E p i s o d e .2【帰り道】

 中央王国街を歩く一般人、馬車を引き商売をしている者など幅広い世代が歩く。

 王国のど真ん中には象徴とも言える、とても大きな噴水が設置されている。

 そして俺の隣には、


「ノアくん。今日はどこへ行こうか?」


「今日初めて会ったばっかりだが?」


「あそこのレストランとかどうかな?」


 話を聞いていないな、海凪は。

 周りからは多少、カップルだと思われているみたいだが、それだけで済んでいるだけマシだ。


「日本人は和食が好きだと聞くが、和食とは何だ?」


「割と最近は洋食が好きみたいだよ、若者は。和食ってね、例えば……納豆とか?」


「あのネバネバしている豆のことか。他にはどんなものがあるんだ?」


「他にはね……お寿司とか、天ぷらとか、唐揚げとかかな」


 唐揚げか……あれは初めて食べた時とても美味かった記憶があるな。お供にシャンパンは最高だった。


「海凪。金はあるか?」


「待ってね今確認する……えっと、金貨50枚程度かな」


 金貨50枚も持っている学生は珍しい。

 大抵は冒険者ギルドの収入だろうが、俺は冒険者にこれっぽっちも興味がないしな。金はどうやって集めればいいか……。


「あ! ノアくん! あの和食レストランとかどうかな!?」


「そうだな。海凪の食べたい物に合わせる」


「やった! じゃあ行こうか!」


 俺の手首を掴み、早く早くなどと声を漏らしながら、いかにも高そうなレストランの扉を開ける。

 中は四角の木テーブルにそれぞれ椅子が四つ、の組み合わせが数十個配置されており、既に半数ほどが他の客で埋まっている。

 エアブレードが天井を回り、当たらない位置に提灯のような明かりが吊るされている。


「わぁー! 綺麗だよ、ノアくん!」


「綺麗さより金の心配をしたらどうだ?」


「さすがに金貨50枚もあるから大丈夫だとは思うけど、ノアくんと一緒に食べれるならいいかな」


「そうか。ならあの席とかどうだ?」


「窓側の席だね。もしかしてノアくんって窓側派?」


「そんなことはないと思うが……それより早く座らないと気が散りそうだ」


「そうだね」


 俺と海凪は一番端で窓側の席に座る。もちろん一番窓に近い椅子に座るのは俺、そして対面するようにではなく、何故か隣に座る。

 海凪はメニュー表を取り広げると、そこには聞いた時の無いメニューが数個書かれている。


「凄いねこれは……」


「海凪。うな重とは何だ?」


「うな重はね、うなぎを使った食べ物だね」


「うなぎって何だ?」


「ニュルニュルして掴みずらい奴だよ」


 ニュルニュルという事はに近い感じか。確かにあれは掴みずらい。それにあれは食えるのか?

 俺はさっとメニュー表に目を通したが、特に気に入ったものはなく、何でもいいと思ってしまう。


「すいません。この刺身定食を一つととんかつ定食一つお願いします」


「はいよ」


「海凪は二つ食えるのか?」


「ノアくん。迷っていたそうだし、ずっと待たせるのも悪いかなって思って注文しちゃった」


「作る側の気持ちも考えられるんだな。助かった」


「うんうん。気にしないで。じゃあ届くまで何かお話でもしようか」


 あれこれ数十分ほど会話をしていると暖簾のれんの奥側からお盆のようなものに乗せ、俺達の方へ歩み寄る。


「これがとんかつ定食です。こちらが刺身定食です。何かあればスタッフをお呼びください」


「食べようか、ノアくん」


「そうだな」


 俺は慣れない箸の持ち方を改めて学び直し、五分ほどで食べ終わる。

 先に言ってていいよ、と言われた俺は扉の横で待つ。


「お待たせ」


「今日はありがとうな。奢って貰って」


「入学式ほど楽しい学院生活の始まりはないよ。じゃあ私はこれから、用事があるからここでまたね!」


「あぁ。また明日」


 俺は両手をポケットに入れたまま、海凪が見えなくなるまで待ち続ける。


「さて。オレも帰るか……」


――――――――――――――――――――

 読んで頂き、有難うございます!


 海凪太っ腹!  馴れ馴れしい!

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