第2話 落第勇者、S級異能者のチームに入る②

 俺は早足で代表室に向かう。

 後ろからギャーギャーとうるさく清華が何かを叫んでいるが、まぁ多分小言だろうから無視していようと思う。

 俺は部屋の扉の前で立ち止まり、3回ノックする。


「失礼します。龍童代表に呼ばれてきました斎川隼人です」

「ああ、隼人君か。ちょうど優奈君達も来ているから入ってもいいぞ」


 俺はそう言われて部屋に入ると、代表と優奈さんの他に三人の見たことない男がいて、何故か少し敵意を向けてきている。

 だが俺にはその程度なら蚊ほどのものなので、無視して優奈さんの下に駆け寄る。


「あっ、隼人君お久しぶりですね」

「お久しぶりです優奈さん。今回は俺をチームに入れてくれてありがとうございます。必ずお役に立って見せますよ」

「ふふっ――はい、期待していますよ隼人少年っ」


 そう言って可愛く敬礼する優奈さん。

 非常に目の保養になると共に心が落ち着くなぁ……。


 俺がほんわかしながら優奈さんを見ていると、優奈さんが敬礼の格好のままどんどん顔を真っ赤にしていく。

 そしてとうとう耐えけれなくなったのか手で顔を隠しながら言う。


「あ、あの……そんなに見られると流石に恥ずかしいのですが……」

「お構いなく」

「お構いなくっ!?」

「三河隊長、落ち着いて下さい。兎に角我々にこの小僧を紹介してください」


 眼鏡を掛けた男がそう言うと、優奈さんがあっとなにかを思い出した表情になって、俺の方に手を置く。

 さり気ないボディータッチは反則ですよ優奈さん。


「あっそうでしたね。――んんっ! 彼は斎川隼人と言って、年齢は17歳ですが、強い力を持っています」

「ご紹介に預かりました斎川隼人です。現在高校2年生で将来の夢は優奈さんと結婚することです。精一杯頑張るつもりですので宜しくおねがいします。それと―――失礼なのは承知ですが、貴方達よりも俺は圧倒的に強いので、今後の優奈さんの警護は俺がします」

「ちょ――隼人君!?」


 優奈さんが驚いたように声を上げるが、俺は自分の伝えたい事を伝えると礼をして口を紡ぐ。

 自分でも結構失礼なことを言っている自覚はあるが、異世界では舐められたら終わりなのでこういった挨拶が多かった。

 まぁ……勿論反感は買うが。


「はぁあああ? 新入りのくせに何を言っているんだ?」

「俺らを舐めてんのか?」

「我らはこれでも組織随一のチームなのですぞ」


 優奈さんのチームメイトであろう男性三人がキレ気味に迫ってくる。

 しかし俺は一つも嘘を言っていない。

 実際にこいつらの戦闘力は良くてB級最下位くらいだから、俺からすれば余裕で倒せる相手なのだ。


「舐めてなどいませんよ先輩方。ただ俺は事実を告げているまでです。逆に先輩たちが俺を舐めているじゃないですか。子供だからと言って舐められては、将来の優奈さんの恋人で夫としての面子か立たない」

「は、隼人くん……まだ私達は別に恋人でもなんでも……」


 恥ずかしげに言う優奈さんに俺はどんと胸を張る。

 

「大丈夫です。優奈さんは絶対に俺が惚れさせてみせます。その為に優奈さんには生きていてもらわないと困ります。なので異能者の中では優秀なのでしょうが……残念ながらこの人達では役不足です」

「てめぇ……黙っていれば好き勝手言いやがってッッ!! そこまで言うなら俺にお前の強さを証明して見せろ!!」


 ガタイのいい坊主頭の男が俺を指差して戦いを吹っ掛けてきた。

 だがそんな男を優奈さんが止めに入る。


「ま、待って下さい三木谷君!! 彼とは戦ってはいけません!!」

「隊長……安心してください。たかが強い異能を持っただけのひよっこに現実を分からせてやるだけです。これで突っ走って死なれては此方が困ります」

「い、いえそうではなく―――」

「―――いいですよ、ヤりましょうか。その代わり三人まとめてかかってきて下さいね?」


 俺は優奈さんの言葉を遮って宣言する。

 このまま言葉責めで論破しても良かったのだが、いい加減イライラが溜まっていた所に、コイツラが俺の地雷を思いっきり踏み抜いてきやがったから絶対に許さない。

 何が何でも絶対にボコボコにしてやる。

 偶にはこう言った力に任せるのも大事だと、昔師匠から教わっているしな。


「で、何処でやるのですか? 別にここでやっても良いですけど……」


 俺はそう言いながらチラッと代表を見ると、思いっきり首を横に振られた。

 まぁ代表は俺の強さを知っているのでそうなるのもしょうが無いと思うが。


「……なら訓練場でやろう。あそこなら広いし俺達でも貸し切りにすることが出来る」

「分かりました」

「……隼人くん……手加減はしてあげてね?」


 訓練場へと向かう彼らを見ながら心配そうにしている優奈さんに、俺は勿論と頷く。

 ただ……


「――俺に『強い異能を持っただけのひよっこ』とか言った奴だけは他の二人よりも手加減しません」


 その言葉は俺の人生を全否定されているようで大嫌いだからな。




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『元勇者の俺は、クラス転移された先で問答無用に殺されかけたので、魔王の部下になることにした』

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