第35話 模擬戦①(改)

 バナー先生に言われて渋々グラウンドに来た俺たちだったが、今まさかのバナー先生を待っている。


 なんなんだよ、自分が早く集まれって言っておいてバナー先生が1番遅いじゃないか。


 どうやらみんなもそう思ったのか、文句を次々と言っている。


「ねぇアルト、バナー先生来ないね」


「ああ、もう30分たったのにな」


 そう、もう既にクラスの生徒が全員集合してから30分は経っている。


 それなのに一向に来ない。


 生徒の怒りが徐々に溜まっていく。


 すると、やっとバナー先生が来た。


「せんせ~遅くないすか?俺らめっちゃ待っていたんですけど~。な~にしてたんですかぁ~」


 ヘイスがそう聞くと、


「ん?すまないな。ついさっきまで武器の手入れをしていたら忘れてたわ!!すまん!」


「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」


「よ、よし!そそそれじゃあ模擬戦をしようか!」


 生徒全員の無言の圧力に耐えきれなくなったのか、焦りながら言ってきた。


「じゃあ、やりたい人とペア組んでくれ」


 はいきたーボッチにとっての地獄の時間。


 俺は前世ではペアを作れと言われても、ボッチだから一緒にやる友達も居なくて、毎回俺と同じく余った人としていた。


 ただそのペアの人には、『何で俺がこのボッチと?』みたいな顔を毎回されるんだよなぁ……。


 だからやってる途中もお互いに無言だからものすごく気まずいんだよ。


 それをやれだと……?


 周りを見てみると続々とペアを作っていた。


「サーシャ、一緒にペアを組もう?」


「あ、ごめんね。私ソフィアとペア組むことになったの」


「あ、ああそうか……。がんばれよ」


「うん!頑張って勝つね!」


「お、おう!」


 ……詰んだ。


 もう俺が組める人いないんだけど。


 そう思っていたが、まさかの勇者の末裔の子が誰ともペア組んでいなかった。


 勇者の末裔なら引っ張りだこのはず……ああ、強そうだからみんな避けているのか。


「えっと……アイカだったか?俺とペア組まないか?」


 俺がそう言うと、アイカはパァと笑顔になり。


「よ、よろしくお願いします!なんでなのか分からないんですけど、私が声をかけるとみんな逃げてしまうんです……」


 まぁこのクラスの人たちは、みんな【魔力視】使えるから俺とアイカだけが魔力がめっちゃ多いのわかるもんな。


「それは多分俺たちが強いからだな」


 まぁ俺の場合は【不適合者】って言うのもあるけど。


 こうして俺はアイカとペアを組むことになった。


 【勇者】のスキルはどんなものなのか気になるし、自分の今の実力が同学年にはどのくらいに見えるのかを知るのには、ちょうどいい機会だ。


 さて、【不適合者】と蔑んでいるやつを見返してやるか!


 俺は密かに考えはじめた。






♦︎♦︎♦︎






「みんなペアが組めたみたいだな。それじゃあ、アルトとアイカのペア以外は好きな順番でやっていいぞ」


 え?なんで俺たちだけ選べないんだ?


 どうやらアイカも同じことを思ったらしく、首を傾げていた。


 ……めっちゃ可愛いんですけど。


 そう言えばアイカも美少女だったな。


 【勇者】スキルのことを考ええすぎて頭からすっかり抜けて落ちてた。


 俺たちがダメな理由を聞いてみるか。


「バナー先生」


「ん?アルトか、どうした?」


「どうして俺たちだけ選べないんですか?」


「そんなのお前たちが他の奴らと別格だから始めらへんでやったら後の人が、この場所使えなくなるだろう」


 確かにそうだな。


 正直言ってアイカと戦ったら間違いなくグラウンドが大変なことになる。


 それをアイカもわかっているのか納得した表情になっていた。


 じゃあ、始めは見ておくか……。


「よし、それじゃあ模擬戦を始めるぞ!まずは、アーサー対ブラッドだ。お互いにリングに上がってくれ!」


 へぇアーサーとはブラッドが組んだのか……。


 絶対に組まなそうだったのにな。


 アーサーとブラッドがリングに上がるのを確認したバナー先生は。


「これからアーサー対ブラッドの模擬戦を始める!お互い武器の持ち込みはありだ。今このグラウンドには、ダメージ変換の結界魔道具が設置されているから、ダメージは結界を出るとなくなるから存分に戦ってくれ!それじゃあ第一試合スタートだっ!!」


 バナー先生の始まりの掛け声と共に、2人が一斉に魔法を行使する。


「【ライトニング】ッ!」


「【アースランス】ッ!」


 2人の魔法がぶつかり、相殺される。


 おお、結構強いな2人とも。


 アーサーは今はいつものナルシストじゃなく、真剣にしている。


 そうしていればもっとモテるのに。


 少しかわいそうに感じる俺だった。


 魔法が相殺されると、今度はブラッドが、【アースランス】を手に持ってアースに接近し、胴体目掛けて突く。


 初めて土魔法をこの目で見るけど、結構使い勝手がいいな。


 アーサーは、自分の腰にある剣を鞘から抜いて、ブラッドの突きを受け流す。


 おお、アーサーは剣の腕前も凄いんだなぁ……ほんとにナルシストじゃなかったらいいのに。


 体制が崩れたブラッドにアーサーが剣を振り下ろすが。


「【アースウォール】」


 2人の間に土の壁が出現して、剣が壁に当たる。


 その後もずっと。


「【アースランス】ッッ!【アースバレット】ッッ!【アースウォール】ッッ!」


「【ライトニング】ッッ!【サンダースピア】ッッ!【サンダーボール】ッッ!」


 魔法の撃ち合いが続いていた。


 まぁお互いに接近戦はあまり経験が無さそうだったししょうがないのかな?


 すると、ブラッドから魔力の高まりを感じた。


「ブラッド君!勝負を決めにきたね!」


「ああ、もうこれ以上やったても魔力の無駄だ。これで終わりにする」


「そうだね、同意見だよ。なら僕も次の一撃で決める!」


 アーサーも魔力を解放しはじめた。


 2人の魔力が最大まで上がると、同時に叫ぶ。


「【メテオインパクト】ッッ!!」


「【プラズマレーザー】ッッ!!」


 2人の魔法がぶつかり、結界内でものすごい爆発が起きる。


 砂埃が晴れて見てみると、アーサーがボロボロになって倒れており、ブラッドは対して傷ついていなかった。


「はぁ……はぁ……何故僕が押し負けたんだ?」


 アーサーがそう言うとブラッドが答える。


「今回はただ単に相性が悪がっただけだ。お前が他の属性の奴と戦っていれば勝てただろうな」


「そうか……でも強かったね。ブラッド」


「お前もなナルシストのアーサー」


 2人は笑顔で結界から出て行く。


 それを見ていた俺はと言うと。


 ……なんか友情芽生えてるね。


 なんか青春漫画を見ているような気分だった。


 俺は今回の試合についてアイカに聞いてみる。


「アイカ、今回の試合どうだった?」


「ん?あ、まぁまぁでしたね。どちらも結構強かったですし。ただまぁあの2人なら一斉に来られても勝てますね」


 やっぱりアイカは強いな。


 あれは全然まあまあじゃないんだけど。


 さすがSクラスだと思わされる試合だった。


 まぁ俺とアイカには少し物足りなかったが。


 アイカは、多分実践経験があるな。


 そういう奴って基本的に面倒くさいんだよなぁ……。


 初っ端から全力近い力を出すか迷う俺だった。



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もう1話続きます!

是非お楽しみに!


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