2.4

「ありがとうございます」とお礼を言って、私はマグカップを受け取りました。中身の液体からはチコレの苦味を含んだ匂いがいたします。手の平に感じる熱さを弄びつつ、そういえばこの方は甘いものがそこまで得意ではなかったのでしたね。と考えていました。

腰まである溶かした乳脂を溶かし込んだような髪はわずかな光さえ掴み、まるで全身から光を放ってるかのように見えてしまいます。羨ましいほどに白い肌としゅっとした顔立ち、目元を覆い隠す漆黒の布があってもなお「神の恩寵を受けた美人」という感想しか浮かびません。私の座る向かいの椅子に座り、ふぅふぅとマグカップの中身を冷まそうとして少し失敗しているこの方を誰が「護衛騎士」様だと思うのでしょうか。ですが、彼女こそが「魔術師」と呼ばれ畏れられるロイス・ガードナー様の相方であり、常に側に寡黙に控え戦闘時にはただひたすらに守り抜く「護衛騎士」ラトス・ガードナー様、その方なのです。


「…ご相談が、あったのでは?」

しゃらんと鈴を転がしたような声にはっ、と正気に戻ります。手の中にあるチコレからはまだ湯気が上がっておりそこまで長い時間意識を明後日に飛ばして訳ではないことに安堵しました。

「はい。まずはお忙しい中、お時間をくださりありがとうございます。」

「…気にしなくていいのよ?子供の相談に大人が乗るのはおかしい話ではないのだから、ね?」

「は、はい。」

毎回のことではあるのだけど、鎧を脱いだラトス様と話すのは他のかたと話すより緊張してしまう。やはりこう、人の美しさを超越した造形ゆえでしょうか。とはいえ、私の事情で貴重な時間を浪費するわけにはいきません。私は早速本題をあげることにしました。

「ラトス様。ご相談というのは、『他人を支える』ということについてなのです。…恥ずかしながら、私はまだ未熟者で誰かを支えるということが、よく分からないです。なので、私の一番近くでロイス様を陰日向と支えてらっしゃるラトス様のお話が聞きたくて。」

「…参考になるかは自信はないけども、それでもいいの?」

「はい、ラトス様のお言葉でお話が聞きたいのです。」





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