第18話 王女のためにテンプレをぶっ壊す

「おい、ガキども!どこから来た!俺らの仲間を倒しておいて逃げれると思っているのか?」


「いや逃げるというか……逃げる意味もないというか」


 俺が適度に煽ると、盗賊団のボスがキレた。


「おい!お前ら!標的の前にこいつらをやっちまえ!女は生かしておけよ!稀にみない上玉だからな!」


 ボスの掛け声を合図に、100人以上の盗賊達が襲ってくる。


「アナ~こっち頼む。俺はこっちの奴らやるからさ~」


「わかりました。しかしほんとにアルト様の言った通りいましたね」  


「だろう?俺の勘は結構いいらしいんだよ」


「そうなんですか……。それでは素早く片付けてきます」


 そう言ってアナは敵である盗賊団に向かって、土魔法の【アースバレット】を一度に何百個も展開して放った。


 相変わらずアナの魔法の才能はえげつないな……。


 さて、アナも頑張っていることだし俺も頑張りますか!


 俺は銃を出さず【身体強化】を500%で発動し、【精密感知】を半径10mに展開して盗賊団のボスがいる場所へと突撃した。


 何故今俺たちが盗賊団と戦っているかと言うと、それは3時間前に遡る。







♦︎♦︎♦︎






 3時間前。


 とうとう今日がやって来た……!


 今日は俺の待ちに待った婚約者候補のサーシャ王女が、我が家に来てくれる日だ。


 前世も合わせて彼女のいたことない俺は、楽しみすぎて昨日の夜は4時間しか寝れなかった。


 俺が転生して絶対にしないと思っていた子供っぽい行動トップ10だったのに。


 やっぱり精神が子供の体に引っ張られてるのかなぁ。


 ん?言うて結構寝てるって?


 俺は毎日10時間睡眠なんだよ。


 どこぞの社畜のような生活はしてないからな。


 サーシャ王女は昼の1時ごろにここに着くらしい。


 俺は今日のために新しい服を買い、めちゃくちゃ綺麗に体を洗い、しっかり歯磨きをして髪も整えた。


 家も使用人達がいつも以上に綺麗にしている。


 まぁこの家にこの国の王様達来るからな。


 汚かったらクビどころじゃ済まないだろうし。


 少し使用人達を不憫に思った。


 この家に王様達が来るって言うのに、俺の家族は全然緊張していない。


 まぁ父さんと母さんは友達らしいからそうだろうけど。


 シルもまだ小さいからよく分からないだろうし。


 ただアナよ、何故君は全く緊張してないのかね?


 君は前、一介の使用人って言ってたよね。


 え、何?王様に会ったことでもあるの?


「アナはなんで緊張してないの?」


「え?ああそう言うことですか。何故緊張してないかと言いますと、何回も既にお会いしているからですね」


 え"ぇ"?なんでそんな何回もあってるの?


 相手は王様だよ?


 俺の困惑が顔に出ていたのか、アナが俺の疑問に答えてくれた。


「こう見えても私は上級魔法を史上最年少で習得しましたからね。その時にお会いしたのと、学園で新しい魔法を作った時との2回ですかね」


 ん?アナって俺が思ってた以上に天才だったの?


 今、史上最年少で上級魔法覚えたって言ってたし。


 それに新しい魔法を作ったって言った?


「アナ、新しい魔法作ったの?」


「はい、そうですが……それを言うならアルト様も作ってるじゃないですか」


 …………そう言えば俺【魔力吸収】て言う魔法作ったわ。


 最近当たり前のように使えるようになったからすっかり忘れてた。


「もしかして俺って凄いことしてたの?」


「えっと……今更ですか?当たり前に決まってるじゃないですか。だって4歳で作ったんですから」


 そりゃそうだ。


 俺は誰にも言ってないだけでアナみたいに発表していれば、俺も同じようになっていたのか。


 …………うん、言わなくて良かった。


 王様と会うなんて絶対めんどくさいもん。


 だってラノベでもそう言う時って呼ばれてたし、大体王様って面倒くさいと言うか危険な人が多いし。


 …………ん?ラノベと言えば、王女が馬車に乗っていると……。


「ああっ!あのテンプレがあったじゃないか!」


「どうしたんですか、アルト様?急に大きな声上げて」


「アナ!王女様達が家に来るまでの道のり知ってるか!?」


「え?も、もちろん知っていますが……」


「よし、なら今からその道のりの中で襲われやすそうなところに行くぞ!」


「ええっ!?今からですか!?と言うか、どうして襲われるってわかるんですか!?」


「あ、えっとあ、あれだ、勘だ!」


「なんだかイマイチ釈然としませんが……取り敢えず行ってみましょうか。誰もいなければ急いで帰りましょう」


 俺たちは急いで服を戦闘用に着替えて、母さん達に置き手紙をして、家から飛び出した。






♦︎♦︎♦︎






 走ること2時間半。


 今やっとゴブリンがいた森に着いた。


 これまで【身体強化】を使って走っていたため、そこまで疲れていない。


 それに2人とも魔力量が多いため、大して気にする量でもなかった。


 森の中に入り、少ししてから【魔力感知】をフルパワーで発動させる。


 横を見るとすでにアナは発動させていた。


 それから10秒ほどで。


「アナ、見つけたよな?」


「はい。ものすごい数いますね」


 そうなのだ。


 てっきり多くても2、30人くらいだと思っていたのに、いざ探知してみると100人以上もいる。


 これは俺たちが来ていなかったらやばそうだったな。


「アナ、今王女様達が乗っている馬車はどの辺だ?」


「今森の入り口から10kmほど離れたところにいます」


 いや今ダメ元で聞いたんだけど。


 森の入り口から10kmってここから30kmくらい離れてるじゃん。


「ちなみに聞くけど、アナって【魔力感知】ってどのくらいの範囲いけるん?」


「えっと……50kmですね」


 はい、レベチだね。


 俺の3倍くらいか……。


 これだから天才は。


 いいなぁ、俺にも才能が欲しいなぁ。


 まぁ俺には前世のラノベの知識があるからいっか!


 と思っておくことにしよう。


 ていうかこんなことしている暇なんてなかった!


「アナ、近くの反応があるところから潰して行こう!」


「はい!」





♦︎♦︎♦︎






 そして冒頭に戻る。


 俺は5歳になってから鍛えた格闘術で、相手を無力化していく。


 アナは魔法をぶっ放し続ける。


「なんなんだこいつら!強すぎじゃねぇーか!」


「こんな奴らと戦ってられるか!俺は逃げるぞ!」


「「「「「「「「俺もだ!」」」」」」」」


 俺たちが強いと分かると一斉に逃げ出した。


 まぁこいつらの目的は王女様らしいしね。


 だが。


「「お前達を逃すと思ってるのか(いるのですか)?」」


 俺は【身体強化】を600%まで上げて瞬時に接近し、顎にアッパーを決め、次の人に蹴りを入れる。


 一方アナは、【アースバレット】と【ライトアロー】を撃ちまくっていた。


 怖っ!悪魔かよ……。


 しかしそのおかげで、さっきまで100人以上いた盗賊達は、すでに半分くらいになっていた。


 だがあちらにはまだ強い奴らが全員残っている。


「ほぅ……お前たち結構やるじゃないか。ご褒美として俺が相手を「必殺!本気のパンチ!」ぐぎゃっ!」


 幹部らしき奴が話していたが、関係なくぶん殴る。


 何故ならすぐそこまで馬車が来ているからだ。


 俺の【魔力感知】にも反応がある位近づいている。


「今お前たちの話を聞いている暇はない!とっととかかってきやがれ!!全員ぶちのめしてやる!」


 俺がそう言いながら銃に魔力を込めていると、子供に言われた幹部やボス達が一斉に俺に襲ってきた。


「はっはっはっ!バカめ!アナ!お願いします!」


 俺は足止めに銃を撃つと、すぐさまその場を全力で離れてアナの後ろに行く。


「わかりました!それでは見ていてください!私のオリジナル魔法を!三属性複合魔法

流星群ミティアーストリーム】ッッ!!」


 アナがそう叫んだ瞬間、頭上に流星群が降ってきた。


 え"え"えええええ!?なんじゃこりゃあああああ!!


 軽く俺の倍くらいのサイズの流星が大量に降ってきたんですけど!


 なにこれ、めっちゃかっこいい!!


 俺も使いたかったああああ!!


 俺は爆風に吹っ飛ばされないようにアナにしがみつきながらそんなことを考えていた。


 流星群がなくなると気がつけば、盗賊は全滅している。


 まぁあれを耐えられたら相当凄いよな……。


 今の俺だとギリギリ無理だな。


 魔力が持たないし、あの威力を完全に相殺出来ない。


「アナ、さっきの魔法凄かったね!!この魔法ってどのくらいなの?」


「えっとこれは最上級魔法ですね!(アルト様に褒められた……やった!頑張った甲斐があった!)」


 あれ?さっき上級魔法が何とかって言ってなかったっけ?


 もう今日はアナのことで驚きすぎたよ……。


「アナ!これから王女様達が来るから急いで帰るぞ!」


「ひゃう!は、はい!わかりました!」


 今アナの口からめっちゃ可愛い声が出たけど、それはまた後で行ってみよう。


 俺たちは急いでその場を離れた。


















「サーシャよ、どうだった?」


「はい!素晴らしい戦いでした!アルト様、とてもかっこよかったです!」


「あらそうなの!よかったわねサーシャ。かっこいい子が婚約者で!」


「はい!それにとても優しそうでよかったです!」


 実はアルト達の戦いが、サーシャのスキル【千里眼】で全て見られていたことに気付くのは、ほんの後数時間。



--------------------------

読者の皆様へ

どもども、作者のあおぞらです。

 この作品が面白い!まぁいいんじゃない?などと思っていただければ、☆☆☆→★★★にしていただけるとありがたいです!

 ☆☆☆→★☆☆でも作者は物凄く喜びます。

 また、フォロー、感想、応援コメント、誤字脱字や改善点などを頂けると作者の励みになります。

 ではではまた次話で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る