第40話 生徒会副会長が訪ねてきました

「アルト・ガーディアン、お前はこの学園に不要な存在だ。よって生徒会副会長の権限でお前を退学にする」


 はいはいまた嫌がらせね、今度は…………えっ?


「えええええええ!?退学!?アルトが!?なんで!?」


 サーシャが叫ぶ。


 俺はこの学園に来て色々とやらかしているから少し本当ではないのかと思いながらも、一応確認を取る。


「…………マジですか?」


「ああマジだ。今日中に出ていってくれ」


 どうやら嫌がらせかもしれないが、退学はほんとらしい。


 俺は大きく息を吸い込む。


「なんで面倒ごとばかり起きるんだよおおおおおおお!?」


 このカオスな状態にどうしてなったかは、今から1時間前に遡る。






♦︎♦︎♦︎







 リーン先生の暴走から1週間経ち、あれからはちゃんと授業を受けれている。


 まぁ普通はちゃんと受けれるのが当たり前なんだけどね。


 ただこの学園は思った以上に【不適合者】に厳しいようだ。


 Sクラスの殆どは最近は仲良くしてくれているが、一部は相変わらず目の敵にしている。


 あれだけ格の違いを見せつけたのにさ。


 まぁ多分自分が【不適合者】に負けているのを認めたくないだけだろうが。


 何故そんなことを思ったかと言うと、まず他のクラスの人たちとすれ違うと。


「あれって、卑怯な手を使ってSクラスに入った【不適合者】よね?」


「ほんとに公爵になったからって不正はいけないよな。サーシャ王女もちゃんと受けてるのに」


 みたいな感じでめっちゃ不正だと言われているし、食堂に行くと俺よりも成績の低い奴らに、侮蔑の目を向けられる。


 まぁその時は軽く殺気を飛ばしてビビらせたけど。


 その他にも色々と嫌がらせをされている。


 この学園で【不適合者】が俺だけだからなのかな?


 正直大して気にしていないけど、サーシャがヤバい。


 本人は本気で怒ってくれているのだろうけど、俺からしてみれば、なんか威嚇してるチワワみたいで可愛い。


 まぁそのことを言っても、チワワなんてこの世界にいないからわからないと思うけど。


 と言うことで最近少しウザくなってきたので、そろそろ1回絞めてやろうかな?


 ただ、いきなり殴りかかったらいけないだろうし、やっぱり決闘がいいのか?


 て言うか俺って公爵家の次期当主だよね?


 なんでこんなに嫌がらせされるの?


 ラノベとかだったら絶対にいじめとか嫌がらせは受けてないよね?


 身分ですら【不適合者】と言う負のレッテルには勝てないのか?


 急にラノベと現実の違いに気がついて、少し落ち込んでいると、俺を目の敵にしている生徒が話しかけてきた。


「お前は今日で終わりだな。くくっ、残念だったな、この公爵家である僕を不快にさせた罪だ」


 なんだこいつ、気持ち悪いんだけど。


 ってこいつ昨日俺に話しかけてきたやつじゃないか。


 たしか……。



『おい【不適合者】!』


『ん?なんだお前ら』


『俺はハン『ちょっと待って、思い出すから』いいだろう早く思い出せ』


『………………ごめん、全く思い出せないや』


『なら途中で遮るな!俺の名前はハン?・ウォーターだ!俺は公爵家の次期当主だぞ!お前も貴族なら覚えておけ!』


『わかったわかった、そのうち覚えるよ。じゃあな』


『おい!どこに行く気だ!俺がわざわざお前に話しかけてやっているんだぞ!』


『ごめんな?これから俺サーシャとデートだから。と言うことでさよなら』


『ちょっ、おい、待て!』



 うん、思い出した。


 絶対に面倒くさい話だと思って帰ったんだったわ。


 たしか名前は……。


「ハンタ?」


「ハンクだ!昨日名乗ったろう!」


「ごめんごめん、サーシャとのデートですっかり忘れてたわ」


「おまっ…………もういい。今日で最後なんだからな」


 ……何言ってるんだこいつ?


 俺が奇妙な物を見るような目で見ていると、教室の扉が開き中に1人のメガネをかけてたイケメンの生徒が入ってきた。


 うーん、見たことないし多分先輩だな。


 なんか制服の色も少し違うし。

 

 それはそうと先輩が何の用なのだろうか? 


「このクラスにアルト・ガーディアンはいるか?」


 どうやら先輩が用があった生徒は俺のようだ。


「はい、俺がアルトガーディアンですが……俺に何かようですか?」


「ああ、お前は退学だ」





♦︎♦︎♦︎





 ここから冒頭に戻る。


「なんで俺は退学なのですか?」


 正直、色々やらかしすぎてどれのせいかわからない。


「何故かだと……?お前はどうやら俺の弟をいじめていたらしいな?昨日俺に泣きついてきたぞ」


「ちょっと兄上!それは言わないお約束です!」


 そう言ってさっき話しかけてきた、ハンク?ってやつが駆け寄っていった。


 俺はと言うと。


 どう言うことだ?俺の思っていた理由と全く違うんですけど。


 虐めていた?あの名前も知らなかった奴を?


 どちらかと言うと俺が虐められていたんだけど。


「失礼ながら副会長の……「ドロウだ」ドロウ副会長は、俺がそこの奴を虐めていたと聞いているのですか?」


「そうだ、そうなんだろうハンク?」


「はい、そうです!このアルト・ガーディアンが公爵家であるこの僕を虐めてきました!」


 物凄い笑顔で言うので。


「だから俺は昨日までお前の名前すら知らなかったんだから、虐めているわけないだろうが」


 ボソッと俺が呟くとどうやらドロウ副会長には聞こえていたらしく。


「ふむ……確かに名前も知らずに虐めるやつは居ないな。居たとしたらただの人間の屑だ」


 ん?どうやら俺の言葉を肯定してくれるみたいだ。


 もしかしてこの副会長いい人なのかもしれない。


「ハンク、アルト・ガーディアンはこう言っているがどうなんだ?」


 今度はハンクに質問するドロウ。


「えっと…………その……」


 あーあ、そんなにどもったらどちらが嘘ついているかバレバレじゃないか。


 ほらみろ、ドロウ副会長が途端に俺に申しわけなさそうな顔してるよ。


 なんか可哀想な人だな…………。


 そう言えば。


「ドロウ副会長はハンクの兄なんですよね?」


「そうだがそれがどうした?」


「なんでドロウ副会長じゃなくてハンクが次期当主なんですか?」


「ああそれはだな、俺が魔法騎士団に入りたいと言ったからだ」


 へぇ……それはすごいな。


 この国の魔法騎士団は、物凄くレベルが高く、冒険者ランクで言うと、最低でもB級並みで、騎士団長などはS級並みの実力者らしい。


 そう考えるとこの人は夢に向かって懸命に進んでいるんだろう。


 確かに【魔力視】で見ても凄く綺麗な魔法制御だったし。


 多分相当努力したんだろう。


 うーん、多分というか絶対いい人だな副会長。


 しかも貴族において大事な長男を、無理やり当主にするわけでなく、夢を応援する両親もいい人だな。


 ただこのハンクって奴は腐ってるけど。


 どうやらハンクが嘘をついていたとわかったらしいドロウ副会長は、俺に謝罪してきた。


「済まなかったなアルト・ガーディアン。家の弟が迷惑をかけた。コイツは【不適合者】を差別しているから、多分気に入らなかったんだろう。同じSクラスなのが」


 まさか副会長が頭を下げるとは……。


 なんか罪悪感が半端ないな……。


 よし、こうするか。


「ならハンクと俺が戦って、ハンクが勝ったら俺は退学でいいです。ハンクが負けたら、しっかり教育してやってください」


 俺がそういうと、副会長は再び頭を下げてきた。


「ほんとに済まない。そしてありがとう。それじゃあハンク、決闘してくれるらしいから頑張れよ」


 そう言って教室を出ていった。


 ヤバい、本当に罪悪感が……。


 決闘なんて俺の憂さ晴らしにしようと考えただけなのに……。


 チラッとハンクを見ると、この世の終わりを見たような顔をしていた。


 その顔を見て心の中で笑っていると、副会長が戻ってきて。


「そう言えばアルト・ガーディアン。これからはなるべくものは壊さないでくれよ。ハンクとの決闘でも。皺寄せが俺たちに来るからな」


 …………………………。


 俺は即座にジャンピング土下座を決めると。


「本当にすいませんでしたッ!!これからは気をつけます!!」


 全身全霊で謝った。


 ついでに心の中でも。


 それを聞いて副会長は笑いながら帰っていった。


 因みに決闘は来週にすることになったそうだ。



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久しぶりにまともないい人を出しました。

副会長は結構前から出したかった作者のお気に入りのキャラなので、これからどんどん出てきます。

 この作品が面白い!まぁいいんじゃない?ドロウ副会長を出して欲しい!などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

 ☆☆☆→★☆☆でも作者は物凄く喜びます。

 また、フォロー、感想、応援コメント、誤字脱字や改善点などを頂けると作者の励みになります。

 ではではまた次話で。

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