第3話 ミーちゃんはシロガネーゼ
とらきちのクラスに、ミーちゃんがいました。
ミーちゃんは小さいねこでしたが、こころは、それはそれはまっすぐなねこでしたので、とらきちに言いました。
「とらきちくん。学校はみんなの学校だから、とらきち学校じゃないのよ。みんなのねこの学校なのよ。」
「うるさいなあ。そんなこと、知ってらい。」
「それにね。『きょうの元気』っていうの、おかしいわよ。『きょうも元気な』の方がずっといいわよ。国語の先生も、なかなかいい歌じゃないかね、そうおっしゃってから、ちょっと助詞を直すともっといいんだけれど、って付け足されたわ。」
「そうだろそうだろ。いい歌だよなあ。」
「音楽の先生も、もう少し頭声発声したら、っておっしゃってたじゃあない。やってみない?」
「うるさいなあ。そんなこと、どっちだっていいやんか。」
「学校へ来たら元気になるぜ、っていう歌やねんから。」
とらきちは、何だか話がよくわからなくなってきたのです。
とらきちは、六甲山で生まれたねこでしたので、ときどき、関西弁がでてしまうところがありました。
そんなとき、みんながとらきちをちらちらっと見たりするので、そのたびに、とらきちは、なんだかドキッとしたりするのでした。
「それとね、ぱんつっていうところ、どうかしら。」
「どうかしらって、そんなんしらんし。ぱんつはぱんつやんか。」
ミーちゃんに話しかけられて、とらきちの右の方、上から三番目のひげが、ぴくぴくっと震えました。
ミーちゃんは白金生まれでしたから、関西弁は得意ではありません。
でも、関西弁のやわらかい雰囲気はいいなって思っていました。
もちろん、とらきちにそんなこと、言ったことはありませんけれど。
で、とらきちはね。
とらきちは、どきっとするときいつも、右側の上から三番目のひげがピクンとするのです。
そして、なんだか、こころが震える気がするのでした。
でも、とらきちですから、それ以上考えることはありません。
行動であっても思考であっても、深追いすることは、ねこにとってとても危険な行為だからです。
時として、命に係わることさえあります。
だから、なるべくなら、そういう行為は慎む方がよいと、これは国民審査で繰り返して何度も言われたことでした。
だのにとらきちは、その教えを忘れてつい、何度も深追いをしてしまい、そのたびに国民審査でいうところの「命に係わる危機的状況」とやらに陥ってしまったことがあったのでした。
いくらのんきなとらきちでも、10回も20回も死ぬような目にあっては、心根を変えないわけにはいかなかったのでした。
だから、とらきちは考えることをやめたのです。
考えなければ、深追いなんて、絶対にしませんから。
※ではまた明日、22時に♪
★お詫び…この後の第4話が、5話・6話の後になってしまいました。推敲していたら、なっちゃって、うまく戻りません。ごめんなさい。
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