もしも僕が
もしも僕が虫だったら
壊れたバイオリンを抱えた
キリギリスだろうか
もう奏でることができなくても
想い出を捨てられずにいる
ボロボロのバイオリンを撫でながら
僕は歌う、声を限りに
とうに聴いてくれるひとはいない
それでも風にそよぐ夏草の影で
僕は空に向けて、ひとり歌うんだ
もしも僕が
もしも僕がキリギリスだったとしたら
触角を震わせながら
密かに露草に涙を落とすだろう
短い命の名残に。
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