こんな、ゆめをみた――夢幻泡影――

こんな、ゆめをみた


いつも薄昏いような

闇にまとわれた、その世界では

人喰い生物バケモノ跋扈ばっこしていて

政府も機能していない

わたしと夫は

それらから逃れながら

列車で旅をしている

その列車は同じように

逃避行を続ける人々で溢れていて

皆、いつ襲われるかと

不安でおののいている

そんな時

列車に紛れ込んでいた人喰い生物バケモノ

夫は追い詰められ襲われ

停車駅で人喰い生物バケモノとともに

車外へと押し出されてしまう

無惨な姿と悲鳴を残し

ドアは閉まり列車は動き出す

為す術もないわたしは

抜け殻のように床へとへたりこむ

それでも生きねば

生き抜かなければと

胸のなかで呪文のように

ただ繰り返しながら


――列車の行先はわからない



◆むげん-ほうよう【夢幻泡影】

人生や世の中の物事は実体がなく、非常にはかないことのたとえ。▽仏教語。「夢ゆめ」「幻まぼろし」「泡あわ」「影かげ」はいずれも壊れやすく、はかないもののたとえ。

三省堂 新明解四字熟語辞典より◆

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