第60話 魔導学院到着

 電車に乗ること1時間半。


 魔導帝国に着いたのだが……。


「ああぁぁぁぁ……降りたくないぃぃぃ」


 俺は降りないための必死の抵抗をしていた。


「ダメだよアルト! 早く降りて!」


「アルト様、早く降りないと毎朝起こしませんよ」


 ぐっ…………それは卑怯だぞ!


 起こしてくれなかったら間違いなく毎日学園に遅刻してしまうじゃないか!


 自分で起きればいいだって?


 それが出来ていたら苦労しないんだよ!


 前世で部屋に目覚まし時計を10個置いても起きられなかった。


 まぁその時は親にぶん殴られて起きたけど。


 そんな俺の弱点をつくとは…………。


「なんて卑劣な……」


「はぁ、なら早く行きますよ」


「…………嫌だ!」


 俺はそう言うとベッドにダイブしてがっちりとベッドを掴んで離れないようにする。


 勿論こっそり【身体強化】をして。


「アルト、行くよ! よし引きずってでも連れて行こう…………ってあれ? 全然引き剥がせない!」


 そう言ってサーシャは俺を引っ張るが、【身体強化】をした俺の敵ではない!


 俺はこの時のために【身体強化】を極めてきたんだ!(違う)


 それに……。


「サーシャ達は俺だけに構っていていいのかな!?」


 俺は『バーン!』と効果音がつきそうな感じでもう1人の同志の方を指差す。


「あっ!? ソフィア!? なんでソフィアもゴロゴロしてるの!?」


 サーシャが驚いたように言うと。


「ここの設備は快適すぎるのがいけない」


 ソフィアがそう言って俺の近くのベッドに寝転ぶ。


 流石同志、よくわかっているじゃないか。


「そうだよな、俺たちがゴロゴロしているんじゃなくてこの設備が俺たちを離さないんだよな」


「そうよ、私たちは捕まっているの。ベッドと冷房に」


 そう言って2人でサムズアップしてニヤッと笑い合う。


 すると今度はソフィアと息ぴったりだったことに少し嫉妬したのか。


「むぅ~~。ソフィアはアルトから離れてアナに起こしてもらって! アルトは私が起こしてあげる! それでいいでしょ!」


 ふむ……確かに美少女に起こされるなんて素晴らしいと思うが……。


 俺たちは顔を見合わせ。


「「だが断る!」」


 とドヤ顔で言うと。


 流石にイラッときたのか、サーシャが突如笑い出す。


「ふふふふふ、アルト達は起きないんだね。ならお仕置きしないとね? ふふふふふ」


 そう言ったサーシャは、三重展開トリプルキャストを発動する。


 しかも展開させている魔法はどれも上級魔法だった。


 それを停滞させながらサーシャが言う。


「これに当たってもいいならそのまま居てもいいよ?」


「「ごめんなさい」」


 俺とソフィアはあまりの恐ろしさに一瞬で起きた。


「さ、さぁ行こうか! なぁ、ソフィア!」


「え、ええ、そうね。早く行きましょう」


 2人して先々行く。


 そこでアナが。


「お二人共、会場までの道知らないでしょう?」


 …………あっ。


「「……知りません」」


 結局アナが会場まで連れて行ってくれた。


 まぁその間にサーシャに怒られたけど……。





♦♦♦





「うわぁ、すごい……」


 サーシャは魔導学院の校舎を見て感嘆の声を上げた。


 俺は見えないから全く感動しない……。


 くそぅ、俺だって見えるもん!


 俺は【精密感知】を発動。


 【精密感知】で見た目の前の建造物は、校舎というよりは宮殿に近い気がする。


 いや、俺達の学園もでかいけど、ここはさらにでかいしきらびやか気がするんですけど……。


 これが財力の差か……。


 まぁ領土もこちらのほうが広いらしいししょうがない部分もあるんだろうけど。


 でも元庶民としては、毎日ここに通ってみたいとは思う。


 俺たちは正門を潜り、学院の中に入る。


 すると【精密感知】が沢山の強大な魔力を感知した。


 ……この学院にはA級以上の人が多いな……。


 流石にリーン先生とかよりは弱いけど。


 …………ん?これって結構厳しくね?


 多分俺達みんなが本気を出したら勝てるとは思うけど、簡単には行きそうにないくらいの強さだ。


 まぁ俺の目が見えるようになったら一瞬なんだけどさ。


 こう見えても俺、天才なので。


 心の中でドヤっていると、サーシャとアナが俺の顔を見てコソコソ話していた。


「ねぇアナ、さっきからアルトの顔が変なんだけど」


「奇遇ですねサーシャ様。私もアルト様の顔が変だと思います」


 おい、ばっちり聞こえているぞ。


 せめて言うならもっと聞こえないように努力しろよ。


 俺は取り敢えずアナとサーシャに軽いチョップを繰り出す。


「いたっ! やめてよアルト!」


 サーシャは頭を押さえながら頬を膨らませて言ってくる。


「ならもっと俺の聞こえないところで言え。俺が傷つくだろうが」


 因みにアナはチョップされても動じていない。


「な、なんのことかなぁ? 私知らないなぁ……?」


 そう言ってシラを切るサーシャ。


 どうやら無かったことにしたいらしい。


 が、それを許す俺ではな……


「でもやっぱり嘘はいけないよね。ごめんねアルト」


 そう言って上目遣いで謝ってくる。


「うんいいよ」


「いや許すの!?」


 ユミル会長からツッコミが飛んできた。


 いや許すよ。


 だって可愛かったもん。


 可愛いは正義!


 俺達が話していると、目の前から強大な魔力を持った人達がやってきた。


「私は魔導学院生徒会長シンだ。ようこそ我が学院へ」


 そう言ってユミル会長に握手を求める。


「お招きいただきありがございます。僕は王立魔法学園生徒会長ユミル・ゲイルと申します」


 そう言って握手に答える。


 正直名前とかどうでもいい(名前なんて覚えないから)。


 そんなことより、なんで相手はあんなに偉そうなんだ?


 はっ……こいつ……もしかしてバカなのか……?(お前に言われたくない)


 相手の生徒会長は俺たちを見下すように見る。

 

 うーん、ここが路地裏とかだったらボコボコにしているな。


 そんなことを考えていると、シンが何故か俺に話しかけてきた。


「お前が【不適合者】のアルト・ガーディアンか?」


「あ、はいそうです。アルト・ガーディアンと申します」


 一応敬語を使っておく。


 てか【不適合者】は余計だよ。


 なんでみんな【不適合者】を付けるのかね?


 前世で【不適合者】に家族でも殺されたか?


 しかし俺は優しいので、ちゃんと名前を名乗ると。


「チッ、なんだよ。ただの雑魚じゃないか。失望した」


 ……は?なんだよこのガキ。


 出会って早々に舌打ちされて失望されたんだけど?


 え?喧嘩売ってんの?よし、買ってやろう。


 俺がぶん殴ろうとするとサーシャが止めて来たのでなんとか抑える。


 そんな俺たちのやり取りを見ていたシンとか言う奴がそばに寄ってきて俺の耳元で囁く。


「あれがお前の婚約者とメイドか?」


 そう言ってサーシャとアナを指す。


「え、ええまぁ」


 なんか物凄いやな予感が……。


 確かこんなことが前にも……。


「よし、ならあいつらを俺に寄越せ。お前には勿体ない」


 そう言ってニヤッと笑う。


 ………………よし、今すぐこいつを殺そうか。


 まぁそんなことだろうと思ったよ!


 もう相手するのが面倒だからさっさとボコボコにするか。


 俺はシンとか言う奴をボコボコにするため魔力を練ろうとするが、なんと相手側の先生みたいな人に止められた。


 くそっ邪魔するなよ、お前もぶっ飛ばしてやろうか?


 多分A級最上級くらいだから勝てるし。


 しかし【魔力感知】が得意なドロウ先輩にもバレていたらしく止められた。


 チッ……絶対に大会でボコボコにしてやる。


 俺は調子に乗ったガキを睨みながら誓う。


 そしてついでにみんなの前で泣かせてやろうと決めた。

 

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はい、またもやウザいキャラが出てきました。

こんな奴とっととアルトにぶっ飛ばしてもらいましょう!


  この作品が面白い!まぁいいんじゃない?サーシャめっちゃ可愛い!などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

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 ではではまた次話で。

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