救出

「あ── 見失った!」

 恵は、爆発に気を取られて目標の車を見失ってしまった。

「マズい── 居場所の特定が出来れ── あ、そうだ」

 恵は何かを思い出したかのように、スマホを取り出す。

「瑛美のスマホの充電が生きていれば──」

 恵は、そう思いながら位置共有アプリを開き瑛美の居場所を探る。

「えっと── 瑛美のアイコンは──」

 犯人グループは、車で逃走しておりカーチェイスまで起こしている。だとすれば東京を出る国道や高速は検問が張られている。例え検問が張られていなかったとしても、道路上に設置されているオービスや「Nシステム」と呼ばれるカメラが設置されており、映ればすぐに足がつくはずだ。そう考えた恵は、東京を中心に瑛美のアイコンが表示されていないか探す。

 すると──

「あった!」

 港の近くに、瑛美のアイコンが表示されていた。

 そして、恵はすぐにアイコンが表示されている場所に向かった。



「お前、弁護士に相談したよな?」

 暗い倉庫の中でペストマスクを被った大型の男が、縛られた状態で瑛美を見下ろして言う。

「そんなん当たり前じゃん! ネットでこう言うのは弁護士に相談するのが1番だって書いてあったし──」

「でもよ── 借りたものはきっちりと返す。これが道理だよな? それともなんだ? 帳消しに出来るとでも思ったのか?」

 すると男は、瑛美の腹を蹴った。

「俺たちはそんな甘くはねえんだよ!」

 男が、そう怒鳴ると来ていたジャンパーのポケットからカプセル錠を取り出す。

「これでお前を眠らせて、ベーリング海のカニ漁船にでも乗せてやるよ」

「──そこまでよ!」

 女の声が聞こえた。男は、その声に気づき振り向き懐中電灯を当てる。

 そこには、男に向けて杖を向ける恵の姿があった。

「──おいおい、今どきの武器に魔法で対抗か?」

 男は、杖を向ける恵を鼻で笑いながら言った。

「こっちには、1秒間に15発は撃てる機関銃があるんだよ」

 そう言って男は、機関銃を取り出す。

「──死ね!」

 男はそう言って、恵に向けて煙で見えなくなるほどに乱射する。

 すると、弾が切れたのか男はマガジンを取り外した。その時、煙も少し晴れてきた。

「──恵!?」

 薄くなった煙の先には、バリアを形成した恵みの姿があった。

「クッソ── 生きてやがったか!」

 男はそう言うと、リロードを終え再び銃口を恵に向けた。

「瑛美、目を瞑って!」

「え!?」

 恵は笑みにそう言うと、瑛美は目を瞑った。

 すると、恵の杖の先が一種だけ強く光った。恵と瑛美は目を瞑り、男はその場で動かず立ち尽くしていた。

 やがて、光が消えると男の目からは涙が出てきた。

「あ── クッソ目が──」

 そのうちに恵は瑛美を抱えて箒にまたがる。

「恵、今のは?」

「閃光手榴弾と同じような効果を持つ魔法よ」

 そう言うと、恵は箒を浮上させ窓を突き破り2人は倉庫から脱出した。

 ある程度、上昇すると複数台のパトカーが赤色灯を回しサイレンを鳴らして倉庫に向かって走っているのが見えた。

「──これは大きな組織が関わってる可能性があるわね」

 恵はそう呟いた。

「え、それってどう言うこと恵?」

 その呟きが耳に入った瑛美が恵に聞いた。

「男が持っていた銃は、密輸したとしても手に入らないような軍用フルオート銃── つまり、引く金を引けば全自動で弾が尽きるまで連射できるタイプの物と思われるわ。アメリカとかの市場で出回ってる民生用の銃は、セミオートまでしか連射機能がないから、軍用銃を日本に持ち込める程の巨大な犯罪シンジケートのようなものが今回の闇金に関わっている可能性があるのよ──」

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