2.3
ー聖女様がなにやら上の空だー
などと、兵士達に噂されてることなど露知らずソフィアは今日も怪我人の治療に追われていた。心ここにあらずの割には何時もより手際よく薬を運び、患者を診断し、治療魔法もかける。砦の大多数の興味を総ざらいにしている彼女を狙ってるハイエナ(独身貴族)は多い。必然として彼女が自主的に話しかける相手にも過度の注目が掛かる。
「護衛騎士様。」
病室と病室の通り道にあるかつては練技場と呼ばれていた広場。砦を守る兵士達の訓練場なのだが、兵士の大半が怪我人である今は自主的に訓練するものがあちらこちらに疎らにいるだけだった。ソフィアはその中の一人に声をかけた。
誰もがみな、大きいという印象を持つであろう全身を鈍色の鎧で固めた剣士だった。身の丈もある大剣を軽々と扱う姿は圧巻である。その暴風のような斬撃は二つ名が示す通りに自分ではない誰かをはっきり言うのならコンビを組む相方だけを守るために使われる。とはいえ組み手に付き合ってくれる人の良い一面もあり、今回も組み手を申し込んだであろう腕も頭も包帯だらけの少年を軽く吹っ飛ばしつつこちらに振り向いてきた。怪我も治らないうちからこんなことしてるからいつまでたっても大怪我が治らないんですよ…、とため息をつきつつ自らの呼び掛けに応えてくれた相手に向き直る。
「護衛騎士様、今宵のお時間を少しばかり分けていただくことは可能でしょうか?…。ありがとうございます。…はい?そういわれれば腰を落ち着けてお話するのは久しいですね?…。またまたご冗談を仰って。では、またお伺いいたします。」
端から見るとソフィアが一方的にしゃべって深々と頭を下げ、去っていく。とてもじゃないが会話が成立してるようには見えず耳を澄まして盗み聞きしていた出歯亀の人々は首をかしげた。かといって護衛騎士に突撃するものが一人もいない辺り、彼らの小心者感が丸出しである。
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