第11話 狼人の幼女は、『導き手』を探す



※※※side 【ソラ・アイシュガル】



(……優しい『匂い』だったなぁ)


 ついさっき、助けてくれた黒いマントと黒いマスクをした男の人の『匂い』と『姿』に、『ソラ』は泣いちゃいそうになるのを、すごく我慢してる。


「『月光の髪に空色の瞳』……」


 声に出しちゃうと、また瞳に涙が溜まってくるけど、仕方ないよね。ずっと探してたんだから。


――ソラ。ママが死んじゃったら、満月の明かりのような綺麗な金髪に、どこまでも澄んだ空のような瞳を持った人を探しなさい……。きっと守ってくれる。ソラを導いてくれる。ソラ、どうか幸せになって……。


 ママの言葉を思い出しながら、やっと『導き手様』を見つけられた事に涙が込み上がって来ちゃう。


(ママ。ソラ、ちゃんと見つけたよ! 偉い?)


 心の中で死んじゃったママに声をかけると、もう我慢もできないみたい。


 ポロッとほっぺたに流れる涙をゴシゴシと服で拭きながら、『導き手様』の事を思い出す。


 ふわりっと温かく優しい風がソラの鼻に香った。『人間』からの匂いとは思えなくて、慌てて振り返ると、そこには『導き手様』が立っていた。


 ソラは見た瞬間にわかった。


(……『導き手様』だ……)


 黒いマスクで隠れていたけど、とっても優しくニコッてしてくれた。『導き手様』は、多分、ソラをいじめようとしていた人から守ってくれたんだ。




 ママが死んでからこれまで、いっぱい、いっぱい嫌な事があった。


「さっさと消えろ!」

「獣人は死んじまえッ!! 近寄るな!」

「神に力を与えられない『ゴミ』が!!」


 『人間』はとっても意地悪だった。ママも『人間』だったけど、全然同じ種族とは思えなかった。


 いつも逃げ出しては1人で泣いてたけど、ソラを『きぞく』に売ろうとした人に捕まっていた時、『ぼうけんしゃ』に会って助けてもらったんだ。



――みんな、早く逃げなッ? もう大丈夫だから。



 一緒に捕まっていた子供達と一緒に逃げた。


 その子達は、


「『ぼうけんしゃ』様が助けてくれたんだ!!」

「うわぁーん! よかったよぉお!」

「『ぼうけんしゃ』様ありがとうぉお……」


 といっぱい泣いていたから、ソラを助けてくれたのは『ぼうけんしゃ』だってわかったんだ。


(やっぱり、『人間』にも、優しい人はいるんだ!)


 そう思ったけど、やっぱり怖くて、ずっとコソコソと隠れながら生きていた。


 違う種族の獣人の里に行って、『戦い方』を教えて貰ったけど、そこでも「ママが『人間』なの」って言うと、


「半血の忌子が!!」

「汚らわしいッ!!」

「こんな娘は『追放』しろ!」


 ってみんなに責められて、追い出されちゃった。


 どうすればいいのかわからなくて、どうやって生きていばいいのかわからなくて、怖くて怖くて、悲しくて、寂しくて……、


(ソラはこれからずっと1人なんだ……)


 ってずっと1人で泣いてた。でも、やっぱり死ぬのは嫌で、1つの『希望』とママの言葉を支えにして、勇気を振り絞って、王都まで来た。


(一度助けて貰った『ぼうけんしゃ』になれば、大丈夫かも……。『導き手様』も見つけられるかも……もしかしたら、『パパの『瞳』も見つけられるかも!!』)


 そう思って頑張って王都まできたけど、やっぱり、『人間』は嫌な人ばっかりで、少し挫けそうになってた。


(もうソラの居場所はどこにもないんだ……)


 そう思いながら、ソラが生きていくのを諦めそうになってた時に、『導き手様』が助けてくれた。


『生きてていいんだよ?』


 きっと神様がそう言ってくれたんだと思った。


 でも、『導き手様』はすぐに消えちゃった。


(夢だったのかな……)


 なんて泣きそうになっちゃったけど、いっぱいの人の中に、ちゃんと『導き手様』の『匂い』を感じる。


 優しくて、温かい。嗅いでるだけで、安心して涙が出ちゃいそうな『匂い』。ソラは大きく息を吸って、「頑張れッ!」って心の中で自分を応援した。



「チィッ、さっさと帰れよ……」

「なんで獣人のガキがこんなとこにいるんだよ」

「こんなガキが冒険者になれるはずがねぇ」



 周りの『人間』はやっぱり嫌な事を言ってくるけど、ソラはもう大丈夫。だって『導き手様』がそばにいるから。



 ソラは鼻に魔力を集めて、獣人の里で教わった『技』を使って、『導き手様』を探し始めた。



ーーーーー

【あとがき】

 

★★★!!

ソラが可愛いと思った方はお願いします!

次、ジャングsideです!

夜更新ですので、よろしくです。

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