第52話 【不適合者】の実力①

 俺は面倒な気持ちを抑えて結界内に入ろうとすると、いつの間にか近くに来ていたイリア校長が耳元で。


「これは相手が何人もいるから頑張ってね」


 と言ってきた。


 えっ?ついさっき俺対カマセ先輩のって言ったよね?


 俺はついイラっときたので、一発殴ろうかと思ったら、気がついたらもういなかった。


 俺はイリア校長を【魔力感知】で探すと、元の位置に戻っている。


 わざわざ言いに来なくてもいいのに……。


 絶対からかいに来ただろあの性悪女ァ!


 俺は怒りをなんとか抑えてカマセ先輩が来るのを待つ。


 そして結界内で待つこと五分。


 やっとカマセ先輩が入ってきた。


 やっとか……さて何人連れてきたのか……な……え?


 俺は人数を見て絶句する。


 なんと結界内に50人ほどの生徒が入ってきたのだ。


 これは流石に卑怯すぎやしないかい?


 俺の予想では10人くらいだと思ってたんだけど……。


 えっ、俺ってそんなに不満を持たれてたの?


 ……いや違うな。絶対にイリア校長の選抜チーム入り確実が原因だな。


 本当に余計なことをしてくれる。


 いつか必ずボコボコにしてやろう。


 今はまだしようとしたら多分返り討ちに遭うからしないけど。


 ……よし、現実逃避はやめて頑張ってみるか。


 そんなことを思っていると、カマセ先輩……もう先輩なくていいか、が話しかけてくる。


「これでどうだ【不適合者】! 最近調子に乗っているようだからここでは痛い目に遭ってもらおう! そして無様な姿を見せて恥をかくんだな!」


 そう言ってニヤニヤし出す。


 他の挑戦者や観客も笑い出した。


 どうやら俺に恥をかかせたいらしい。


 だが俺はそんなカマセに、試合前に1つ言いたいことがあった。


「なぁカマセ先輩?」


 俺が呼ぶとカマセ先輩がこちらを振り向く気配を感じる。


 俺はカマセ先輩と挑戦者に向かって出来るだけ意地悪そうな笑みを浮かべ。

 

「たかが1年を、それも【不適合者】を相手に50人で挑戦してるくせに恥をかかせるって……。断然あんたらの方がみっともないですよ?」


 と言うと挑戦者全ての魔力が高まり始め。


「「「「「「「絶対ぶっ潰してやる!」」」」」」」


 そう言って大量の魔法を、開始の合図も待たずに放ってきた。


 こいつら沸点低すぎるだろ!


 まぁ俺が煽ったんだけどさ!


 俺は大量の、それもさまざまな属性の魔法を【精密感知】と【身体強化】を駆使して回避しまくる。


 こいつら卑怯すぎだろ!


 それになんでイリア校長も他の教師も何も言わないんだよ!


 俺は目が見えてないのに!


 俺はブツブツと文句を言いながら回避し続ける。


 そしてやっと全て避けた頃には床が大変なことになっていた。


 くそッ、足場が悪い。


 俺が悪態をついているとカマセが。


「ふんっ! やっぱり口ほどにもないな! 【不適合者】はこの学園に必要ないんだよ!」


 と言うと、挑戦者達も観客達も『そうだそうだ!』『【不適合者】は引っ込んでろ!』『どうせズルして入ってきたんだろ!』などと、好き勝手ほざいている。


 さらに審判は、俺を人として見ていない。


 さっきから俺に冷めた目をずっと見ていた。


 今俺の味方はこの学園にほぼいない。


 さらにその味方さえも何故かブーイングを受けている。


 さっきまでずっと気にしないようにしていたが……そろそろ限界だ。


 何故俺や、俺を味方してくれる人達がここまで言われなければいけない?


 それにこいつらはバカなのか?


 俺は公爵家次期当主で、サーシャは王族だぞ?


 それなのにこんなに舐められるとは……俺が【不適合者】だからいけないのか?


 たったそれだけで俺は毎日陰湿なイジメを面識もない奴から受けないといけないのか?


 そしてそれに気づいたサーシャ達が暴れそうになったのを、こんな屑共のために俺は止めていたのか?


 まぁそれは殆ど男だが。


 はぁ……もう面倒だ。さっさと終わらせてやろう、圧倒的な蹂躙で。


 俺は【身体強化】を1500%にして拳を構える。


 銃だと一瞬で終わってしまい、不正とか言われるかもしれないので、今回は拳で戦うことにする。


 さぁ……屑ども、ちゃんと見ておけよ。


 お前らが蔑んでいた【不適合者】にぶっ潰される、その瞬間を……!


 俺は最後の理性を手放す。


 そして俺はただひたすらに敵を殲滅するだけの鬼神となった。





♦︎♦︎♦︎

(カマセ視点)





 一体なんなんだあいつは……!


 俺は目を背けたいほどの光景にただひたすらに驚愕していた。


 いや俺だけじゃない。


 先ほどまでヤジを飛ばしていた観客のほぼ全ての生徒がこの光景に驚愕し、恐怖していた。


 その証拠に今では全くヤジが聞こえない。


 そして俺の目の前で、無表情なままの【不適合者】に俺の仲間がどんどん倒されていく。


 ある人は蹴りを受けて吹っ飛び、またある人は鳩尾に攻撃を受けて気絶し、またある人は頭を掴まれ地面に叩きつけられる。


 まさしく蹂躙という言葉が相応しい状態になっていた。


 くそッ!一体どうなっているんだ!


「どう言うことだ! なぜだ! どうしてこうなった!」


 俺がそう叫んでいる間にも。


「カマセ! 無理だ! こいつは化け物だ! 序列7位の奴がやられ……ぎゃああああああ!」


「こ、こないで! い、いや! きゃあああああ!」


「くそッ! 食らえ!【ファイア……ぶべっ!!」


「くるな! あっちに行け! や、うわあああああ!!」


 【不適合者】の攻撃でどんどん仲間が減っていく。


「くそッ! なぜ、たかが【不適合者】1人に俺の計画が狂わされているんだ!」


 本当は【不適合者】を俺たちがボコボコにした後に、全生徒にむけて土下座をさせて退学させる予定だったのに!


 もう既に俺の仲間は10人ほどしかいない。


 くそッ!このままでは……あと少しで俺まで……。


 そう考えた瞬間に俺の体がブルっと震える。


 ダメだ!そんなことになったら俺が恥をかいてしまう……!


 俺はもしものために用意しておいた奥の手を使うことにした。


 先ほど校長先生に教師の手出しは禁止だと確認をとっている。


 ということは、殆ど何をしてもいいということだ。


 俺は通信魔道具を取り出して観客席にいる仲間に連絡をとる。


「例の作戦を開始しろ」


『了解した』


 よし……これで俺たちの勝ちだ!

 

 俺は自分の策が成功した時の【不適合者】の顔を想像して笑みを浮かべた。 

 

 それが1番の間違いだと知らずに……。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 突然話を変えてすいませんでした。

 これからはこういうことが無いようにしたいと思います。

 そして昨日投稿できなくて本当に申し訳有りませんでした。

 書いていた下書きが全て消えてしまい、1から書いていると時間に間に合いませんでした。

 その代わり今日は夕方の4時にもう1話上げます。


 この作品が面白い!まぁいいんじゃない?アルトとドロウ副会長のコンビが見たい!などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

 また、フォロー、感想、応援コメント、誤字脱字や改善点などを頂けると作者の励みになります。

 ではではまた次話で。

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