拉致
「──あ ──暑い」
「この時期に── これほどの猛暑は初めてですわ──」
週明けの月曜日、学校帰りのフリンと優香は季節外れの悪魔的な暑さの中を歩いていた。
すると、フリンの目にある人物が止まった。
「──瑛美さん」
そこには、土曜日に恵の事務所に来ていた瑛美の姿があった。
「お知り合いですの?」
優香の問いに、フリンは静かに頷く。
そしてフリンが瑛美に声をかけようとしたその時、黒い車が瑛美の前に止まりペストマスクを被った黒づくめの2人組の男が降りて来た。
そして──
「ちょっ、何すんの!? マジありえないんだけど!」
「うるせえ、さっさと乗れ!」
2人組の1人がそう言うと、瑛美を無理やり車に乗せて走り去った。
「誘拐ですわ!」
優香がそう言って、スマホを取り出し警察に通報する。
「はい、こちら110番。通信司令センターです。事故ですか? 事件ですか?」
「目の前で人が誘拐されましたの!」
「事件ですね、当時の状況などは分かりますか?」
慌てる優香に、電話先の職員は淡々と対応する。
「変な被り物をした男二人組が、女の人を無理やり乗せましたわ」
「車のナンバーなどは分かりますか?」
「ナンバーは──」
「──新宿 395A ん 49-36」
フリンが、車のナンバーを見たらしく優香に番号を伝えた。
「新宿・395A・ん・49-36ですわ!」
「分かりました。また、何かあれば折り返し電話いたします」
職員はそう言うと、電話を切った。
警視庁 通信司令センター──
「至急至急、警視庁より各局。東京湾岸PS管内にて目の前で人が拉致されたとの入電。通報者は目撃者、女性。マル被は2人組の男で、黒いなんらかの被り物をしており被害者を強引に車に乗せ逃走。ナンバーは『新宿・395A・ん・49-36』。付近車両は現急願いたいたい。どうぞ」
「こちら湾岸381、該当車両発見。停止命令を無視し、首都高へ侵入。どうぞ」
犯人たちの車は、パトカーの停止命令を無視して逃走したのである。
そして、次第にカーチェイスに発展していった。
『今入って来たニュースです。港区で誘拐事件が発生した、犯人の車は未だ逃走中との情報が入って来ました。なお、犯人の車両は首都高湾岸線を逃走中で、付近の車両は十分に注意するようお願いします』
「まあ、いつもの事ね──」
恵は、箒に乗っていた状態でビルの街頭テレビでカーチェイスの様子を見ていた。該当テレビには、首都高を猛スピードで走る逃走車とそれを追いかける3台のパトカーが写っていた。
すると、恵のスマホが鳴った。
「ん? 何かしら?」
恵は、スマホに届いたチャットアプリの通知を開いてみる。そこにはフリンから、瑛美が何者かに拉致されたと旨のメッセージが届いていた。
「え── じゃあ、まさかこのニュースの被害者は瑛美!?」
恵は、すぐさま箒を飛ばし首都高上空まで飛ばす。
そこには、爆走する逃走車の後ろにサイレンを鳴らしたパトカーが走っていた。
「よし──」
恵は、箒を首都高の車道まで急降下させ腰に差していた杖を抜き逃走車に向けた。
「光ぜ目をくらませて── ん?」
魔法を繰り出そうとしたその時、パトカーの前に箒に乗ってローブを被った人物が割り込んで来たたのに気づいたら。
「前の箒、すぐに退けなさい!」
だが、その箒は警官の指示に従わずにパトカーの前を飛び続ける。
すると次の瞬間、高速道路の高架橋が爆発した。
「──!?」
恵は、瞬時に上空に退避した。
「これは── 一体──」
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