第25話 別れるのはこっち?
呆れたように、大きなため息を着く。
「だったらどうなの?あなたに関係ないでしょう?外で済ませて来いって言ったのあなたよね?言うとおりにしたのにどうして迷惑をかけるのよ?」
「お前なんか、騙されてるんだ!あんな若いいい男がお前なんかに・・・。」
「だから!あなたに関係ない!!騙されてようがつきあってようが好きだろうがあなたに関わりないことでしょ!?いい加減にしてくれない?」
「自分の嫁がよその男に騙されているなんて外聞の悪いことはないだろうが。今すぐ別れろ!仕事も辞めろ!お前なんか大人しく家に籠もって家事と育児だけやってりゃいいんだよ。」
妻と視線も合わせずにそんな事を言う幸人は、高圧的なくせに、どこか卑屈に見えた。
「どこまで最低なこと言うんだろうね、あなたは。わたしはあなたの奴隷じゃないの。母親でもないし家政婦でもベビーシッターでもない。うすうす感じてたけど、わたしのことそんな風に思ってたのね。」
どれだけ自分のことを軽んじているんだろう。きっと幸せにするから、と言ってプロポーズしてきたあの日の幸人は、きっと幻影だったに違いない。
こんな生活に、こんな夫に、幸せは見出だせない。
「家事と育児が、嫁の役目だろうが。」
「じゃああなたは家事も育児もしなくていいの?それは夫の役目ではないの?父親の役目ではないの?妻の仕事を理解するのも夫の役目じゃないの?」
「俺はちゃんとお前たちを養ってる。それで充分だろうが。」
そう思っているのは幸人だけだと、何故気付かないのだろうか。
養われるだけでいいという妻がいるのも事実だろうが、少なくとも梨央は違う。愛されもしない、外に出る自由もない、他の誰かを愛することでも出来ない。生きがいを他に見出だせない人生なんて、真っ平御免だ。
「・・・もう、いいわ。話し合っても無駄ね。」
話を切り上げようと梨央が立ち上がる。
「あの男と別れるんだろうな!?」
「だから、つきあってないって言ってるのに・・・。心底、呆れた。もう離婚でいいわ。あなたとこれから先一緒に行きていく自信はない。無理。丈晴と一緒に家を出る準備する。」
「梨央!!いい加減にしろ。そんなの、俺は許さないからな!!」
声高に言っているけれど、幸人は一向に梨央の方を見なかった。それだけでわかる。後ろめたい何かがあるからだ。
「あなたに許してもらう必要もありません。」
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