第8話 OBの集い(4/5)あしたのために

 いきなりですが、

「あしたのジョー」はみなさんご存知だと思います。

 主人公の矢吹丈は、リングで何度も倒されますが、

「立て! 立つんだジョー!」

 とセコンドの段平さんが叫ぶと立ち上がります。


 ヨット部の飲み会には不文律、アンリトンルールがあります。


「基本、先輩のおごり。その代わり自分の後輩にはおごること」

「酔って浜に行った人には誰かつきそう。危ないですから」

 まだあります。


 僕もまだ若かったとはいえ、この人たちの酒量にはかないません。


 お酒が強い人のことを“ざる”ともいいますね。

 “底がない”ということなのでしょう。

 どんどん入る、そのままお酒が通っても変わらない。

 ヨット部のこの人達は“ざる”というよりは“枠”でした。

 網にもかからない…。

 なんなんでしょうね…。


 私もふと眠くなるというか、倒れそうになります。

 もうすでに何人かが寝室に消え、何人かがその場で横になっています。


 ここで不文律です。


「飲んで寝てしまった場合、それは無理矢理起こしてはならない」


 当然ですね。

 あと、体調を崩してもいけないので、フトンをかけてあげたり、具合が悪そうだったら看てあげなくてはいけません。


 いろいろと喉につまったりしたら大変です。

 ふらりと立ち上がってトイレに行こうとして転んだりしたらね、大けがになります。これもできればつきあってあげます。

 変なところ汚されると困るというのもあるけれど。

 そこは親切というかなんというか…。


 もうダメだ、無理そうだったら…。


 そう寝てしまえばいいのです。


 矢吹丈は立ち上がって根性をみせて正解ですが、

僕らは

「決して立ち上がってはいけない」のです。


 根性をみせるのは絶対に“ここ”ではないのです。

「真っ白な灰になるまで」飲んではいけないのです。


 あしたのために…

 寝るのです。

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