E p i s o d e .4【白銀の暗殺者】
一時間目の魔法基礎の授業は終わり、地獄へ落ちたかのように、灰のようになっている担任アリシエスのやる気喪失で、それ以降の授業がなくなる。
教室の隅っこで椅子に体をあずけている担任アリシエスは、男生徒にとても小さな
そして俺は徐々に騒がしくなると予想されるこのクラスを離れようとしているが、海凪がそうはさせてくれない。
なぜなら、海凪は俺の上に座っているからだ。
「どうして俺の上に座っているんだ?」
「私から逃げないようにしているだけだよ」
「お前は俺の何なんだ?」
「何なんでしょうか。それはノアくんの心にあると思うよ」
少し頬を染めて俺の目を見ている。
とても愛らしい眼差しで見ているつもりのようだが、そんなことを経験をした時の無い俺からしては、どんな感情かは分からない。
「そうだ。先生もあんなんだし、いっそ遊びに行っちゃおうか」
「暇だしな。それは賛成だ」
◇◆◇
俺たちは街外れたスラム街へと足を運んでいた。そう、勝手に。きっとそうだ。迷うはずが無いのになぜ。
「ノアくん。どうしてこうなったのかな?」
「俺に聞かれても分からん。俺は海凪について行った結果こうなったんだ」
「だよね……」
辺りを見渡してみるが、こういった手がかりが見つからない。故に海凪が何かを企んでいる確率は少ないだろう。いや、見つからないだけかもしれない。
俺はスラム街の建物の壁を指で拭き取るように触る。
「
「スラム街ですもんね。国はここまでお金が回らないのでしょうね」
刹那、前の方から金属同士がぶつかる音が響いてくる。
「この音は?」
「金属同士のぶつかり合いみたいだな。喧嘩でもしているんじゃないか?」
ここにいてもスラム街を抜けれる可能性は低い。覗くだけ覗くか。
俺は海凪に向かってアイコンタクトで『行くぞ』と送ると、首を縦に振る。
「絶対静かに行けよ」
「私を何だと思っているの?」
「歩く超人」
「何それ? ウケる。ふふ」
そんな会話をしながら音を立てずに歩いていくと、ようやく音の主がいる場所へと辿り着く。
家陰からそっと顔を出すと白銀色の短めツインテールの少女が忍者のように壁を走り、小さなナイフを中心にいるフードを被る者に向かって投げつけている。
「すごいの見ている気がするよ、ノアくん」
「黙って見ていろ」
「あ、ごめん」
度重なるナイフと剣のぶつかり合う音はきっと、スラム街全体に聞こえているはずだ。なにせ普通の金属では無いからな、あの剣は。
あの少女は勝てない勝負になぜ挑んでいるのか、多少なりの興味があるが、下着が取られただの、寝ているところを襲われたのかは知らなんが、きっと理由があるのだろう。
「ノアくん。なんで無言で戦っているのかな?」
「意識を集中させているんじゃないか?」
「ああ、そういう事か。でも魔法系統を使っている気配はないよね?」
「そんな事は俺に感知できない。魔法は不得意だからな」
「ノアくんも苦手なことはあるんだね。なんか安心したよ」
「何も知らないくせに知ったかぶりか? 魔力総量は普通より多いが、魔法適性は
この世に完璧人間なんか存在するわけない。魔族とかの人外生命ならあるかもしれないが、純粋な人間に完璧は存在しない。いや、してはならないの方が近いだろうか。
「一歩、二歩、三歩……飛んでくるな」
「え? どういうこ……と……」
刹那、弾き飛ばされたナイフは海凪の顔前を通り過ぎ、壁に突き刺さる。
なにが起こったのか理解出来ていない海凪は、俺の後ろへ隠れる。
「何しているんだ?」
「なんかさっき、ビュンって、ビュンって!」
「多分奴の魔力感知に海凪の魔力が引っかかったんだ。それじゃなきゃ、ずっと地面に落ちていたナイフが飛んでくるわけない。しかもこんな綺麗に」
フードを被る者が突然剣を手放し、両手首を合わせ、
「聖なる光よ。我が道をたどれ。《
聖属性を纏う神々しい具現化槍は記された道の通り、少女の走る経路を塞いでいく。
すると一本の《
少女も対抗するように同じ魔法を放つが、疲労のせいか、上手く的を射抜けない。
「上手くいったようだ。ほら出てこい
フードを被る者が腕を天に向かい広げると、何も無い地面からゾンビが十体ほど姿を現す。
「死霊使いか」
「ノアくん。腐った匂い、私キツいかも……」
「ほらこい」
俺は海凪の腕を取り、顔を体に埋める。
徐々に耳まで真っ赤にしていく海凪は、やはり乙女のようだ。
「ちょっとノアくん!」
「いくら声が小さくなろうが、あいつは耳がいい。あまり喋るな」
「そんな事言われても……くんくん……ノアくんの匂い……落ち着く……」
「そんなに好きならいつでも嗅がしてやるから、今は黙っていろ」
「……うん」
海凪は俺の腰に腕を回す。
大人しくなった海凪を抱え、俺は奴の背後を取る。
「なあ、あんた」
「君は……ああ。そこにいた女の子の連れの方だね。今から楽しいことをするから、男の君ならさぞかし楽しいショーになるだろうね。レッツパーティー!」
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