突風

土曜日の朝、リクが目を覚ますと、外はまるで嵐のように、突風と雨が激しく地を打ち付けていた。


リクは飛び起きた。

真っ先に、雨風に打たれる桜の木と少女、そして否応なしに飛ばされていく、桜の花が頭に浮かんだ。



2階から見える庭の木は、どの木もまるでゴムで出来ているかの如く、突風に吹かれて弧を描いていた。

中には折れた枝もある。


「ぅ・・・っそだろ・・・」



リクの心臓が、ドクンと震えた。冷や汗が出そうなほど、背筋に悪寒が走った。




リクは急いで着替えると、母親が止める中、傘を引っつかんで外に飛び出した。



しかし、外に出れば傘など無意味であったし、その雨風の強さに一瞬絶望した。


「くっそ・・!」



リクは庭に傘を投げ捨て、通学路を走った。

雨風は、容赦なくリクを狙った。




・・・早く、もっと早く!と、自分を急かす。

雨も風も体中にぶつかってきて、もう身の着飾りも髪の毛も、どうでもよかった。




『それにしても岡村さん、ものすごい雨風ですね・・・岡村さん、聞こえますでしょうかー?』

『はい!こちら、川原町は今、道行く人の、影すらありません!

僕も、今やっと、ここに立っているという、そんな状態です!』



リクの住む川原町の、多くの家のテレビから、そんなニュースが伝えられていた。



『いやー、せっかく桜もキレイで、"土曜日は花見でも"なんて方も多くいらっしゃったのではないでしょうかねぇ。

・・・岡村さん、川原町も、桜が沢山咲いていたと思うのですが・・・

今、どこか周りに見て取れる木は、ありますか?』



『いやー、私のいる所からは、ちょっと確認できません。

でも、お店の旗や、道路脇の花壇なんかは、道に飛ばされて来ていますー・・・』



(まじ・・・頼む・・・・・・!)


無事でいてくれれば、それでいいのだ。

今度は雨風の中、また踊りでも楽しく踊っていてくれればー・・・




リクは飛ぶようにして、学校が見える角を曲がった。

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