時雨心地

わたしの涙のかわりのように

静かに静かに雨が降る


ひび割れた心に沁みこむような

雨は止む気配がない


今にも泣きそうなはずなのに

わたしはうつろの顔をして固まっている


ずっと時が止まった部屋で

降り続く雨を見つめながら


俯瞰ふかんしている感情は

隔離されて囚われたまま



あなたはもう何処にもいない


この世界の何処にも

何処にも

何処にも。


ただ、その現実だけが

忍びやかな雨に包まれた

この部屋に、あった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る