第57話 選抜チーム決定(改)

 襲撃と、俺とイリア校長の喧嘩から1週間。


 この学園は、現在復旧作業と授業を同時に行なっている状態だ。


 まぁその理由は2つある。


 1つ目は、復旧にも魔法を使うため、授業として生徒にも手伝ってもらおうという理由。


 2つ目は、建物の被害が多すぎて終わらないと言う理由だ。


 これに関しては、主に俺とイリア校長の喧嘩で壊れたものが殆どで、残りはサーシャとユミル先輩が壊したくらい。


 ドロウ先輩は少しも壊していなかった。


 俺とイリア校長の喧嘩は、俺たちの元にやってきた人達総出で止められることに。


 その後、俺とイリア校長はめちゃくちゃ怒られた。


 特に、笑顔で説教をしてくるユミル先輩には、俺もイリア校長も冷や汗をかいた気がする。


 そして弁償は、7割がイリア校長、2割が俺、残りは王室が払うことになった。


 これのせいで『お金がなくなる……ただでさえ減給中なのに……』と嘆いていたイリア校長の姿は滑稽だったなぁ……。


 その時は思わず笑いそうになったけど、隣で笑顔の圧力を発していたサーシャがいたので、なんとか耐えた。


 そしてカマセ先輩が使っていた注射器をには、なんと魔族の血液が入っていたそうだ。


 俺はそれを聞いた時、現代にも魔族っているんだなぁと思った。


 なぜ俺がこう思ったのかと言うと、500年前に魔族の王である魔王率いる魔王軍と、異世界から召喚された勇者達率いる人類軍の人魔戦争という戦争が勃発。


 そしてその時は人類が勝ち、魔族は滅ぼされたと言い伝えられているからだ。


 なので本当なら居ないはずの魔族の血液が使われているとわかり、国の学者達は大混乱。


 今は国を挙げて入手場所を調べているとか。


 まぁ俺にはあまり関係ない話だ。


 ん?今のもしかしてフラグ?


 大丈夫だよね?まだ言ってるわけでもないし。


 うん、大丈夫と思っておこう。


 俺はそこで考えるのを辞める。


 そして今俺のクラスの授業は、火属性は瓦礫の焼却、水属性は掃除、風は燃えない塵の片付け、土は建物の修復と分かれて行われていた。


 しかし俺は属性魔法が使えないので、【身体強化】を使って瓦礫を撤去すると言う肉体労働をしている。


 くそッ……なんで俺だけ肉体なんだよ……!


 俺に属性がないせいでしたね!


 今、この世界に来て1番【不適合者】になったことを恨んだ。


 だってみんな楽そうに魔法使っているのに、俺だけ汗を流して往復1km以上を何度も行き来しているんだぞ?


 もうパワハラだと思うんだよね。


 あっ、前世の芸能人の言葉が出てきてしまった。


 そう言えばこの世界の人にこれを言っても全く理解されなかったんだよな。


 まずパワハラなんて存在しなかったし。


 まぁこの世界自体がパワハラみたいなもんだしな。


 俺はこの世界の理不尽さを今更ながらに痛感する。  


 俺が少し止まっていると、先生に怒られた。


 くそっ…………やっぱり俺の人生はハードモードだ。


 俺は密かに涙を流した。





♦︎♦︎♦︎





 俺がこの世の理不尽を痛感した2日後、とうとう選抜チームが決定したらしい。


 本当は、毎年選抜戦をするらしいが、今年は襲撃者に立ち向かった生徒の中でも実力が上の人が選ばれることとなった。


 全校生徒の目の前にイリア校長が現れる。


「みんな揃っているな? それでは選抜チームの発表を始める! これは先日の襲撃者の退治に貢献した生徒が選ばれている。だから前回のように不正などと言わないようにね?」


 イリア校長がそう言って釘を刺す。


 まぁ前回はそれが原因でああなったわけだし、流石に注意するか。


 イリア校長は、全員が頷いたのを確認すると。


「まず、先日の貢献度を発表しよう。1位は、生徒会副会長ドロウ・ウォーター! 彼は被害を最小限に抑え、襲撃者を2人も捕らえた」


 イリア校長がそう言った途端、会場に割れんばかりの拍手と、女子の黄色い声援が発生する。


 うるさっ!?鼓膜が破れるわ!


 普段銃を使っているから普通の人よりも鼓膜が強いはずの俺だが、ここは発砲音よりうるさい気がする。


 俺が少し愚痴っているとイリア校長が2位の人を言う。


「2位がサーシャ・フォン・ドラグーン! 彼女は少し被害が出たものの、副会長と同じように2人倒した。3位がアルト・ガーディアン!」


 そう言った瞬間、俺の名前もあったはずだが、沢山の拍手が起こった。


 あれ?前回の反応と全然違うんだけど……。


「彼は、50対1と言う圧倒的に不利な状況で、その全てに勝ち、違法な物を使った挑戦者達を捉えてその違法な薬物を1つ入手することに成功した」


 イリア校長がそう言うと、更に拍手が起こり、とうとう黄色い声援まで送られてきた。


 やばい、めっちゃ気分がいいんですけど。

 

 前世では黄色い声援なんて貰ったことなかったから不思議な感じだ。


 しかしなんで急にこんなことになったんだ?


 俺が困惑していると、サーシャが耳打ちする。


「みんなアルトの戦いを見て、見方を変えたのよ。よかったね、アルト!」


 そう言って笑うサーシャ。


 うん、可愛い。


 そんなことを思っていると、イリア校長に隣にこいと言われたので隣に行く。


 その後、ユミル先輩、ソフィアが呼ばれた。


 そうしてイリア校長の周りに5人の生徒が集まる。


「この5人が今年の選抜チームよ。今回は異例の1年生3人が選抜チームに入ると言う快挙を成し遂げた。そしてその中には【不適合者】であるアルト・ガーディアンもいる。この生徒は【不適合者】でありながら、努力で数多の天才達を薙ぎ払ってこの場所にいる。だから他の生徒も今回の結果で諦めずに次も頑張ってほしい」


 イリア校長がそう言うと更に拍手が起きた。


 どうやら俺はこの学園に認められたようだ。


 そのことに少し感動しながら見ていた。


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次は選抜チームでの特訓です。

お楽しみに!

 この作品が面白い!まぁいいんじゃない?アルトとドロウ副会長のコンビが見たい!などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

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 ではではまた次話で。

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