第9話 落第勇者、元勇者と不審者を探す①

 昼休憩。

 俺は急遽清華を呼び出した。

 場所は彼女と帰還して初めて会った屋上である。


 俺がぼーっと青空の景色を眺めていると、錆びた金属が動く時に発生する不快な音が突如発生。

 まぁ勿論既に誰かも把握済みで、来たのは俺が呼び出した清華だった。

 清華はいきなり呼ばれたことと、俺が詳細を知らせなかったことにぶつくさと文句を言っているが。

 

「それで、急に呼び出したのはどうして? 私これから先生に呼ばれているから行かないといけないのだけれど?」


 来て一発目にいきなり本題に入ろうとする清華。

 少しせっかちすぎないかと思ったのだが、言ったら余計機嫌が悪くなりそうなので止めておく。

 

「それは悪かったな。いやな、俺達のクラスに将吾って奴が居るだろ?」

「ええ、勿論知っているわ。筋トレバカよね」


 良かったな将吾。

 お前特別な呼び名で学年一の美少女に認知されてたぞ。

 少々言葉に棘はあるが。

 

「その筋トレバカがな、今日不審者を見かけたらしいんだ」

「不審者……?」


 それがどうかしたの? と不思議そうに首を傾げる清華だったが、俺の言いたいことを理解して少し顔が険しくなる。


「もしかしてあの暗殺者が所属しているとされる組織の者かしら?」

「俺はそう考えてる。感知もしてみたが、何かに阻害された」

「!?」


 俺がそう言うと、清華は少し驚いたように目を開いた。

 そこまで驚かなくてもと思わないこともない。

 本来感知系のスキルは、確かに人の位置や情報を手に入れることができるが、その分阻害系のスキルや魔道具の影響を最も受けやすいスキルの1つだ。

 実際、異世界では魔王軍の正確な位置はを感知する時は物凄い集中して、尚且様々な阻害系スキルや魔道具の場所をからある程度の場所を特定する、と言う方法を取った。

 今回も同じく阻害系スキルか魔道具を使われているが、そもそもこの世界では阻害されること自体が自らを異能者だと言っているようなものだ。


「普通の人なら絶対に俺の【感知】から逃れることは出来ないし、阻害なんて以ての外だ。だから今回の不審者は異能者が絡んでいると思った」

「なるほど……確かに特殊な異能者でなければ感知系の異能を阻害するのは不可能ね。それに時期が時期だし……分かったわ。今から組織に詳細を説明するから少し待っててちょうだい」


 清華はそう言うと、スマホを取り出して誰かと電話を始める。

 おそらくは龍堂代表だろう。

 何回か受け答えをした後、清華は耳からスマホを離し、此方を振り向く。


「代表には報告したわ。でもまだ確実ではないから放課後になっても居たら私達も動かすらしいわよ」

「放課後までの間は?」

「組織の感知異能者と【千里眼】持ちが見張る予定らしいわよ」

「うーん……なら大丈夫か? まぁ一応俺も度々感知しておくことにするわ」

「お願いね。――それじゃあ私は先生に呼ばれているから急ぐわね」

「おう。よく分からんが頑張れ」


 正直先生に呼ばれるのっていい印象皆無だからな。

 真面目にしている人は別に怖くないんだろうけど、俺はそこまで真面目ではないので呼ばれた時は大抵やらかした時だった。

 

「さて……俺は弁当でも食うかな」


 俺は予め持ってきていた弁当を取り出す。

 毎日母さんか遥が作ってくれていて、味もとても美味い。

 正直異世界だったら一生分のお金を積んでも食べられないほどだ。

 俺はテンションを上げて弁当の蓋を開けた。

 

 一抹の不安を霧散させるように――。


 


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リメイク版を投稿しました。

リメイク版では途中からストーリーが変わっていきます。

ぜひ見てみて下さい。 


『チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力(スキル)を引き継いで現代最強〜』

https://kakuyomu.jp/works/16817330652846607170

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