E p i s o d e .8【ゾンビの軍隊】
「くっそ! まさかあんな大量なゾンビが現れるなんて……つくづく俺の運が気になってしまう」
青年は必死で馬を走らせるが、馬にも体力の限界があるというものだ。
それに普段乗らない馬を使うなど、上手くいくわけが無い。
「エーラ様。どうかご無事で……」
◇◆◇
「異臭が凄いなここは……ごほごほ……」
エーラはポケットに入っている布切れを口に当てて匂いを少しでも防ぐ。
ゾンビとの戦闘は長引けば長引くほど、
そのため、短期決戦が必要不可欠だ。
「見える限りでは数百、いや万はいそうだ……なんだあれは!」
「この俺をコケにしやがって……許さぬ、許さぞ!! あのクソ女とあの男だけは、絶対に喰いちぎって内臓までバラバラにしてやるよ!!」
「喋っているだと……死体が喋るなど前代未聞だぞ」
おぞましい声と共に魔力が籠った咆哮がエーラの意識を奪い、ゾンビたちのやる気を底上げさせる。
エーラは頭を押さえ始め、片膝をつく。
「はぁ……はぁ……魔力を上手く身体に巡らせることが出来ない。で、でも……この杖だけは絶対に奪われてはいけない」
「うぅん? 何かいるな。人間じゃねぇか! 一つ腹が減っていてな。お菓子程度で食べても、あの
「体よ動け……《
杖を突き出し、青い宝玉の力を借りて聖属性の魔法――《
だが、体長10メートルを超えるゾンビには軽く弾かれる。
「これを使えるということは、教会の人間か……それにその杖は
「これはお父さんからの最後のプレゼントだ! 貴様などの臭いだけの奴に奪われたりするものか!」
「活きがいいなこいつは……そうだ一つ協力関係を築こうではないか! 俺の言う奴をここへ連れて来い! そうしたら王国への蹂躙はよしておこう」
「ゾンビなどに力を貸すなど、我がエーラ家にとって汚点だ! 聖なる光よ。我が神よ。この私に聖なる力と神の
刹那、天から降り注ぐ聖光がエーラを包み込み、十字架の紋章を瞳に浮かばせる。
エーラは杖を突き出すと、十字架の紋章が大きく成長していき、光り輝く神々しさを青い宝玉から放つ。
爆音と共に大地は光に包まれ、空気を割き、ゾンビたちの体に十字架の紋章を刻ませて浄化していく。
「聖属性最上級魔法のこれで殺れなければ、あとが無い……頼む……」
「さすが最上級魔法だ……数秒革が見えたぜ……」
「う、うそ……なんで……」
小物ゾンビたちは爆風に巻き込まれ浄化してしまったが、大物だけは何とか生き残った。
腐った体からは焦げるような匂いがし、皮膚は黒く焦げている。
「そんじゃあ……今度はこっちからだ!」
◇◆◇
青年は数十分の馬術を使いこなし、無事に王国の門へ辿り着く。
息は荒く、大量の汗を流しながら何とか馬を下り、門の警護にあたっている兵士へと近寄る。
「おい大丈夫か!?」
「俺は何とか大丈夫だ……それよりあの森からゾンビの、集団が現れやがった……今エーラ様が足止めをしてくれている……」
「エーラ様がだと! たったお一人で立ち向かうなど! おい新兵! 今すぐ王城へと出向き、このことの報告と出撃命令を貰ってこい!」
「了解であります!」
「お前は俺の家でゆっくりと休んでいろ」
「助かります……」
先輩兵士は青年に肩を貸し、門内の近くの家へ避難する。
「隊長!」
「なんだそんなに慌てて」
「エーラ様がゾンビの大軍と対戦中とのことです! 今すぐ王国兵士を集めて、エーラ様の助力を致しましょう!」
「エーラがだと!? あのバカ……魔法師がたった一人で行くなど策略を間違えておる。分かった。私が勇者様に話を通しておこう。今すぐ兵士達を集めてこい!」
「了解であります!」
王国騎士団隊長アルバンは下っ端の報告を受けて、勇者が住む王城へと足を運ぶ。
◇◆◇
「全く……お前はいつまで寝ているんだ?」
「おはようノアくん……」
「海凪。昨日話した学院対抗戦について教えてくれる、そう約束だろ?」
「そうだっけ?」
使えん奴だ。俺の戦意が削がれたらどうしてくれるんだ。
それより、さっきから外が騒がしいな。
「ノアくん。外うるさいよ?」
「何かあったのかもしれないな。おいアリシエス。これは一体……」
刹那、王城に存在する鐘が王国全体に鳴り響く。
ゴーンゴーンと音、それに金属鎧を着た兵士、ローブを纏う魔法師たちが外に大軍を作り始める。
「面倒なことに巻き込まれそうだな……」
「何か言った、ノアくん?」
「いや何も」
俺は席から外を眺めると、勇者を先頭に王国兵士が全戦力を用いている。
勇者も出ることなどあまり無いが、確実にヤバい奴が出ているんだろうな。
そう俺は軽率に考えていると再び、ゴーンゴーンと鐘が鳴る。
『王国外にゾンビの大軍を発見! 一般市民の方は絶対に家から出ず、身を潜めていてください! 王国兵士の皆さんは、怪我をしたら必ず回復師たちの指示をよく聞き、治療を受けてください!』
「国内放送か……ゾンビも今更ここを狙うとは……」
いや違うな。
「ノアくん。ゾンビってあいつの事だよね?」
「それが今一番の情報源だろうな。まあ勇者がいれば、戦えない俺は何もせずに入れそうだな」
と、俺はあの勇者期待を寄せつつ、授業へ戻る。
――――――――――――――――――――
読んで頂き、有難うございます!
初、ノア以外の視点で見ていきました!
新しく登場した
応援してる! どうなる!?
などと思ってくださいましたら、★評価とフォローお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます