第64話 2回戦も無双(ドロウside)
今回は途中から3人称です。
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精霊学園との戦闘を終えた俺とユミル会長は、観客席でサーシャ達が出る2回戦を見ていた。
因みに次の対戦相手は獣人学院らしい。
らしいと言うのは、俺が実際に対戦相手を見たわけではなく聞いただけだからだ。
「ユミル会長、今回の試合はどうなりますかね?」
「そうだね…………多分僕たちの学園が勝つと思うよ。勿論贔屓なしでね」
「へぇ……そうなんですね」
そんなにはっきりと答えが返ってくると思っていなかったからちょっと返事に困るな。
でも何でそんなにはっきりと言えるのだろうか?
「でも何で勝てると思ったんですか? まだ始まってすらないのに……」
俺がそう言うと、ユミル会長はさも当たり前のように。
「だってうちのチームが強いからね。サーシャ王女もソフィアも1年生離れした実力を持っているし、ドロウは言うまでもなく強いからね」
……確かに。
言われてみればサーシャ達はみんな鬼才と言って良いほどの天才達だもんな。
まぁそれを考えたら相手チームが少し可哀想になってきたんですけど……。
プライドがボロボロにならないと良いけど。
俺はそんなことを思いながらリングに集中しようとすると、何処かから『我がマイフレンドアルト君!』と言う声が聞こえた気がする。
うーん多分空耳だなきっと。
俺は何事もなかったかのようにリングに集中することにした。
♦︎♦︎♦︎
(3人称)
サーシャ達3人がリングに入ると、まだ獣人学園は来ていなかった。
「あれ? 獣人学院の人達まだかな?」
サーシャはキョロキョロしながら相手を探す。
「まぁこのまま来ないでくれれば私達の勝ちになるから良いんだけど」
「いや、どうやら今来たようだぞ」
感知の得意なドロウがそう言うと、サーシャとソフィアが即座に臨戦体制を取る。
それから数秒後、リングに獣人達が上がってきた。
見た目は、狼と猫と兎の耳と尻尾以外は人間と変わらない。
今頃アルトは『マジの獣人だ! すげぇぇぇ!』と言っている頃だろう。
アルトは何故か獣人とかエルフとかに興味があるから。
そんなことをサーシャは思いながら敵を見る。
狼の獣人以外は女のようだ。
丁度此方も男1人に女2人なので、いい感じのバランスだろう。
司会者が合図を言う。
「それでは第2試合スタートです!」
その瞬間、相手が一斉にまぁまぁの速度で向かってきた。
それを見ながら【魔力感知】で感知した相手の強さをもとに2人に指示を出す。
「サーシャ王女は猫の獣人を、ソフィアは兎の獣人を頼む! 俺は1番強い狼の獣人と戦う!」
「はい!!」
2人が返事をした瞬間に3人がそれぞれの担当の人の元へと、獣人達より少し早いくらいの速度で向かう。
「「「なっ!?」」」
速度に自信のあった獣人達は、自分達の速度よりも速いことに驚く。
「くッ、落ち着け! 所詮速いだけだ! しっかり冷静に対処すれば勝てる!」
しかし狼の獣人が少し動揺しながらも冷静に指示を出す。
そう言った瞬間に走っている狼の獣人の横にドロウが現れて。
「誰がいつ速いだけだと言った? 勝手に決めつけないほうがいいと思うぞ?」
そう言って蹴りを入れる。
「がはッ!?」
狼の獣人はモロに食らった為、思いっきり吹っ飛ぶ。
しかしここは獣人と言ったところか。
持ち前の高い身体能力で空中で立て直して着地する。
「どう言うことだ……たかが人間が俺達のスピードについてこれるわけがない。何をした?」
狼の獣人がそう言うとドロウがああなんだそんなことがとでも言いたげな表情で。
「なんだそんなことか(言った)。そんなの簡単なことだ」
そう言って【身体強化】を1200%で発動する。
その瞬間にドロウは狼の獣人の懐に入り、至近距離で【アースバレット】を撃つ。
「ぐッ!? そんなバカな……!?」
狼の獣人は無防備に魔法を喰らってのけぞる。
それに追い打ちをかけるようにしてドロウが。
「【アースブレイク】ッ!」
土上級魔法を使って1部分の地面が割れる。
「チッィ!! 【浸透波】ッッ!!」
狼の獣人が空中にジャンプして離れているドロウ目掛けて拳を撃つ。
すると突如ドロウに衝撃波が叩き込まれる。
「ぐッ……魔力の反応はなかったはず……取り敢えずもう1度見てみるか」
ドロウは少し体制を崩すがすぐに持ち直して【アースバレット】を放つ。
しかしこれは器用に全て躱される。
「やはり凄まじい身体能力だな……」
ドロウがそう呟くと狼の獣人がドロウに文句を言う。
「そう言うお前達こそ何故俺たちについてこれるんだ? 俺達獣人の身体能力は全種族1位のはずだ」
狼の獣人がそう言うとドロウは少しクスッと笑って返す。
「確かにお前達は速いが、俺やお前達よりも圧倒的に速い化け物を毎日見ていたら誰でもこうなるさ」
狼の獣人は、獣人学院一速い自分と同じ速度で動くこの人間が化け物と評す奴がいるとは信じられなかった。
いや、1人思い当たる人物がいたことを思い出す。
自分がこの学院に来た時に、ふとある人間の隣を通った時だ。
その瞬間に獣としての生存本能が『コイツは危険だ。今すぐに遠くに逃げろ』と警鐘を鳴らしていた。
思わず飛び退いてその人間を見ると、超絶美少女なメイドと貴族の真ん中で無防備な姿を晒している。
その人間とは……。
「【不適合者】のアルト・ガーディアン……」
狼の獣人がそう言うと、ドロウはニヤッと笑って。
「正解だ。よく分かったな」
「……確かにあのような人間が居たら俺たちなんてそれ程強いと思わないな」
狼の獣人はアルトを見た時の異次元の圧を思い出してブルっと震える。
「そんな奴の先輩としてここで負けていられないんだ」
ドロウはそう言うと大量の魔力を練る。
それを見た狼の獣人も自身の最大の技を繰り出す準備を始めた。
リングの一角で静寂が訪れる。
そしてサーシャ達が戦っている音が聞こえた。
一際大きな爆発音が響く。
その瞬間に2人は一気に動き出す。
「【極大浸透波】ッッ!!」
始めに狼の獣人がドロウに接近して技を放つ。
至近距離で衝撃が発生する。
それを魔力で空色に輝く目で見ていたドロウは。
「【空間歪曲】」
ドロウの目の前の空間が歪む。
「なぁっ!?」
狼の獣人は思わず驚きの声をあげる。
「俺が土魔法しか使えないといつ言った? 自己紹介をしよう。王立魔法学園序列2位『歪曲』ドロウ・ウォーターだ」
その瞬間に空間の歪みに消えた衝撃波が狼の獣人を襲う。
「ぐはッ!?」
防御できなかった狼の獣人はそのまま吹っ飛んで壁に激突して場外へと落ちる。
「まさか力を隠していたとは……俺もまだまだだな……」
そう言って気絶した。
ドロウは一息付くとアルトのいる方の観客席を見て。
「見ていろアルト。必ず追いついてみせる」
ドロウはそう言ってサーシャ達の元へ向かった。
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今日はドロウ先輩のカッコ良さ溢れる回でした。
作者的にカッコ良くしたのですがどうだったでしょうか?
ドロウがかっこいいと思った人や、この作品が面白い! まぁいいんじゃない? などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!
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ではではまた次話で。
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