魔女、未成年者後見人になる

 消防の水難救助隊が、橋の上から大神照明で川を照らした。

「どこだ──」

 隊員が照明を動かして、川をくまなく探す。

「これは──」

 恵も、水上から無数の強い白い光が入り込んだのが見えた。

 すると恵は、光の中に小さな人型の影があるのを見つけた。

「もしかして──」

 恵は、影に向かっていく。すると、だんだん全貌が見えてきた。

 影の正体は、飛び込んだ少女だった。

「やっぱり──」

 恵は、少女を抱き抱え水面に顔を出す。少女は、気を失っていた。

「ちょっと? 大丈── !?」

 その時、水嵩がまして急に川の流れが速くなった。

 恵は、少女を抱き抱えたまま流された。

「この──」

 恵は川の流れに抗おうとするも、流される。

 すると、恵は目の前に岩があるのを見つけた。

──この子が

 恵は咄嗟に、自分の背中を岩に向けた。少女を抱き抱えたまま、岩に激突し恵は気を失った──






「バイタル異常ありません」

「よし、意識は?」

「ありませんが命に別状はないかと」

──誰、この声は? それに何か揺れてる?

「聞こえますか? 分かりますか? 反応──」

 恵が目を開いた。視界には、白く強い光を放つ細長い電灯が入り、救急車のサイレンが聞こえた。

「分かりますか?」

 救急隊員が、恵にそう聞く。

「はい──」

「意識戻りました!」

 隊員が報告すると、恵が隊員に言った。

「あの── 私が抱いていた子は──」

「大丈夫です。ちゃんと救助して、我々の後方の救急車で搬送しています」

 病院の急患窓口に着くと、恵は自分の足で救急車を降りた。その時、ちょうど少女を乗せた救急車も到着した。

「下ろすぞ」

 救急隊員が、少女を乗せたストレッチャーを救急車から降ろして病院の中に入って行った。

「関係者の方ですね?」

 恵は、警察官に聞かれて

「はい」

と答えた。

 警察官が言うには、今回の事案にに関する聞き取り調査をすると言う。

 聞き取り調査が終わり、恵は少女が入院していると言う病室に向かった。

 病室前の扉を開けると、そこには半目を開き無言で白い患者衣を着用しベッドの上に座る少女がいた。恵が入ってくるなり少女が口を開いた。

「どうして── 助けたの──」

 少女が下を向いて言うと、恵はそっと抱きしめた。

「大丈夫──」

 恵はそう言うと、近くの看護師に言った。

「それぐらい入院するんですか?」

「1週間ぐらいですね」

 恵の質問に看護師はそう答えた。


 恵は事務所に帰ると、ある手続きの為の書類作成を始めた。

 そして──

「おいゴラァ! 簡易書留や出てこいゴラァ! 郵便やァ!」

 郵便配達員がそう言いながら、事務所のドアを拳でノックする。

「はい──」

 恵が事務所のドアを開けると、そこにはヤクザの風貌をした配達員が立っていた。

「オラァ! 郵便や!」

 配達員がそう言って、書留になっている郵便物を投げつける。

「じゃあな!」

 配達員が去って行った。

──いや怖すぎでしょ!?

 恵はデスクに座り封筒を開けた。

「えっと── 裁判所?」

 恵が封筒を開けると、それは未成年者後見人に選任された事の通知だった。

 恵は、少女が入院している病院に行こうと、腰を上げた。

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