食欲をそそるいい匂いだ。


 机に備え付けてあったスプーンを一つ取り、ぎゅうどんをすくう。


 脳にまで届く程の出汁の香りと共に口に頬張った。


 っあっふっ、あふっっ、はふっっっ。


 熱くて口の中が火傷しそうだったが、はふはふしながらなんとか噛み締める。


 ん?!


 んん!?


 これは‥‥なんて美味しいんだ。


 程よい弾力とスープが米にからんで口の中が幸せだ。


 こんな美味しいものが地上にはあるのか。


 地下での食事といえば、スーパーで売っているフリーズドライ。


 店で出てくるものもフリーズドライの為、こんな食感は初めてだ。


 俺はあっという間に平らげてしまった。


 少しお腹もホッとし、今日はもう帰ろうと思い、レジに向かう。



「ごちそうさまでした!」


「426円です」


 おぉ‥‥‥。


 俺はうっかり値段を見ずに注文していたせいか高い事に気付かなかった。


 正直地下で426円と言えば、一月の水道代くらいだ。


 でも仕方ない、ここは払わねば。


 ポッケから500円を出し、おつりの74円を受け取ると、それをまたポッケに突っ込み、店を出る。


 うん、これからは慎重に頼もう。

 そう心に誓った。


 それにしてもそんなに高級店ってわけでもなさそうなのにあんなに高いなんて地上はどんな経済をしてるんだ。


 給料を貰うまでは節約しないと。

 そう考えた俺は帰りにスーパーに寄ってみる事にした。


 しかし、またもや驚く事になる。


 なんだ、ここは‥‥。



 俺の目に飛び込んできたのはまるで‥‥‥そう、なんて言えば正しいのか、まるで‥‥‥畑だ!


 地下にはもちろん畑なるものはない。これも俺が優秀だからこそ知っていた知識なのだ。


 しかし店の中に畑があるなんて、俺はてっきり畑とは外にあり、ツバの広い帽子を被った腰が曲がった人が作っているのだと思っていた。


 他にも珍しい物が沢山あり、目が回りそうだった。


 それにやはりどれも高い。


 地上は物価がこれほどまでに高いのか。


 俺は諦めて帰る事にした、しばらくは道に苦戦するだろうが、なんとか今のところは出来ている気がする。


 やっとのことで家に帰る事が出来た俺は、一気に力が抜け、そのまま布団にダイブ。


「‥‥おやす‥み‥‥‥」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る