1.4
ぐわんと視界が歪んだかと思うと、元の野営地に戻っていた。未だ脳を揺さぶるような残響は響いていたが意識を失うほどじゃない。パチンと弾ける焚き火を見るに、刹那の時間しかたってなかったようだ。心配そうな顔でリリスが訪ねてくる。
「御気分は害されてませんか?」
「…うん、大丈夫。なんとかなったみたい」
僕の言葉に安心したのか息をつくリリス。お湯を沸かしますね、とそばを離れていった。そういえばと触れていた剣を持ち上げてみる。頭痛が酷くなる気配はなさそうなので箱を脇に置き、両手で抱えしげしげとよく見てみようとした。
ピキ
と表面にひび割れが出来た。呼び水になったのか次々と剣の表面がひび割れ、その隙間から眩しい光が溢れてくる。「勇者様?!」とリリスの慌てたような声とばしゃんという水音混じりの落下音が聴こえるが、僕は光の眩しさに思わず目をつむってしまった。
ようやく光が落ち着いた頃合いに目を開ける。すぐそばには困惑したような表情のリリスがおり、視線は僕の手元に注がれていた。その視線をたどり僕も腕の中に収まるそれを見る。
細かな黄金細工といくつもの美しい宝石が散らされた鞘に収まる剣。その鍔に刻まれた紋様と同じものが僕の手の甲にも刻まれていた。
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