第1章最終話 どうやら俺は褒美を授けられるようだ

 俺が目を覚ますといつの間にか自分の部屋に居た。


 この感じ……前も同じようなことあったな。


 たしかその時は、抱きしめられて死にそうになったんだったな。


 ……どうしよう、前みたいに抱きしめられたら俺、今度こそ死んじゃいそうなんだけど。


 俺は自分の体を見ると、ミイラのようにぐるぐると包帯が巻いてあった。


 包帯巻いてくれるのは嬉しいけど、ちょっと巻きすぎではないかな?


 体動かすのめっちゃ大変なんですけど……。


 それにアナにも親にも心配かけたからたくさん怒られるだろうなぁ……。


 まぁそれくらいのことはした自覚はあるし、諦めて怒られてくるか……。


 そう思いベッドから降りて部屋を出ようとするが、思うように歩けない。


 例えるなら、ペンギンの歩き方を真似しているみたい。


 ……ペンギンって歩くの大変だったんだなぁ。


 何ていうことを思ってしまうくらい歩きにくい。


 俺が何とか部屋を出ようとすると、急に扉が開いたのと包帯のせいで思いっ切り転倒。


 それを見て扉を開けた犯人である、アナと何故か知らないけど我が家にいたサーシャが入ってきて俺に抱きついてきた。


 えっ……?


 なんでサーシャがここに居るんだ?


 しかもなんで抱きつかれているんだ?


 俺は少し混乱するが、すぐにわかった。

 

 ……なるほどな。


 これは俺が脳内で勝手に作り出した幻想か。


 うわっ……俺ってアナはいいとしてもサーシャにまで抱きつかれたかったんだな……。


 俺が自分のことを引いていると、アナが話しかけてきた。


「アルト様、随分と遅い起床ですね。早く準備して王城に行きますよ」


「そんなに遅くないだろ……それになんで王城に行かないといけないんだ?」


「1日中眠っていた人がよく言えますね。それに王城に行く理由ですが、この国の反逆者を捕らえたことへの褒美が貰えるらしいですよ」


 その話を聞いてやっとここが自分の作り出した幻想でないと分かり、ホッとする俺だったが。


「アルト!その時に私との婚約も発表されるんだって!やったね、これでちゃんと婚約者になれるね!」


 サーシャは相変わらずかわいいねぇ。


 でもさらっと爆弾を投下してきたね。


 まぁサーシャのテンションも上がってるし、褒美がもらえるって言うなら行ってもいいか。


 そう思ったがその前にやってもらわないといけないことがなったな。


「よし、ならアナよ」


「なんでございましょうか、アルト様」


「……まず、俺の包帯を外してくれない?」


 俺が申し訳なさそうに言うと、アナとサーシャはやっと俺の状態に気づいたのか、大笑いしながら包帯を外してくれた。


 …………うん、めっちゃ恥ずかしい。


 この世界で1番恥ずかしい出来事として俺の脳にインプットされることとなった。


 もう2度と包帯ぐるぐる巻きにされないようにしようと心に決める。


 その間も笑われていた。


 ……もう、消えて無くなりたい………。






♦︎♦︎♦︎






 あの後なんとか包帯を外してもらい、急いで準備をして王城に向かう。


 馬車の中で母さんと父さんに勝手に行ったことについて怒られたが、よくやったと褒められた。


 うん、父さんに褒められるのはちょっと嬉しいだけだが、母さんに褒められるのはめっちゃ嬉しい。


 もうこれは男だったらしょうがないよね。


 イケメンに褒められるより美女に褒められた方がテンションが上がってしまうのは、しょうがないことなんだよ。


 誰にも聞こえないのに弁明していた俺は側からみれば頭がおかしい人だったかもしれない。


 そのことをアナから聞くと、ずっとぶつぶつ言っていて不気味だったって言ってた。


 その時サーシャも馬車にいたので、サーシャの引いた目が俺の心に致命傷となり、胸を押さえて苦しんだ。


 そんなこんなで王城に着いた。


 なにかと王城に来るのは久しぶりだな……。


 そんなことを思っていると、あっという間に国王がいる謁見の間まで来ていた。


 い、いつの間に俺はここに来ていたんだ……?


 さっきまで王城の廊下にあるめっちゃ高そうなものを見ていたはずなんだけど……。


 俺が混乱していると、バラン国王が話し始めた。


「この度は、この国の情報を他国に流し、この余や余の家族を殺そうとした反逆者を捕らえた、アルト・ガーディアンとそのメイドであり、史上最年少で新たな魔法を作ったアナスタシアの両名に、褒美を与えようと思う」


 バラン国王がそう言うと集まっていた貴族たちがざわざわし出した。


 至る所から『あの子供が本当にやったのか?』『騎士にやらせて手柄を横取りしたんじゃないのか』などの懐疑的な声が上がっている。


 まぁそりゃそうか、俺もアナも子供だしな。


 だがそれを国王が制する。


「これは余も確認したが、手柄を横取りなどしていなかった。この余がこう言ってもまだ疑う奴はいるか?」


 そう言うと貴族たちは黙る。


 俺はさっきから目線や陰口がうるさいと思っていたので、バラン国王に制された貴族たちにドヤ顔でもしておく。


 すると何人かの貴族が顔を真っ赤にして怒っていた。


 くふふふ、やばい……!


 悔しがってる顔めっちゃ面白い。


 この後の婚約発表でも同じ顔してやろう。


 俺が新しいおもちゃを見つけていると、バラン国王が口を開く。


「それでは、アルト・ガーディアンとアナスタシアよ。褒美は何がいい?領地でも爵位でもよいぞ」


 えっマジですか?


 ほんとは褒美については決めてたんだけど、俺が爵位をもらった時の貴族の顔が絶対に面白くなるからどうしようかな……。


 俺が迷っているとアナが先に口を開いた。


「では恐れながら私は今回の褒美は、アルト様の望むものにしようと思います」


 俺はそれを聞いて思わずアナを見てしまう。


 どうやら俺だけではなく、他の貴族やバラン国王もギョッとしていた。


「本当にそれでいいのか?爵位ももらえるかもしれないんだぞ?本当にそれでいいのか?」


「はい」


「……ふむ、ならそうしよう。それではアルト・ガーディアンはどうする?」


 バラン国王が俺を見て言う。


 顔は真剣だが、目は俺がどうするのか楽しんでいるな。


 ここは1発びっくりさせてやるか。


「では私は、この王宮にあるあらゆる珍しい金属が欲しいです」


 俺がそう言うと、貴族たちは俺の方を見て『何故爵位にしないんだ?』と思っている顔をしていた。


 ふっふっふっ、この顔が見たかったんだよ。


 俺が笑いを堪えていると、バラン国王が大声で笑い出した。


「ガハハハハハハ!お前は相変わらず面白いな!いいだろう、この王城のあらゆる金属をくれてやろう!」


 いいなぁ……国王は声上げて笑えるなんて。


 ただ、俺の要求が通ったのはよかった。


 これで当分は金属を買わなくて良くなるし、いい金属が手に入るから俺の銃を強化できる。


 俺が喜んでいると、再びバラン国王が口を開く。


「これから余から報告したいことがある」


 俺はこの瞬間にバラン国王の言いたいことがわかった。


 さすがバラン国王、ナイスタイミングだ。


 俺がこっそりサムズアップするとバラン国王もしてきた。


 これは国王もわざとやったんだな。


 俺と一緒で、完全に楽しんでいる。


「それではアルト・ガーディアンよ余の前にくるがいい」


 俺はバラン国王に呼ばれたため、玉座のすぐ近くまで行く。


「よし来たな。これからアルト・ガーディアンの婚約発表を始める!みんな察しはついているだろう?サーシャよ!出てこい!」


 バラン国王がそう言うと、綺麗なドレスを着たサーシャが来た。


 その瞬間に他の貴族の顔が驚愕に染まる。


 フハハハハハハ!これだよこれ!


 みんないい大人のくせして情けない顔して!


 俺とバラン国王は笑うのを必死に堪える。


 その間にサーシャは俺の横に来て、腕を組んできた。


 うわっ!


 笑いが一気に止まってしまい、今度はめちゃくちゃ恥ずかしくなってくる。


「サーシャ、別に腕は組まないでいいんじゃないの?」


 俺が小声で言うと。


「私が組みたいの!いいでしょ?」


 とサーシャに上目遣いで言われたので、勿論OKした。


 あんなに可愛かったら誰だって許してしまうよ。


 バラン国王が声を張り上げる。


「アルト・ガーディアンとサーシャ・フォン・ドラグーンの婚約をここに発表する!」


 貴族たちは先を越されたと悔しそうな顔をしていたのでドヤ顔をしてやったら、殆どの

貴族の顔が怒りに染まっていた。


 俺と国王は堪えきれず笑ってしまう。


 隣を見てみると、サーシャもアナも笑っている。


 これで俺とサーシャの婚約発表が終わりを告げた。




〈第1章 転生編、了〉



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 はいこれで第1章完結です。

 どうだったでしょうか?

 今日の夜に第2章スタートするのでお楽しみに!


読者の皆様へ

 この度近況ノートでも書いたんですけど、目標の★100を達成しました!

 なので連載を続けることが決まりました。

 さらにPVも10,000を超えました!!

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 ではではまた次話で。

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