4話「憧れのギルド!!―前編―」

 何とかヴィクトリアからお金を受け取ると、俺達はギルドに向けて歩き出したのだが……。

 ここでまたもや障害物が現れた。そう……俺はギルドの場所すら分からないのだ。

 どうする? この泣きじゃくってる女神に聞くか? うーん……それしか方法はないか。


 人に聞くのもありなんだが、ヴィクトリアが泣きまくっているせいで何やら避けられている気がするんだよな。

 さっきから通行人の目が皆、冷たい視線だし。


 や、やめてくれ! そんな目で俺を見るなぁあ!! と言った感じだ。

 しかーし! そんなのを気にする俺ではない! 

 だってこんな冷たい視線は日本に居た頃に散々浴びているからな……フッ今更だぜ。

 っとそんな事よりも聞くことがあったな。


「おいヴィクトリア。ギルドってどこにあるんだ?」

「う”う”ぅ”ぅ”う”!!」

俺は腰にしがみついているヴィクトリアに聞くと、何やら凄い形相そうで睨みながら唸っている様子だが、顔立ちだけは美女なので怖くも何ともない。


 それで威嚇のつもりなのだろうか?


「唸ってないで答えろよ。このままじゃあ、街に来ただけで一日が終わっちまうだろ!」

「絶対に教えません! 私のお金を取った罪は重いのです!」


 この女神本当にめんどくさい。殆どコイツのせいで物事が進んでいない気もしなくもない。

 だがまあ、お金を返さなとコイツは一歩も動きそうにもないし、ギルドの場所も教えてくれないだろう……。


 俺は悩んだ末に一つの提案を出した。


「はぁ……。このお金はギルドで使うのは確定事項だからな! だけど……その後のクエストやらで得た初回の報酬を、お前に少し多めにやるからこれは初期投資とでも思ってくれないか?」

「良いでしょう! その話乗ったァ! さあギルドに行きますよユウキ! 何をグズグズしているんですか!」

即行でヴィクトリアが反応すると、どうやらこの提案は効いたらしい。

 

 さっきまでの泣き顔が嘘のように元気に満ち溢れた顔になってやがる。

 まったく現金な奴だぜ。


 こうして何とかヴィクトリアを説得させる事に成功すると、改めてギルドに向かって歩き出した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「こ、ここが……冒険者達が集まるギルドッ!!」

歩いて数分で着くと俺達の前には木と煉瓦を使って作られたであろう建物が堂々と建っていた。

 

 す……凄い!! あのゲームやアニメで出てきた建物にそっくりだ! 

 きっとラノベの主人公達もギルドを前にしてはテンションが上がっていたに違いないッ!

 現に異世界転生した俺が言うんだ。間違いない!


「感極まってるのは良いんですけど、早く中に入りましょうよ~? 私もう歩き疲れましたよ」

ヴィクトリアは俺のテンションとは対照的に冷静に言い放った。


「お、おう……すまない。ついテンションが爆上がりしてしまって意識がトリップしていたな」

俺は高鳴る衝動を抑えて、いざ! ギルドの扉に手を付けると勢い良く開けた。


――ここから、俺の魔王討伐の冒険が始まる――


 ギルドの中に入いるとそこは酒場も併設されているのか、肉の焼ける良い匂いとアルコールのような匂い漂ってきた。

 そう言えばここに来てから何も食べてないことに気がつき……普通に腹が減った。 

 クッ……! まさかこんな所で飯テロに遭遇するとは! あとでお金余ったら何か買っていこう。


 できれば肉系のを!


 飯テロにあいつつも受付カウンターを探すべく奥に向かって歩いていると、見るからに冒険者といった風貌の大剣を背負った男やローブを纏って杖を持っている魔法使い見たいな人達が席に座りながら話している所を発見した。


 んんーー!! これだよこれ! 如何にも冒険者ギルドって感じがして凄くて良い!

 俺は周りに居る冒険者達に目を向けていると、後ろから野太い声で話し掛けられた。


「よう兄ちゃん! 見慣れない格好だがどこから来たんだい?」

「えっ? あの……その……」

振り返るとそこには上半身裸の大男が立っていた。


 し、しまったぁぁ! この手の質問は聞かれると予想しとくべきだった!

 どうするか……変な事言って不審がられるのは良くないよな。

 

 俺はこの手の人はクエストや冒険知識について教えてくれるタイプの人だと見ている。

 だって序盤に気さくに話し掛けてくる人って大体そうじゃん! ラノベでもそうだったもん!

 つまり! ここでのファーストコンタクトによって今後の冒険者生活が大きく変わることになる筈だ。


 ……だが正直何も思いつかん! 

 どうしよう…………ん? 待てよ? ヴィクトリアに聞けば良くないか?

 アイツ何か知らんけど土地勘とかあったし。そうだよそうしよう!


 俺は隣に居るヴィクトリアに顔を向けると……何故か奴の姿はなかった。

 一体どこに消えたんだと、視線を横にずらすと直ぐに分かった。


 ヴィクトリアは酒場の方で何やら串物を買っていたのだ。

 アイツまじで……! どこからその金出したんだよ! 俺が預かってた筈だろ!

 まさか、まだ隠し持ってたのか!?


「おい兄ちゃんどうした? 気分でも悪いのか?」

俺がヴィクトリア方を見て固まっていると、中々返事をしない事が気になったか大男は心配してくれたみたいだ。


 何て優しい人なんだ……!

 あのアホ女神とは大違いの優しを秘めいている気がするぜ。


「あ、いえ……大丈夫っす。自分達は東の国の小さな田舎からきました……」

……これ以上話を伸ばすと完全に不審がられると思い、俺は咄嗟に浮かんだ事を言った。


「何だそうだったのか! そりゃあ随分と遠い所からきたんだな! って事はギルドは初めてなのかい?」

「ええ、そうですが……」

「よし! ならここは先輩冒険者としてギルド内をざっくりと説明してやろう!」


 おぉおお!! これは願ってもないチャンスが来たぞ! 

 やっぱりこの人は序盤で色々と教えてくるサポーターNPC見たいな人だった! 

 圧倒的感謝感謝だぜ!


「あ、ありがとうございまーっす!」

俺はすぐさま四五度の最敬礼のお辞儀をした。

 

 この世界でお辞儀の角度で意味が伝わるかは分からないけど。気持ちは大事だ!


「おうよ! まずは……ギルドに入って右手にあるあの木のボードが提示版でクエストとが貼られているんだ。難易度はC~SSランクまであって、初心者はまずレベル上げも兼ねてCランククエストを受けるのが多いな!」


 なるほど! あれがクエストが貼ってあるボードだな。よし覚えたぞ!

 しかし難易度設定か、この辺はゲームとかでもよくあったな。

 Cランク帯ならきっとスライム狩りとかが主なクエストな気がするし、後で確認しておこう。


「次に左のフロアだが、あそこはクエストの受注や報酬を貰ったりする受付カウンターだ。兄ちゃん達が最初に行くべき場所だな! そして最後に右のフロアだが……見ての通り飯を食うとこだ。俺のオススメはやっぱりピギーのステーキだな! あれをミディアムで食べて最後にウォルツを飲んでシメるんだ! まあこれぐらい知っていればここではやっていけるぜ!」

大男は右手に持っているジョッキを飲みながら教えてくれた。

 恐らく中身は先程言っていたウォルツ? だろう。


「何から何まで本当にありがとうございまっす! パイセン!」

「おう! パイセンが何かは知らないが、また分からない事があったら聞きに来な!」

お礼を言うと大男は笑顔で自分の席へと戻っていった。

 

 この異世界に来て初めて良い人に出会えた気がする! 

 よし……まずは言われた通りに受付カウンターに行くとしよう。 

 そこで冒険者登録しないと何も始まらないからな。


「あの~? はなひはおわひまひたか?」

「お前はやっと戻ってきたのか……。というよりちゃんと食べてから喋ろよ」

買い食いしてシレっと戻ってきたヴィクトリアは口をモゴモゴとさせて話し掛けてきた。

 

 くそぉ……自分だけ串物食いやがって! あとで少し分けて貰おう。


「ん……コクッ……それで、話しは終わりましたか?」

ヴィクトリアは口の中の物を飲み込むと、再び同じ質問をしてきた。


「あぁ終わったよ。有益な情報だらけだったぞ」

「そうですか、では早くその情報を使い次の行動に移しましょう! 私はもう足が限界なので休みたいのです! パパッと終わらせますよ!」

ヴィクトリアは自分のふくらはぎを手でバシバシ叩いてアピールしてきた。


「はいはい。分かったからさっさと受付カウンターいくぞ」


 そもそもお前が買い食い何てしてなければ、スムーズに事は進んだと思うんだけどな。

 と、俺はそんな事を思いながらヴィクトリアと一緒に受付カウンターへと向かった。






 こ、これは……受付のお姉さん方がみんな美しい! そして圧倒的なまでの巨乳率ッ!

 異世界とはこんなにも女性のレベルが高いものなのか!? 


 んー! これだけのお姉さん方と大きいおっぱいを見れただけでも、ギルドに来た甲斐があるってもんだな!


 よし……せっかくだから俺は一番可愛い受付のお姉さんの所にするぜ!

 俺はそう決めると、一番右奥のカウンターに居る巨乳で谷間が露出している服を着たお姉さんの方に向かった。


 うーむ。やはりこのお姉さんは人気なのか? 

 若干列ができていたが、まあ今更なにを焦る事もないでの大人しく並ぶ。


「あ、いま顔と胸見て判断しましたね? そうですよね? ねえねえ?」

何かを悟ったのかヴィクトリアは急にこっちを向いて真顔で言ってきた。


「ち、ちげーし! たまたまだよ! 俺は見た目で判断しない人間だ!」


 チッ、この女神……変なとこで勘が鋭いな。

 しかし、しょうがないだろう。思春期男子にとっておっぱいとはロマンの塊なのだ。

 日本にいた頃はまったく縁がなかったおっぱい! ならば少しでもおっぱい! を見たいだろう。


 それにだ。俺はこの異世界では好きにやらせて貰おうと思っている。

 元々、間違えて殺されて連れてこられたのだ。多少は好き勝手やらせて貰えないと理不尽だ。


 さて、そうこうしていると俺達の番がやってきた。


「ようこそ冒険者ギルドへ! ご要件は何でしょうか?」

元気に弾むような声で俺達に喋り掛けてくれるお姉さん。

 

 赤毛がよく似合う女性でやっぱり近くで見るとおっぱいが凄いぜ!

 と、とにかく凄いぜ! 語彙力を失うほどに!


「はい! 今日は冒険者登録し、ししに! 来ましたぁあ!」


 や、やべー! 勢い余って途中で噛んだ挙句に、最後はうわずった声になってしまった……。

 は、恥ずかしい! 


俺が緊張と恥ずかしさで固まっていると、受付のお姉さんも一瞬反応に困って固まったいた様子だが。

「……あっ! 冒険者登録ですね? では少々お待ち下さいね」

と、だけ言って後ろの方に下がっていった。


「ユウキって女性に対してコミュ障なんですか?」

「う、うるさいな! 悪いかよ!? ……あといつの間に名前呼びなんだよ」


 女性に名前で呼ばれた事なんてクラスの点呼の時ぐらいで、殆どなかったからなぁ。

 腫れ物扱いでクラスメイトには避けられてたし。


 だから……こんなアホ女神からでも名前を呼んで貰えると、何気に嬉しい自分が居る。


「ん? 結構前から名前で呼んでましたよ。それより! 何であの受付の女性には変な声が出るのに、この美しい純然たる女神の私にはそんな刺のある言い方なんですか! 納得いきません!」


 やっぱり駄目だ……この女神。俺のさっきのしんみりとした感じ返せよ。

 それに態度が違うのは当たり前だろう。自分がしてきた事を忘れたのか? この女神は。


「納得も何も、お前は自分の行いを振り返ってみろよ。そうしたら分かると思うぞ」

「むー! この完璧な私に間違い……な……んか……」

俺が人差し指をヴィクトリアに向けて言うと思い当たる節があるのか、表情が白くなっていった。


 これぞ顔面蒼白と言うやつだな。

 おぉ白い白い……本当に生きてるのか疑わしいぐらいに白いな。

 そもそも女神って生死の概念があるのか? うーん……分からん。


ま、今はそんな事よりも。

「おい間違いが何だって? 言ってみろよ、オラほらぁ!」

俺はヴィクトリアが何か言い掛けた事をいやらしく責める事にした。


「う”ぅ”ぅ”う”う”う!! すみませんでしたぁ!!」

ヴィクトリアはまたもや唸って威嚇しだしたが、自分に非がある事を認めたのか謝ってきた。

 

 あの威嚇は可愛いだけだから意味ないんだけどな。

 まあ、面白いしから敢えて言わないけど。


「よーし、許しはしないが今は気に止めないでおいてやろう。俺は心が広いからな!」

「どこがですか……。私をここまで口攻撃でモテ遊んでたじゃないですか……」

ヴィクトリアは死んだ魚の目をしてボソボソと呟いていた。


 そしてそんなやり取りをしていたせいか、受付のお姉さんがいつの間にか戻っていて、俺を冷かな目で見ていた。


「あのー? 終わりましたか?」

「あ、はい……何かすみません……」


 とりあえずこのお姉さんとのファーストコンタクトは失敗したように思える。

 はぁ……これは俺のせいなのか?


「ンンッ……ではまず冒険者登録の発行手数料で千五百パメラ頂きます」

「こ、これで大丈夫ですかね?」

俺はヴィクトリアから巻き上げたお金を受付のお姉さんに渡した。


 異世界語は理解できても金額とか分かんないし、足りなかったらどうしよう……。

 

「一万パメラですね! はい、大丈夫ですよ。二人分なので七千パメラのお釣りです!」

「はいっ。ありがとうございます……」

 受付のお姉さんは慣れた手つきでお金を処理すると俺の手にそっとお釣りを乗せてくれた。


 おぉぉぉおお!! 女性の柔らかな手が僅かに俺の手に触れたぁあ!

 ううっ……日本では絶対に起きなかったイベントだぁ。

 コンビニとかで買い物すると何故かちょっと上からお釣りを渡される人生だったから、普通に嬉しい!


 しかし、あの紙切れを一万パメラと言っていたけど……もしかてパメラとは円と同じ考えなのだろうか?

 お釣りも七千パメラだったし。

 だとしら凄く馴染みやすいのだが……そもそもパメラって何なんだろうか。

 と、俺が考えていると。


「それでは冒険者登録をしていきますので、隣の個室に入ってお待ち下さい」

「わ、分かりました!」

俺とヴィクトリアは、受付のお姉さんに言われるがままに個室に入ると、広い空間が広がっていて、カメラらしき機械が二個置いてあった。

 見た所、フォトスタジオといった感じだな。


「ここで登録ができるのか? 異世界初心者だから分からん!」

「分かる方が凄いと思いますよ」

ヴィクトリアも俺と同じで辺りをキョロキョロと見ながら言ってきた。


 ……しばらくすると奥の扉が開いて先程の受付のお姉さんと、もう一人茶髪お姉さんが入ってきた。

ギルドの受付は女性の方しかいないのだろうか……。俺は嬉しいけども!


「いまからこの”ステータス測定射影機”で貴方方を撮って、冒険者用ドックタグに情報を入れていきます!」

お姉さん達は手に持っている銅色のプレートが付いたネックレスのような物を俺達に見せながら言った。


「冒険者用……ドックタグ?」

「まあ、詳しい事は終わったあと話しますので早速やりますよ」


 なんか……お姉さんが俺に対して冷たい気がする。

 あれか、さっきの件がまだ響いているのか。

 俺のせいじゃないのに。


「じゃあ、貴女はこっちで撮りましょうね」

「私ですかー? 良いでしょう! 可愛く撮ってくださいね!」

俺が一人しょぼくれていると茶髪のお姉さんがヴィクトリアを連れて端っこに行き、カーテンを閉めてこちら側から見えないようにした。

 

 えっ、何故にカーテンを閉める必要が? 撮影するだけだよね?


「では、貴方は服を脱いでそこで立っていて下さい。直ぐに終わらせたいので」

「はい? ……ふ、服を脱ぐだと?」

「ええ、そうです。早くしてください」


 駄目だ。どんどん対応雑にないっていく……。

 だけどヴィクトリアの方にカーテンがあった理由はそれか。

 だがぁ……本当に脱ぐのか俺は? こんな綺麗な女性の前で。

 

 言っちゃあ悪いが、こっちは歴戦の童貞やぞ。普通に超恥ずかしいんだが!

 下手したらこの展開は異世界に来て、初めての危機的状況なのかも知れないな。

 精神的な部分の意味で。


 ……と、考えてはみたものの、待たせるとこのお姉さん怒りそうなので大人しく服を脱いで射影機の前に立った。

 もちろんパンツ一丁だぜ!

 物凄く恥ずかしいんだぜ! 

 今日に限ってド派手なカラーなんだぜ! はぁ……早く終わらせたい。

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