第66話 ソフィア
またもや三人称ですが、今回がラストです!
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ドロウとサーシャが快勝している一方で、ソフィアは少し苦戦していた。
「【ウィンドカッター】【ウィンドアロー】!」
「はいっ! ほいっ! よいしょっ!」
ソフィアが撃った魔法がことごとく兎の獣人に躱されていた。
「どう言うことよ……! 何でアンタ空を蹴れるのよ!」
そう、この兎の獣人はソフィアの魔法を避ける時に必ず空を蹴っていた。
そのせいで狙いを上手く決められず、ソフィアは終始振り回されっぱなしになっている。
(こんな無茶苦茶な戦い方、アルトですらやってないわよ! でもこれを見ていたらアルト必ず真似しそうね……。ふふっ、アルトが習得したのをこの兎が見たらどう思うでしょうね? それを考えたらちょっとイライラが収まってきたわ)
ソフィアは少し笑って、先程まで闇雲に撃っていた魔法を全て止める。
そして集中し始めながら少し愚痴を零す。
「これ疲れるからやりたくないのよね……。でもそんなこと言っていたら魔力無くなりそうだし、さっさと終わらせて休むことにしましょう」
ソフィアがそう言うと、持ち前の聴力で聞いていた兎の獣人が少しムッとした表情で言う。
「ちょっと、貴方今負けているんだから疲れるからとか言って手加減しないでよ!」
そう言う兎の獣人を見ながらソフィアは自信げな表情で。
「なら少しだけやるわ。すぐに気絶してよね? 風超級魔法【風王の加護】」
その瞬間に会場やその周りの風がぴたりとやむ。
そして突然ソフィアを中心に高さ何千m程で、会場のリングいっぱいに巨大な竜巻が出現する。
兎の獣人は、危険を感じ取り出来るだけ上空に逃げた。
そして竜巻がソフィアに吸収され、その姿が見えると、会場全員が息を呑む。
そこにはアルトや、アルトになでなでされていたサーシャも含まれる。
ソフィアは風のドレスを纏い、風のティアラを頭に乗せ、髪と目が翡翠色に変化していた。
そして何より手にソフィアの身長より大きな風の杖を持っており、先端には小さくも強力な竜巻が渦巻いている。
ソフィアが口を開く。
「昔使った時はまだ使える様になったばかりだったから上手く使えていなかったのよね……。」
それを聞いたアルトとサーシャはさらに驚愕の顔になる。
アルトはサーシャに恐る恐る聞く。
「サーシャ、あの姿のソフィア見たことあるか?」
「ううん……ないよ。私も初めて見た。物凄く強くなってるねソフィア」
「ああ、あれは俺も8割くらいの力で戦わないと絶対に負けるな。8割でも勝てるかどうか……」
2人の話の通り、アルトが8割も本気を出さないと絶対に負けると言うくらいには、ソフィアは強くなっていた。
ソフィアはそんな2人の会話を風を通して聞いており、クスッと笑う。
「そんなに驚いた顔して、いい気味ね。私を放ってサーシャとイチャイチャするのが悪いのよ? 私も終わったら兄さんとアルトに褒めてもらうことにするわ」
ソフィアは再び上空にいる兎の獣人を見て。
「貴方は取り敢えず降りてきなさい」
ソフィアがそう言うと、兎の獣人が本当に落ちてくる。
「きゃあああああ!? 何で私落ちてるのよ!? 私何かに押しつぶされそうになったんですけど!」
ソフィアはクスッと笑って説明する。
「貴方の周りの風を操作して貴方を落としたのよ。これくらいなら簡単よ?」
そう言って余裕そうに微笑むソフィアと、ギリギリと歯を噛んで悔しそうにしている兎の獣人の姿は、始めの頃の2人と反対の構図になっていた。
ソフィアは風の杖を少し持ち上げると。
「兎さん? 得意の空蹴りで頑張って逃げてね? もう私たち以外は決着がついているみたいだし、もう加減しなくても大丈夫だから。【ウィンドカッター】」
ソフィアがそう言うと、100ほどの巨大な【ウィンドカッター】と、300ほどの小さな【ウィンドカッター】が出現する。
それを見た兎の獣人と観客達は、この勝負の勝敗を察してしまった。
それ程までに今目の前で起きている事が圧倒的だったのだ。
兎の獣人は力のない笑みを浮かべる。
「あはははは……こんなのどうやって避けろって言うのよ……。こんなに強かったなんて……もっと早く倒していればよかったな……」
今更過去の事を嘆いてももう遅い。
ソフィアは少し持ち上げていた杖を地面に『コン』と音を立てて降ろす。
その瞬間に兎の獣人目掛けて何百もの大小様々な【ウィンドカッター】が放たれる。
そして物凄い風の音と、地面が揺れるほどの轟音を響かせて魔法が撃ち込まれた。
少しして砂埃が晴れると、風に守られて気絶している兎の獣人が姿を表す。
それを見たソフィアはチラッと審判を見る。
見られた審判は大慌てで。
「しょ、勝者ッ! 王立魔法学園ッッ!!」
その瞬間、会場に割れんばかりの拍手と称賛の声が響く。
それを一身に受けているソフィアは、【風王の加護】を解除する前に、アルトに風でメッセージを送る。
『後で私も褒めなさい。絶対よ?』
と。
それを送りながらソフィアは心の中で呟く。
(これでアルトにだいぶ近づけたかしら……? 私はもう我慢するのを止めるわ。覚悟していなさい、アルト)
そう思いながらアルトの方を見て少し頬を赤らめる。
これにて第2回戦は1番の盛り上がりを見せて終了した。
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今回は過去最大級の無双回でした。
ソフィアは今まであまり無双していなかったので書いたら大変なことになりました。
アルトより活躍してどうすんだ?と思っているでしょう。
大丈夫です、アルトも活躍させます!……きっと。
自信があまりないですが……。
出来る限りは頑張るつもりですが!
あとアルトはズルすぎです。
何人もの美少女にチヤホヤされて……好意を持たれて……男と女の敵め! 又は男の夢を体現した男め!
いつか物凄い修羅場を書いてやる。
是非お楽しみに!
それではまた次話で!
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