第8話 新一4

あれから1ヶ月が経った。

雪子ともまだ予定が合わず、食事にも行けていない。

靖子はまだ、新一に告白をなしにされたことを大きく引きずっていた。それだけ一目惚れして、そのまま恋が成就した喜びは大きかったのだろう。

今では、たまにすれ違った時に、会釈される程度であった。


いつも通り仕事をし、昼休みになった。最近ハマっている定食屋の鯖の味噌煮を食べて会社に戻ると上司の会話が聞こえてきた。

「おい、聞いたか?3階の新一くん、結婚するらしいよ。何でも付き合ってすぐの電撃らしいね。」

「聞いたよ。びっくりした。まあ、あの子モテそうだからな。結婚するのも時間の問題だと思っていたけどこんなにいきなりだとはね。」


「え、、、、」

靖子は目が回るのを覚えた。

立っているのか座っているのかさえよくわからない。

正直、あの告白取り消しはいっときの迷いで、また、楽しくデートに行けると心の隅で思っていた靖子の思いは打ち砕かれた。


少し、時間を置いた後、真実を確かめるため、他の同僚に聞いてみた。

すると、

「私も最近知ったのよ。少し残念ね。結構イケメンだったのに。」

「さっき上司から聞いたよ。あんたも早く結婚すればだって。私の勝手よね、あのバカ上司。」

とあの会話はどうやら本当のようだ。

しかし、誰に聞いても結婚の相手は知ることができなかった。どうやら職場の人ではないらしい。


こうなったら、新一に直接聞くしかない。

靖子は勤務時間が終わると、新一のフロアに直行した。色々な人に変な目で見られたが、もうなりふり構ってられない。

新一のデスクに行き、

「ごめんちょっとこの案件のことで聞きたいことがあるから、ちょっと時間空いてたりしない?」

と笑顔で誘った。

しかし、目は新一を鋭く睨み離さなかった。

新一は何かを察し、怯えた様子で、

「大丈夫だよ。これあんまり聞かれちゃダメなやつだよね?ちょっと外で話そうか。」

と会社から出て行った。


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