第69話 格の違い

 俺は魔導学院の生徒会長であるシンに近づいていく。


 一方でそのシンは俺が怖いのか、腰を抜かしながらも後ろに下がっていた。


 このままずっと逃げられるのも面倒なので、一瞬で真後ろに移動する。


 シンの背中が俺の足に当たる。


 シンは絶望した表情でゆっくりと後ろを振り向いて俺と目が合う。


 その瞬間にガタガタと震え出し、泣き出した。


「あれあれ生徒会長様(笑)。なんで1年の俺から逃げるんですか? もしかして俺が怖いのですか? あっ不正したのに負けるからか」


 俺はニコッと笑いながら言う。


「ふ、不正とはどう言うことだ! 俺はやっていない!」


「ええ、貴方はやっていませんね。ですが貴方が指示しているんじゃないですか? 観客席の誰かに」


「そ、それは……」


「ほら反論出来ないじゃないですか。この力でドロウ先輩にも勝ったのでしょう? 卑怯ですね? 魔導学院はどうやら生徒の躾がなっていないようだ。後で世界四強のイリア校長に言っておきますので、覚悟していてください」


 俺は満面の笑みを浮かべながら殺気を放見ながら言う。


「お、俺を脅したらこの国が黙っていないぞ! 必ずお前を殺しにくる!」


 ほぅ……俺を脅そうというわけか。


 まだわかっていないようだな。


 俺は足を射撃する。


 至近距離から放たれた弾丸は、シンの片足を吹き飛ばした。


「ぎゃあああああああ!! 痛い痛いッッ! ごめんなさいッ! 許じでぐだざいぃぃぃぃ!!」


 あっやりすぎた……。


 まぁでもこれくらいなら治るだろ。


 俺にとってはこのくらい序の口だし。


 てか痛みへの耐性なさすぎだろ。


 どれだけ不正で勝ってきたんだよ……。 


 たかが足が吹き飛んだくらいで……。(異常なのはアルト。普通足が吹き飛んだらもっと酷い)


「あと、俺の大切な婚約者とメイドに手を出そうとするんじゃねぇ。もし同じことをしたらボコボコにして社会的に殺してやるからな? よく覚えておけよ雑魚が」


 俺は先程よりも強い殺気を放って脅す。


「は、はひ! わかりましたッッ!!」


 うん、どうやらプライドは粉々に砕けたようだ。


 それじゃあ退場してもらうか。


「【怒りの本気パンチ】ッッ!!」


 俺の放ったパンチの風圧でシンは吹っ飛んでいき、壁に激突して埋まっていた。


 しかも裸になって。


「ブフォッ!? あはははははっ! なんで全裸になってんだよ。 あははははっ!」


 あっ俺のせいか。


 まぁでもこれで生徒会長の座には残れないだろう。俺の大切な人に手を出そうとした罰だ。


 はぁ……もう少し強いと思っていたんだけどなぁ……。


 不完全燃焼だが、俺はサーシャ達の戦いが終わるまでに不正した者を探すとしよう。


 サーシャ達にもかけられたらやばそうだからな。


 多分術者は生徒会長よりも強い気がするぞ。


 出力は最低限だったけど、【魔力吸収】を使用していたのにデバフかけられたし。


 俺は自分から場外に落ちて犯人を探しに向かった。






♦︎♦︎♦︎

(三人称)







 アルトが場外に自分から落ちた時、司会者や観客は唖然とする。


 まぁそれもそうだろう。


 前回の試合でもサーシャが自ら場外に落ちたのだ。


 2試合連続でなんて普通なら絶対にない。


 と言うか今までそんなことはなかった。


 1番に正常に戻った司会者が皆んなの目を覚ますように声を張り上げる。


「な、なんと! 魔導学院の生徒会長であるシン選手を圧倒して場外に落としたと思ったら、その後に自分も落ちていきました! これは何があったのでしょうか!?」


 司会者の声を聞いて観客は我を取り戻し、ざわざわし出す。


 しかしサーシャとソフィアは冷静だった。


「きっと見つけたんだね、不正」


「多分そうなんでしょうね。自分から脱落したのも、逃げられないようにするのと、私達もかけられないようにするためかしらね?」


 全部お見通しのソフィアとサーシャ。


 流石アルト大好きな人達だ。


 多分これを言ったらどちらが方が好きとか言って面倒なことになるだろう。


 2人はアルトが見えなくなると、片手間で対処していた相手の方を改めて見ると。


「はぁはぁはぁはぁはぁ……なんで見なくても全部分かるんだよ……」


「ば、化け物……ッ! 俺達には勝てないんだ……」


 サーシャとソフィア、どちらの相手も完全に戦意を失っていた。


「不正して勝っているからそんなに弱いんだよ? これからはちゃんと戦うんだよっ!」


 サーシャは可愛くめっ、と顔の前で指と指を重ねてバツを作る。


 これをもしアルトが見ていたら萌え死にしていただろう。


 その証拠に観客の見ていた人達の大勢が頬を赤くしていた。


 しかも男女関係なく。


 また先程まで畏怖の表情で見ていた対戦相手も小さく『可愛い……』と呟いていたほどだ。


 それ程に破壊力が強かった。


 ソフィアはそんなサーシャと観客を見て呆れた表情になり、ため息をつく。


「はぁ……さっさと終わらせましょう。サーシャもアルトが気になるのでしょう?」


「うんっ! じゃあすぐに終わらせよう! 【強制転移】ッ!」


「【ブロウ】」


 サーシャは1人を強制的に場外に転移させ、ソフィアは風を起こして場外に吹き飛ばした。


「勝者! 王立魔法学園! 強いですッ! これまで全ての試合で圧勝ッ! まさに飛ぶ鳥を落とす勢いですッ! これは次の試合も楽しみですね!」


 司会者がなんか言っていたが、サーシャとソフィアは大して聞いておらず、アルトを追いかけていった。



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 新作を投稿しました。


 タイトルは、


『モブ以下転生者のゲーム世界無双~序盤で死ぬモブの女の子を守るために最強になったら、物語に巻き込まれました~』https://kakuyomu.jp/works/16817139556823421872


 です!


 是非見てみてください!

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