1.2

領主であるサンリア男爵との対談ののち、僕達は「呪いの剣」を譲り受けた。男爵は幸いにもバウンディ国境砦が魔王軍に襲撃された件と、そこで活躍した者として僕の名前を知ってくれていたため対談はスムーズに進んだと言っていい。譲り受ける際に町と男爵に一切の被害は出させないと一筆書くことになったけど、想像してたよりも簡単に譲られたことに拍子抜けになった。が、町からはなれた場所に野営地を築き「呪いの剣」を見ると、納得せざる得なかった。

「…何回聞いてもこれを剣だと、信じられないな」

盗賊団にあったときからそのままらしい厳重な魔封箱の中には厳重に布に包まれた錆び付いた棒にしか見えないものが入っている。見た目からは剣とはとても思えない。が、リリスは熱に当てられたかのように顔を火照らせつつこちらに微笑みかけ言葉を繋いだ。

「これは間違いなく「魔剣」です。…私もここまで濃密に込められた魔力と剣の隅々まで行き渡るよう緻密に施されてるものは初めて見ました。」

「リリスがそこまで言うのなら、相当なんだな。」

そこで黙り込んだ僕に、リリスはそっと手を伸ばし手を握ってきた。

「あなたなら大丈夫。今までだっていくつもの不可能を越えてきた勇者様であるあなたなら呪いにも負けないです。」

「…そうだね。」

気持ちの決まった僕は剣に手を伸ばし、触れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る