第24話 庇うから
「ちょっと、何してるの!?」
他に誰もいなかった通りに、悲鳴のような叫び声が響いた。
「梨央・・・」
「梨央さん。」
いつも二階の窓から真北がバス停まで歩いていくのを見送っていたので、梨央は幸人がいたことにすぐ気が付き、慌てて家を出てきたのだ。
「真北さんに何してるの!?迷惑をかけるのはやめてよね!!」
はあはあと息を上げながらも、モデルの前へ出て庇う梨央。その目は釣り上がって夫である幸人を睨みつけた。
真北は、そんな彼女を気遣うようにそっと両手で彼女の肩を押さえる。
「何もされてないよ、大丈夫です。」
優しく言ってにっこりと微笑む。
そんな妻と間男の姿を見せられたら、夫の幸人は居たたまれない。みるみるその眉がつり上がり、険しく寄った。夫の目の前で、他の男を庇う妻の姿など、平気で見ていられるはずがない。
「そんな優男を庇うのか!それで付き合ってないというのかよ!この浮気者が、嘘ばっかりつきやがって。」
「はあ!?付き合ってないって言ってるじゃないの!そもそもそんなこと無理なんだから!!」
「何が無理だ!!今だってそうやって庇ってるんだろ!そいつのことが好きなんだろうが!!裏切り者!尻軽女!!」
「ほらほら、二人共落ち着いて下さい。梨央さん、ご主人も。」
夫婦喧嘩の間に入ってきた真北が、困ったようにそう言って、ようやく二人は引き下がった。
その時、真北がいつも乗るバスが路地をやってくる。バスの方をちらりと見てから、真北は軽く息をついて二人の方をもう一度見た。
「ちゃんと話し合うのに、もしかして第三者が必要ですかね?」
「こんにちは。丈晴くん。お父さんとお母さんがお話してる間、俺と遊ぼうか。」
キラキラしい若いイケメンに突然そう言われ、最初は少し躊躇していた丈晴も、促されると段々と打ち解けていく。
結局三人で幼稚園に息子を迎えに行って、室内遊具の有るショッピングセンターへ向かった。初対面の若い男に少しだけはにかんでいた息子も、母親が大丈夫だと言うからかやがて慣れて一緒に過ごしてくれていた。勿論、梨央の目の届く範囲で、遊ばせてくれている。
真北は子供の扱いもよくわかっているようで、無理強いはしないし、つかず離れず適度な距離を保ちながら、幼児の遊びを見守ってくれていた。
遊具の有る広場はそれなりに広く、その広場が見渡せる位置に親が休憩する席が設けられている。その場所に座り、幸人と梨央は対峙した。
「・・・あの男が好きなのか。」
先にそう言ったのは幸人だ。声には悔しさが滲んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます