第61話 アナの秘密を知りました

俺が魔導学院のゴミ会長をボコボコにしようとして止められた後、俺はドロウ先輩に怒られていた。


「お前は我慢ができないのか? 今問題を起こしたら大会に出れないんだぞ? そこの所をよく考えろ!」


「すいません……」


 物凄い言い返したいが、全くもってその通りだな……。


 よし、やっぱり大会の試合で遠慮なくぶっ飛ばそう。


 我ながらいい考えを思いついたな。


 俺はニヤッと笑う。


「アルト、とても悪い顔してるよ。絶対何か企んでいるでしょ!」


 むっ?顔に出ていたか……。


 やっぱりポーカーフェイスの練習を何ヶ月もしていないのが原因か?


 俺がそんなバカなことを考えていると、俺たちの後ろから強大な魔力を持った5人の人が来た。


 俺はサーシャにどんな感じなのか聞いてみる。


「サーシャ、今俺たちの後ろにいるのって違う学園の生徒だよね?」


「えっ? あ、うんそうだよ。あそこの生徒は精霊学園のエルフ達だよ」


「何いいいいいい!?」


「「「「「わっ!?」」」」」


 俺がエルフと知って思わず叫ぶとサーシャ達も叫んだ。


「なんでサーシャ達も叫んでいるんだ? サーシャ達もエルフに驚いたのか?」


「「「「「違うよ!? アルトの叫び声にびっくりしたんだよ(ですよ)!?」


 みんなに物凄い剣幕で否定された。


「す、すいませんでした……でもエルフっているんだなぁ」


「勿論いますよ。私も一応エルフですから…………」


 …………ん?なんて言った?


 俺たち全員がアナの方に向く。


「ごめんアナ。もう一回言って」


「私には一応エルフの血が流れていますから。まぁハーフエルフですけど……」


「「「「「えええええ!?」」」」」


 今度は俺も驚いた。


 えっ?アナってハーフエルフだったの?


 あっ、だから俺よりも魔力の増加が多かったのか……。


 なんか小さい頃の謎が今やっと解決したな。


 でも確かハーフエルフって……。


「アナ、ハーフエルフってエルフに嫌われているんじゃないか?」


 俺がそう言うと、アナは驚いたように言う。


「ええ、そうです。よく知っていましたねアルト様。そのせいで私たち家族はエルフの森を追放されました。そしてその後に拾ってくださったのが、アルト様のご両親というわけです」


 へぇぇぇ。


 ここに来て始めてアナが家でメイドをしていたのかわかったな。


 ただその時の判断はナイスだぞ、父さん母さん!


 今度帰ったら何か買ってあげよう。


 俺がそう思っていると、ユミル先輩がいう。


「ならエルフとの挨拶は、僕とドロウだけで行ってくるよ」


 流石ユミル会長、気が効くなぁ。


 俺も見習わないとな。


「ありがとうございます、ユミル君」


「いえ! アナスタシア先輩のためですから!」


 はい、また新たな情報ゲット~。


 まさかのアナの後輩でしたか……。


 まぁアナも通っていたらしいからそれはそうか。

 

 ユミル会長とドロウ先輩はエルフの所に行った。


 俺はサーシャに他に違う学園の生徒がいないか聞くと。


「えっとあとはね、獣人学院の生徒と、女神教校の生徒だね」


 ふむ……と言うことは、俺たちの学園も合わせて5校が出場するのか。


 ただ獣人学院も女神教校も会いたくないな。

 

 絶対戦闘狂と狂信者しかいなさそうだし。


 正直何されるかが目に見えているから、わざわざ面倒な所に行く意味はない。


 俺たちは素直にユミル先輩達を待つことにした。


 それから何分か経ってもユミル先輩達は戻ってこない。


 この学園に来て初めてソフィアが話す。


「兄さん達が遅いわ。どうしたのかしら?」


 まぁ確かに遅い気がする。


 先程の魔導学院との挨拶はもっとすぐに終わっていたからな。


「どうしようか? 探しに行くか?」


 俺は一応アナに聞いてみる。


 アナは一瞬考えたように無言になったが、すぐに返事をしてきた。


「そうですね、探しに行きましょうか」


「えっ……でも向こうにはエルフ達が居ると思うよ? 私はアナが嫌なら一緒に残るけど……」


 サーシャはそう言ってアナを心配する。


 ソフィアも心配そうにアナを見ていた。


 しかしアナの意見は変わらなかったようだ。


「いえ行きましょう。もし会ったとしても私が強くなった姿を見れば何も言ってこないかもしれません」


 そう言って俺たちを安心させるように笑う。


 それを見たサーシャとソフィアが、感動したのか抱きついていた。


 んなぁ!?なんて素晴らしい光景なんだろうか!

 

 くそッ! 何で俺の目は見えないんだ!


 いつか必ず代償を一瞬で回復させる魔法を作ってやるからな!


 俺は【精密感知】をMAXにして3人の百合を感じる。


 俺達はそんな事をしながら歩いていると、ユミル先輩達とエルフの生徒との口論が聞こえてきた。


「だから何度も言っているだろう! アナスタシア先輩はお前達が侮辱していい相手ではないんだ! アナスタシア先輩はすごい人なんだ! だから雑魚という言葉を取り消せ!」


「はっ! あんな精霊術の使えない追放された雑魚の何処が雑魚ではないんだ? 何しようと所詮雑魚は雑魚だ」


 ふむ……この感じだとエルフの生徒がアナの知り合いで、アナを雑魚と言ったことが発端だな。


 それにユミル会長が食ってかかったと。


 俺はアナ達に言う。


「アナ達はここで待っていてくれ。俺が2人を止めてくる」


 そう言うとアナが。


「よろしくお願いします。アルト様も怒ってはいけませんよ」


「ああわかってる」


 俺はユミル会長とエルフの生徒の間に入る。


「はいそこそこ、口論しない! ここには人がたくさんいるのですよ!」


 俺がそう言うとエルフの生徒が俺に言ってきた。


「ん? 何だお前?」


「俺はアルト・ガーディアンと言う、アナがメイドとして働いている家の息子です」


 俺がそう言うとエルフが鼻で笑いながらふざけた事を抜かしやがる。


「お前もアナの知り合いか。はっ! メイドとは落ちたものだな! やはり雑魚はどこまで行っても雑魚なんだな!」


 は?ぶっ殺してやろうか?


 おっといけないいけない。


 危うく殺気が漏れる所だった。


 俺は冷静に返す。


「逆にお前は誰なんだ?」


「俺はアナの幼馴染で、ショーン・エレメントだ! お前は知らないだろうが、アイツがいた時は良かった。ストレス発散の的になってくれるし、脅せば何だってしてくれた。その時のアイツの顔といえば、ハハッ! 今でも笑えるぜ」


「貴様あああああ!! 絶対にぶっ潰す!」


 ユミル会長がエルフに切れる。


 俺はそれを見ながら、笑い声を上げる。


「ふふふふ、あははははは!」


 急に笑い出した俺にみんなが俺の方を向く。


 本当にここに来てからイライラすることばっかりだ。


 いい加減我慢の限界が来そうなんだが?


 俺はゆっくりエルフに近づく。


 その瞬間、周りの空間が揺れる。


「うわっ!? な、なんだ!?」


「や、やめろアルト! お前がキレるとこの学院がどうなるか分からん!」


 エルフは驚き、ドロウ先輩が俺を止めてくる。


「大丈夫です先輩。ちょっとアイツらに挨拶するだけですから」


 俺はエルフの目の前に立つと。


「それで貴方がアナの幼馴染と言いましたね?」


「ああそうだが、それがどうした!」


 俺はこのエルフに本気の殺気を浴びせる。


「ひっ!?」


「お前、昔アナに色々したみたいだな? これ以上ここで言うなら……今すぐお前を潰す。……その後は、エルフの森を滅ぼそうかな?」


 俺はそう言って狂ったように笑う。 


 どうやら他のエルフにも聞こえていたらしく、みんながぶるぶると震えていた。


 しかしショーンは気丈に振る舞う。


「ふ、ふん! 今のところは許してやるが、お前は大会で半殺しだ! 覚悟しておけ!」


 そう言って逃げていった。


 ふふっ……どうやら俺が潰さないといけない相手が1人……いや5人増えたようだ。


 ああ、早く大会にならないかなぁ……。


 俺は殺気を抑えて、固まっているみんなに話しかける。


「それじゃあ行きましょうか」


 するとみんなが大人しく着いてくる。


 アナが俺の近くに来ると。


「ありがとうございましたアルト様。お陰で少し気分が晴れました」


 そう言って泣きそうになりながら少し笑った。


 うん、これは本格的に潰さないとな。


 どうやらこの大会でも面倒なことが起こりそうだ。


 俺はアナの笑顔を見ながらそう思った。



----------------------------

はい、今回出てきたショーンはもう、書いていて『こいつが現実にいたら殴っているなぁ』と思っていました。

こいつもさっさと退場してもらいましょう。

次回から対抗戦開始です!

お楽しみに!

  この作品が面白い!まぁいいんじゃない? 早くショーン達を倒してほしい!などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

 また、フォロー、感想、応援コメント、誤字脱字や改善点などを頂けると作者の励みになります。

 ではではまた次話で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る