E p i s o d e .1【入学】

「ここが新世界新学院か……」


 数十年前に王国が立ち上げた学院。

 この人間世界には『転生者・転移者』と呼ばれる者が多数存在する。

 人外から人間を守るために王国魔法士たちが勇者召喚を目的としての召喚、死んだ人々を神が拾い上げ新たな命と共に異世界へ転生など、幅広い異世界人が集まる場所がここ、王立異世界学院【テンセイ】。


「どこを見ても黒髪だらけだな。異世界人という者は皆こうなのか?」


「そこの白髪君、新入生だよね?」


 俺は後ろを振り返る。

 長い茶髪に茶色瞳、そして真っ黒なスーツに身を包む女性だ。


「誰だ?」


「さすがにここで名前をバラすのは恥ずかしいかな」


「そうか……なら俺はもう行く。名も無き生命に用はない」


「あっ、ちょっと待ってよ!」


 俺は体育館と言われる所へ向かう。


◇◆◇


「これより第三十回生、王立異世界学院【テンセイ】の入学式を始める!」


 周りはとても静かだ。

 俺は一年四組の列に並んでいるが、どう見ても黒髪では無い。青に赤、それに金髪などたくさんの種類が集まっている。


「さて異世界人の諸君には、これから学院長のながーいながーい地味にどうでもいいお話を聞いてもらいます」


 確かにあの話は、ためにならないのはよく分かる。


「では学院長お願いします」


「ちょっと紹介に気に食わないですが、まあいいですか……改めて学院長のハリ……」


「ちょっと待ってください、学院長」


 なんでいきなり、手を挙げたんだ。真後ろにいる俺に当たるところだったぞ。


「どうしたのかね? 北宮きたみやくん」


 北宮、か。異様に長い金髪から花の匂いがすると思ったら、どこかで嗅いだ時のある匂いを思い出す。確かあれは……。


「学院長の話は五分と言って三倍近く話すのでやめてもらいたいです」


 北宮とかと言う奴、禁忌の言葉言ったな。

 まさか本当に言う奴がいるとはな。大したものだ。俺には絶対出来ない。


「あ、あの……」


「そうだぞ。話とか要らない!」


「さっさと教室を案内しろぉお」


 普通こんな状況になるか?

 学院長が責められるってなんか、面白いな。いや、面白くないな。


「皆、出ていったな。自由過ぎる……」


◇◆◇


 広い木の板で作られたここ、一年四組の教室。

 黒板に向かって対面するように並べられた机と椅子。一段、二段、三段、四段と階段上に並んでおり、一机ひとつくえには二人に座っているが、いかにも四人ほどは座れそうだ。一クラス24人程度だ。


「俺ってハブられてるのか?」


 俺が座る席は窓側の一番後ろの端。いわゆるイケメンが座るところだ。

 自分自身がイケメンだとは思ったことは無いが、何故か地元では『綺麗な白髪だね』とか『綺麗な碧眼だね』だの、遺伝的なところを好かれている。

 これって遺伝に好いているだけじゃね?


「隣、いいかな?」


「名前は?」


「入学式の時、君の前に立っていた北宮きたみや海凪みなぎ。海凪って読んで」


 後ろから見ていて綺麗だとは思っていたが、前から見るとより綺麗に見えるな。特に金瞳が。


「君の名前を教えてくれるかな?」


「俺はノア・ガヴリエル」


「だから髪が白いって言っちゃ悪いけど、白髪なんだね」


白髪しらがって言いたいんだろ? 特に気にしてはない。白髪はくはつでよい」


「言い方は気にするんだね……」


 担任からは自由に座っていいと言われたが、時過ぎないか?

 俺以外の男たちが前二段に座り、三段目からは女たちが座っているとか。俺の場違い感半端じゃないな。


「ノアくんは転生者? それとも転移者?」


「俺は転移者だ。ア〇リカ、からのな」


「へぇー、ア〇リカの人か……休日は何して過ごすのかな?」


 随分と馴れ馴れしいな。別に教えるのは構わないが、男たちの視線が痛い。


「休日は野原で寝る。家のベッドで寝るぐらいだ」


「それ寝てしかないけど大丈夫?」


「気にするな。寝る子は育つとよく言うだろ」


「それはそうだけど……それは適切な時間に寝て決められた睡眠時間を確保することを言うんだよ……」


「そろそろ来るみたいだな、担任が」


「じゃあ、次の休み時間にお話しましょ」


 俺はこくりと頷き、返事を返す。

 扉の向こう側から黒髪の担任が入り、教壇が置かれているところへ立つと、バンと音を立ててノートを置く。


「これから一年間担任となりました、アリシエスと申します。転生者とかの分類ではなく、原住民ですが、どうぞよろしくお願いしますね」


 ちゃんとした担任みたいで助かるな。


「では早速自己紹介の方へ回らせてください。最初にそこの君から」


「お、俺ですか!? マジかよぉ……俺は野乃ののすぐる。優って読んでくれ!」


 パチパチと拍手の音が聞こえる。

 優は茶髪に赤い瞳のようだな。覚えやすくて助かる。ガタイもいいが、何か武術でもやっているのか?


「では後ろの子……」


 自己紹介は続いていき、俺は海凪みなぎの後に自己紹介をすることになった。実質一番最後だ。

 そして俺の番が回ってくる。


「では最後にそこの君」


「ノア・ガヴリエル。うんっと……趣味とかは寝ること。特技は人〇ゲームです」


「人〇ゲームが何か分かりませんが、楽しそうですね」


「まあ、それなりには……」


「じゃあノアさん座っていいですよ。次はこの紙をお渡ししますね」


 担任アリシエスは持ってきたプリントを渡す。


「今日はこれで終わりですが、明日からは授業がありますのでノートは……要りませんよね。皆さんは魔法文字が書けますもんね」


 魔法文字――魔力を媒介とした文字。そう、とてもシンプルな文字だ。日本語や外国語などをペンを用いずに空中や地面と至る所に自由に書くことが出来る、古代人が発見しただ。

 これは正直、魔法を遣う上で必要だからな。転生者などは使えて当然か。


「では皆さん今日はこれで終わりです。気をつけて帰ってくださいね。さようなら!」


「「「さようなら!」」」


 こいつらは本当に高校生か? 精神年齢は幼稚園レベルだろ。

 すると皆は一斉に窓を開け、『飛行魔法』で飛んでいく。

 俺はそんな器用なことは出来ないから、海凪でも誘って帰るか。


「なあ海凪。一緒に帰らないか?」


「本当!? 私からも声かけようとしていたけど、ノアくんの方が早かったね! じゃあ帰ろうか!」


 俺は初めて女と、しかも二人で帰ることになった。


――――――――――――――――――――

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