第58話 チーム戦に向けて
選抜チームに選ばれた俺達5人は、第2闘技場に来ていた。
チームの代表であるユミル先輩が、俺達に話しかける。
「一応名乗っておこうかな? 僕はこの選抜チームでリーダーをやらせてもらうユミル・ゲイルだよ。まぁみんな知っていると思うので、自己紹介はこれくらいにして。これからチームの連携を強化して行こうと思う。個人戦はみんな強いしね」
と言って笑う。
まぁ先輩の言う通りだな。
正直言って個人戦で1回で負けるほどこのメンツは弱くない。
しかしそれが団体戦となると大きく変わってくる。
いくら1人1人が強かろうが、連携がダメダメだと、格下相手でも負けてしまう。
そして今俺達は一緒に戦ったことは何回かあれど、5人全員で戦ったことはない。
だから今回は5人で戦おうと言うわけか……。
ただそれには1つ欠点がある。
俺はユミル先輩に言う。
「でもそうしたら相手がいなくないですか? ゴーレムとか使ったら直ぐに壊れてしまいそうだし……」
もしゴーレムなんて使った日には、一体どのくらいの弁償になるか分かったもんじゃない。
俺なんて一撃で倒せるから結構アウトなんだよなぁ……。
家で1回使ったら1発撃っただけでお亡くなりになったし…………。
それがバレて、まさかの父さんの仕事道具だと知った時は冷や汗がダラダラ流れた。
そして人生で1番怒られた気がする。
一瞬どれだけ愛着があるんだよ……とは思ったけど。
俺が昔の苦い記憶を思い出していると、ユミル先輩がその質問に答えてくれた。
「そう言うと思って、今日はバナー先生と校長先生に来て貰ってるよ」
ああ、きっと授業と仕事をサボりたかった人達だな。
そのためにこの選抜チームとの練習はうってつけだったのだろう。
どうやらそれに気づいているのは俺だけみたいで、サーシャ達は世界四強とS級最上位の力が知れると喜んでいた。
まぁバナー先生とは戦ったけどお互い本気じゃなかったしな。
俺がそんなことを考えていると、バナー先生とイリア校長がこの闘技場に転移してきた。
……わざわざ【転移】なんて言う高度な魔法を移動のためだけに使わなくても……。
俺は派手な演出に少し顔が引き攣る。
隣のサーシャ達を見ると、全員苦笑いをしていた。
そんな俺たちを見て、イリア校長は悪戯が成功した子供みたいに笑い。
「よし、それじゃあ早速模擬戦するか」
と言ってきたので、みんながいつでも戦えるように構えていた。
なので俺も《爆裂銃剣》を持ち、【身体強化】を1800%で発動する。
その瞬間、周りの温度が下がっていく。
ユミル先輩が叫ぶ。
「みんな行くぞ!」
その瞬間に俺は飛び出す。
そしてバナー先生に爆裂弾を放つ。
そしてバナー先生の近くに来ると。
「弾けろ!」
俺はそう叫ぶと、まだ当たっていないのに弾丸が爆発する。
これにはイリア校長もバナー先生も驚いたようだ。
ふっふっふっ、どうよ、俺の自慢の弾丸は!
最近銃の弾が当たらない敵に何回も出会ったため、当たらないなら近くで爆発させてしまおうと言う発想に至り、この弾を作ることになった。
この弾は自分の魔力を込めているから、遠くに居ても爆発させることができる。
正直目が見えないからめちゃくちゃ大変だった。
何度も失敗し、その都度サーシャ達に確認してもらって、先日やっと完成したと言うわけだ。
そして今日が実戦で使うのも初だったので、ちゃんと爆発してくれてよかった。
俺は、結果に満足しながらバナー先生に斬りかかる。
しかし流石バナー先生ということもあって弾き返された。
俺は素早く着地して、直ぐ様駆け出す。
そして俺が攻撃を当てやすいように、サーシャが【ライトニング】を撃ってくれる。
「ありがとうサーシャ!」
「うん! それより私だと足止めしかできないから止めはよろしくね!」
「ガッテンだ!」
俺はバナー先生の懐に入り。
「【爆裂斬】ッッ!!」
爆裂弾の爆発を利用して斬りあげる。
しかしその攻撃も反応され、大剣でガードされるが、一瞬だけ【身体強化】を2500%にして力任せに吹っ飛ばす。
「おわっ!?」
いきなり力が強くなった俺に驚いたバナー先生は抵抗なく吹っ飛んでいく。
そしてそのまま場外に飛んでいった。
「「よし!」」
2人でハイタッチをして喜ぶ。
入学試験では、3人がかりでやっと勝ったので、今回は2人で勝てたことで自分達が強くなっていると実感できる。
まぁあんなにいろいろなことがあったからそれも当たり前か……。
俺達は一通り喜んだ後、ユミル先輩達に加勢するために、イリア校長の方に爆裂弾を撃った。
♦︎♦︎♦︎
(三人称)
アルト達がバナー先生と戦っている頃、残りの3人はイリアと戦っていた。
3体1で戦っているものの、お互いの魔法に当たったり魔法の選択を間違えたりと、アルトとサーシャのように完璧な連携が取れていない。
そのためイリアにまだ1発も攻撃を当てることができていなかった。
「ほらほらここにいるよ」
イリアは3人の後ろに【転移】して声をかける。
すると3人は揃って後ろを向いて魔法を放つ。
「【ウィンドカッター】ッ!」
「【ウィンドカッター】ッ!」
「【アースバレット】ッ!」
イリアに向かって放たれた魔法は。
「「「あっ……」」」
それぞれの魔法にぶつかって消えた。
それを見たイリアは、はぁとため息をつくと3人に言う。
「お前たちは他の仲間のことを考えていない。見てみろ、あの夫婦を」
そう言うと、イリアはバナーと戦っているアルトとサーシャを見た。
それにつられて3人も目を向けると、3人は衝撃を受ける。
「2人は片方が攻撃するときは、もう片方が牽制と支援に専念している。更にそれを特に合図もなく役割をチェンジしながら行えている。そのせいでバナーは殆ど攻撃できていない」
イリアは3人を見ながら言う。
「これが連携の強さよ。格上相手にしっかり戦うことが出来る。貴方はあの2人をよく見習いなさい」
そう言い終わった瞬間、イリアにアルトの爆裂弾が向かってきた。
「ちょ、ちょっとアルト君! もう終わりよ! だから撃たないで!」
イリアは避けながら言うと、アルトからの攻撃がやんだ。
「そ、それじゃああの2人に教えてもらうのよ! 私は飛ばされたバナーを探しに行くから!」
そう言ってイリアはどこかに飛んでいった。
少しの間呆然としていた3人は、アルトとサーシャに連携のコツを教えてもらいに行く。
3人に詰め寄られたアルトとサーシャは、結局この日の夜遅くまで付き合うことになった。
その練習の途中でアルトが。
「また押し付けやがって……あのババアいつか必ず仕返ししてやる……! 美人だからって調子に乗るなよ……!」
と言っていたとか言っていなかったとか。
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今回はなんかアルトとサーシャがすごいよ~というのを伝える?回でした。
次回から本格的に対抗戦にはいっていきますよ!
お楽しみに!
この作品が面白い!まぁいいんじゃない?アルトとドロウ副会長のコンビが見たい!などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!
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ではではまた次話で。
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