魔女弁護士と金貸し

高金利

 恵の家にフリンがやって来て数日経ち、この生活にも慣れて来た。

 今日は土曜日なので、休日で暇そうなフリンに恵は仕事を手伝わせていた。

「ねえ、フリンちゃん。そこのファイル取ってくれない?」

 恵はそう言うと、フリンは無言で頷き棚からファイルを取る。

 すると、事務所の入り口の扉が勢いよく開く。

「──うわ!?」

 フリンは驚き、思わず声が出る。

 入り口には、髪を茶色に染めた明らかにギャルっぽい女がいた。

「うぃ〜す、メグミン元気?」

 彼女は、軽々と恵に挨拶する。

「あのね、入る時ぐらいノックしな──」

「あ、アンタが最近恵の家に転がり込んだって言うガキンチョ? 確かに女の子にしか見えないのマジ受けんだけど! てか着てる服セーラー服だし」

「ちょっと瑛美、人の話を最後まで聞きなさいよ!」

 恵は彼女をそう呼んで言った。だが、瑛美は聞く耳を持たずフリンに興味津々だった。

「ねえ、ガキンチョ。名前なんて言うの? ウチにも教えて〜」



「──えっと」



 瑛美は、名前を聞こうとフリンに詰め寄る。彼女の陽キャぶりに驚き怯えたフリンは後退りする。

「あのね──」

 恵が呆れて口を開いた。

「人の事考えなさいよ。特に、この子の場合は色々あったせいで人が苦手なんだし」

 恵はそう言って、フリンの頭を撫でる。

「ええ〜、大丈夫っしょ! ウチ、生粋の陽キャだし明るけりゃあなんとでもなるっしょ!」

 恵の言葉を、瑛美は持ち前のギャルパワーで完全に吹っ飛ばした。

「てか、アンタなにしに来たのよ?」

 恵は、瑛美にそう聞く。すると、瑛美は詰まり気味に口を開く」

「それが──」





「はぁ!? 闇金から30万借りたら10日で10倍にまで膨れ上がった!?」

 その言葉に恵は驚き、フリンは呆れた顔で瑛美を見つめた。

 特に、恵は驚き口が塞がらなかった。なぜなら、「10日に5割」と言う利息の話はよく聞くが「1日で1割」と言う利息は今まで聞いたことがなかった。

「その金利は出資法第5条で禁止されてるわよ。本当は1日あたり0.3%だから── 10日で30万9000円くらいね」

 恵の説明に、瑛美は「ふーん」っと分かっているのか分かってないのか曖昧な返事をした。

「てか、アンタそんな大金を何に使う気だったの?」

 恵が瑛美にそう聞くと、瑛美は笑顔で答えた。

「大学の学費! 医学部って公立大学でも授業料バカ高いし、しかもウチの大学は授業料納付の期間がすっごく短くてさ手元に金がなかったからつい──」

「瑛美、医学部ってだっけ?」



「──そうなの?」



 フリンが、瑛美に小声で聞く。

「そうだぞ〜、ウチこう見えて国立京浜西洋医学大学の医学生だからッ!」

 彼女はそう言いながら、満遍の笑みを浮かべて恵とフリンに学生証を見せびらかす。

 それを見たフリンは、申し訳ない気持ちになったのか完全に俯いてしまった。

「ガキンチョ、何俯いてんの?」

 瑛美がフリンを見て言う。

 そして、俯くフリンを見て心情を察したのか笑顔を見せて言う。

「まあガキンチョ、ウチよく『親不孝のバカに見える』って言われるけど全然気にしてないからッ! とりあえず顔あげよう? あ── それとさ、メグミンお金貸してー」

 彼女の変わりように、恵はため息をついて言った。

「アンタのスイッチの切り替え方、私も見習いたいわよ。で、いくら?」

「10万! 来週にはバイト代が入るからそれで返すから── お願い!」

 手を合わせて頼み込む瑛美を見て、恵は小切手を出して言う。

「小切手の換金方法は分かる?」

 恵は瑛美にそう聞きながら、小切手に「¥100,000」と書き込む。

「え、知らないよ」

「じゃあ、銀行の人に教えてもらいなさい」

「オッケー!」

 そう言うと瑛美は、恵から渡された小切手を受け取って帰っていった。







「兄貴── うちから30万借りた女、事務所から出て来ましたぜ」

「そうか──」

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