第70話 不正を働いた者
始めの少しだけ三人称です。
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観客席へ向かう廊下に1人の男が走っていた。
見た感じアルト達と大して変わらないように見える。
しかし、頭からフードを被っていて顔がよく見えない。
しかし隙間から見えるその表情は、何かに恐れているような、そして何かへの焦燥感に染まっている。
「はぁはぁはぁ…………なんで僕の弱体化魔法が防がれたんだ……? 僕にはこれしかないのに……泣き言言う前に取り敢えずここから逃げなきゃ……! アイツに捕まったら終わりだ!」
男はがむしゃらに走る。
「はぁはぁ……これで……はぁはぁ……撒いただろう……はぁはぁ」
そう言って安堵の息を吐こうとした瞬間。
「君が不正を実際に働いか人か?」
そう問われた瞬間に男は体がピシッと固まってしまった。
特に何かされているわけではない。
恐怖で体が言うことを聞かなくなったのだ。
男は恐る恐る振り向くと……。
「やぁはじめまして。俺は君にデバフをかけられたアルト・ガーディアンです」
悪魔の笑みを浮かべた少年がいた。
♦︎♦︎♦︎
俺は目の前の恐怖で震えている男を見る。
ふむ……これは自分から進んでやっていたわけではなさそうだ。
ん? 俺がなんでこの人か分かったかって?
それは【魔力吸収】した魔力の性質がこの人と似ていたからだよ。
後はその魔力を魔力感知で辿ったらこの人と会ったってわけ。
「で君は誰? 何のために俺達や対戦相手にデバフをかけた? 誰かにいじめられているのか?」
俺が取り敢えず質問すると、最後のいじめられているのところに僅かに反応した。
しかしどうやら言うつもりはないようだ。
まぁ元から言ってくれるとは思っていなかったが。
「喋らなくても無駄だ。もう分かってるからな。お前には所謂確認のためだけに聞いている」
俺がそういうと、相手の男は膝から崩れ落ちた。
少し時間が経ち、男がポツポツの話し始める。
「僕の名前はエルと言います。魔導学院3年生の平民です。僕は生徒会長に脅されて仕方なくやっていました。平民には貴族に逆らうことなどできないので」
うーん言っていることはわかるんだけどなぁ……どうにも引っかかるんだよな。
俺は少し気になったことを聞く。
「まぁエルが平民なのは分かった。そこに関しては事実だろう。しかし脅したの辺りからエルはずっと無表情だった。そして感情の抑揚がない。君はエルではないな?」
俺がそう言うと、突然俺の体が先ほどとは比べ物にならないほど重くなり、思わず膝をつく。
「ぐッ……やはりお前強かったか……」
エルだった男はニヤッと笑うと。
「その通りですよアルト・ガーディアン君。お見事です。まさか私の魔力の質で居場所がバレてしまうとは……」
俺はバレないように【身体強化】を発動しようとしたら、更に強くなった。
「こらこらダメですよ解こうとしたら」
俺は相手を睨みながら聞く。
「お前達は一体何者だ! 何のためにこんなことをしている! あのシンとか言う奴とはどう言う関係だ!」
俺が焦ったように聞くと更に気持ち悪い笑みを深めて答えてくれた。
「どうせ貴方はこれから死ぬのですから、まぁ冥土の土産として教えてあげましょう。私達はバアル様を敬う宗教の組織だ。現在宗教国を支配しているんだよ! まだ誰にも知られていないけどねっ! 今回はこれを試すためにシンという男を操って使おうと思っていたんだがね」
そう言ってこの前のカマセ先輩達が使っていた注射器を取り出す。
なるほどな……コイツらが渡したのか。
迷惑なことをしてくれるじゃないかまったく。
でもコイツが間抜けなおかげで結構な情報が手に入ったしこれくらいでいいとするか。
「少し話しすぎたかもね……それじゃあ君には死んでもらうよ、アルト・ガーディアン」
「それはお前だ」
俺は【魔力吸収】を発動してデバフを消滅させる。
「なッ!? 何で動ける!? 私のデバフは完璧だったはず!」
「いやぁお前が間抜けでよかったよ。お陰でいい情報が聞けたし。てことで後はバラン国王に任せるとするか」
俺は慌てふためく男に近づいていく。
「や、やめろ! 来るんじゃない! くるな、くるな! ぎゃああああああ!!!??」
俺は五月蝿く喚く男の腹をパンチして一瞬で捕らえる。
「よし、コイツを後は何処かにいるであろうサーシャの護衛に渡すだけだな」
しかしまさか国が乗っ取られているとは……。
これまた面倒なことが起きそうな予感しかしないな……。
俺はこれから起きそうな面倒ごとを頭に浮かべてため息を吐くのだった。
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やっとカマセ先輩達が使った注射器の出どころを出すことができました。
対抗戦も終わりへと近づいてきましたが、これからもよろしくお願いします!
また作者の新作である、
『モブ以下転生者のゲーム世界無双~序盤で死ぬモブの女の子を守るために最強になったら、物語に巻き込まれました~』 https://kakuyomu.jp/works/16817139556823421872
も見ていただけると嬉しいです。
ではではまた次話で。
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