第36話 模擬戦②

 俺が悩んでいる間に次の試合が終わっていた。


 やべ……見過ごしたんだけど。


「アイカ、今回の試合どうだった?」


「私から見たら全然ですが、一般的にみるとこのクラスでもやっていけるレベルだと思います。ですが、先ほどのアーサー君とブラッド君の試合の方が数段上でしたね」


 ようは、大したことなかったってことね。


 まぁアイカにとって、このクラスの人達はサーシャとソフィアと俺以外余裕で勝てそうだしな。


 俺とアイカで話していると次のペアが結界に入ってきた。


「おっ次はサーシャとソフィアのペアか」


 俺がそう呟くとサーシャとソフィアを【魔力視】で見ていたアイカが口を開く。


「あの2人はアルトや私には敵わないですが、とても強いですね。確かサーシャさんはアルトの婚約者でしたね」


「うん、自慢の婚約者だ」


 確かにサーシャは俺の自慢の婚約者なんだが、さっきから俺の時だけ君がなくて呼び捨てなのがめっちゃ気になる。


 アイカは、俺が聞きたそうにしているのに気がついたのか。


「あ、呼び捨てではダメでしたか?折角ペアになったことですし、いいかなと思ったのですが」


 そう言って少ししゅんとするアイカ。


「いやいいんだよ!ただ気になっただけだから!」


 俺が急いで訂正すると、アイカは笑顔で。


「はい!よろしくお願いします!」


 …………うん可愛い。


 前世だったら美少女の嫌悪感丸出しの顔しかなかったからな。


 やっぱりこの世界は最高だ!!


 そんなことをしているうちにサーシャとソフィアの試合が始まろうとしていた。


 バナー先生が声を上げる。


「これからサーシャ対ソフィアの試合を始める!それではスタート!」


 今回はどちらも動かない。


 だがお互いに【魔力視】を使用していつでも攻撃できるようにしている。


 先に仕掛けたのはソフィアだった。


「【ウィンドカッター】ッ!」


 ソフィアの放った魔法がサーシャに飛んでいく。


 しかしそれをサーシャが魔力を解放した衝撃で防ぐ。


 えっ…………そんなことできるんだな……。


 ならサーシャよりも魔力多い俺がやったらどうなるんだ?


 初めて見た技術に少しテンションが上がっていると、今度はサーシャが魔法を放つ。


「【ライトニング】【ワープ】」


 サーシャの放った雷が空間の穴に入って行く。


 そう言えば、サーシャっていつの間に空間魔法使えるようになったんだ?


 今日初めて見たんだけど。


 やっぱり空間魔法は強いなぁ……。


 俺も欲しかった……。


 穴に飲み込まれた魔法が突如、ソフィアの後ろに出現した。


「くっ……!?」


 ソフィアは避けれず当たってしまい、吹っ飛ぶ。


 うわっ、あれはやばいぞ。


 雷は当たったら感電するし。


 しかしソフィアは普通に立ち上がった。


「……え?」


 どうやらサーシャはこれで終わると思っていたらしい。


「ならもう一回!【サンダースピア】ッ!【ワープ】ッ!」


 サーシャが放った魔法はまたもやソフィアにあたるがまた立ち上がる。


 サーシャは驚きに目を見開いているが、俺はなぜ倒れないかを見破った。


 チラッとアイカを見ると、納得したようで、小声で『凄いですねこれは……』と呟いていた。


 俺は今までソフィアの属性が風だけだと思っていたが、まずそこが違う。


 ソフィアは風と、俺も本でしか聞いたことのない『金属』という属性を持っていると思われる。


 その金属をあたる直前に出して避雷針がわりに使っていたのだ。


 ソフィアは強いな……。


 冷静に物事を対処している。


 一方でサーシャは、今自信のあった魔法を防がれて焦っているから、このままだとサーシャが負けるな。


 それはアイカも思ったのか。


「ソフィアさんの方が一枚上手ですね。このままだとサーシャさんは必ず負けるでしょう」


「まぁこのままだとそうだろうな」


「サーシャさんは婚約者なのでしょう?アルトは心配ではないのですか?」


「だからこそだよ」


 サーシャはこんな無様な試合はしない。


「まぁ見ときなって。この後びっくりするぞ」


 俺が自信満々にそう言うとアイカはイマイチ理解できないのか、首を傾げていた。


 サーシャは今魔力消費の低い【アイス】でソフィアの攻撃を防いでいる。


 俺はサーシャに叫ぶ。


「どうしたサーシャ!こんなもんじゃないだろ!!一緒に鍛錬した成果を見せてみろ!」


 するとサーシャは驚いたようにこっちを向いて笑顔になる。


「うん!2人の特訓の成果を見せるよ!!ちゃんと見ててねアルト!!」


「おう!」


 サーシャは、再びソフィアの方を向き話し始める。


「ソフィアちゃん。私はまだソフィアちゃんよりも弱いけど今回の試合は勝たせてもらうね!!」


「ほんとに私に勝てるのかやってみればいいじゃない!私は負けないわ!」


 サーシャは俺が教えた魔力解放を使う。


 その瞬間、サーシャの周りのものが浮かぶ。


 ソフィアとアイカが驚きで固まる。


 だがすぐに【魔力視】を発動して驚きの声を上げる。


「どうしてサーシャの魔力が上がっているのよ!」


 今まで冷静だったソフィアが取り乱す。


 アイカもソフィアほどではないが取り乱している。


「あの、アルト、どうしてサーシャさんの魔力が上がったんですか?」


 俺はそう聞かれたので、謎解きをする。


「あれは簡単なことだ。自分の魔力の器を無理やり小さくしているだけだ」


「器を小さく?」


「そうだ。一旦魔力をギリギリまで減らしてから体外のマナで限界値を意図的に減らすことで魔力量が減るんだ」


「それはアルトもやっているのか?」


「ん?俺か?俺はもうできなくなったんだよ」


「できなくなった?」


「自然のマナと俺の魔力が近くなったんだよな。無属性だし」


「近く?」


「そうそう、俺の魔力の性質が無属性だったってのもあってほぼ一緒になったから意味なくなったんだよ」


「そ、そうなんですね……」


 うん、大して分かってないな。


 まぁ今まで聞いた事ないと思うし。


 俺もびっくりしたもんなあ。


 まぁそのおかげで【魔力吸収】も楽になったんだけど。


 俺が昔のことを思い出していると、サーシャとソフィアの試合は佳境を迎えていた。


 サーシャはひたすらに避け、ソフィアは魔法を発動させないようにひたすら撃っている。


 だがサーシャは魔力が貯まってしまった。


「ごめんねソフィアちゃん!この勝負はやっぱり私の勝ちだよ!」


 サーシャが魔力を右手に集める。


 すると、右手が凍ったり、雷が発生したり、霧が発生したりしながら一つにまとまっていく。


 そしてその魔法の名前を紡ぐ。


「3属性複合魔法【雷神の怒り】ッッ!!」


 その瞬間に空に雲が出現し、辺り一面に雹と雷が落ち始める。


 その一つ一つが上級魔法並みの威力があるため、それを防ぐには同じ上級魔法を物凄い数撃たないと防ぐことはできない。


 ソフィアは先ほどから魔法を使っていたため、魔力がほぼない。


 サーシャの雷と雹が直撃し、気絶する。


「勝者、サーシャ!!」


 審判のバナー先生が判定を下す。


「やったー!!」


 サーシャは飛び跳ねながら喜んでいる。


 うーん、サーシャ強すぎな。


 あの魔法は俺でもまあまあきついぞ。


 多分アイカは防ぎ切れないんじゃないか?


「どうだったアイカ?サーシャは」


「ええ、びっくりしました。まさかあんな魔法を隠し持っていたなんて……」


 どうやらサーシャの魔法は、アイカに少なからず衝撃をもたらしたようだ。


 次はいよいよ俺たちの番だ。


「アルト、行きましょう!」


「ああ」


 始める前に、この学園の教師陣に取り敢えず謝っておこう。


 色々壊すと思うので、弁償だけは勘弁してください!!


 よし、これできっと神様がなんとかしてくれると信じよう。


 俺は神に祈りながらリングに歩いて行く。


 



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次はとうとうアルト達の対戦です。

お楽しみに!


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