塔の上のカグヤさま★~記憶を失くした幽閉令嬢、理想の王子様と同棲が決まりましたが毎日ハチャメチャで困ってます。え、これって彼らなりの溺愛なんですか!?どう考えても夫婦漫才にしかみえません!~
3-58 残党を処理しよう!(地球帰還大作戦⑦)
3-58 残党を処理しよう!(地球帰還大作戦⑦)
「はあ、はあ、はあっ……帰って、来れたのね……」
マロンによる完全に魔王クラスの攻撃によって創り出された『闇黒破滅世界』から無事に
「一体なんだったのよ、あれ……完全に死んだかと思ったわよ……!」
あるいは〝死後の世界〟――それも地獄の方だ――はあんな感じなのかもしれない。
今でも心臓は恐怖でばくばくと脈打ち、全身から冷や汗が止まらないでいる。
あたりを見渡すと、他の王子たちも口から魂を出したように呆然と地に倒れ込み、ある者は祈るように頭を伏せ、だれもが全身を震わせていた。
そんな〝ザ・魔王!〟を象徴するかのような【天変地異魔法】をぶちかましたマロン本人といえば……。
「つ、疲れた~……! お腹、すいたよ~~~~ばたり」
といつもみたいなお気楽な感じの口調でうつぶせに地面に突っ伏すのだった。
「まったく。ミカルドの忠告の通り……〝魔王の息子〟は
もし時が巻き戻せるなら、事前に油断していたあたしを注意してやりたい。
「それにしても。これ、
未だにマロンの魔法による大地の震動は続いていた。
ごおおおおおおおおお、という地鳴りとともに世界が揺らぐように震えている。
なにより、空に浮かんでいた星々の位置がそれまでと違うように見えるのだ。
「すこしかもしれないけど……まさか、本当に星を動かしちゃうなんて……」
「「うわああああああ!?」」
「! いきなりなにっ!?」
マロンの放った攻撃の恐ろしさをあらためて実感していると、王子たちの叫び声が聞こえた。
『『オォォオオォォオ――』』
みるとそこには、さっきのマロンが作り出した〝闇黒世界〟で世界を蹂躙していた【漆黒の手】の一部が地面から生えるように湧いていた。
「あ、あれはまさかっ……! さっきのマロンの魔王的攻撃のなんかあれ!」
あたしは壊滅的な語彙力で
「マロン! 大変なのよ、さっきの〝黒い手〟がまだ消えず残っちゃってるのよ!」
マロンは生気が抜けた顔でこちらを向くと、やはり力ない声で言った。
「あ~……残っちゃったんだ~……でも、おれももう〝ごはんパワー〟は残ってなくて……今のおれじゃ、あれはどうしようも……ばたっ」
「倒れたーーーーーーーー!」
がくがくとマロンの肩を掴んでゆするも、マロンの目が醒めることはなかった。
寝息は聞こえたから、空腹を少しでも紛らわせるために〝低電力モード〟にでもなったらしい。
「ちょっとちょっと! あんな得体の知れなさすぎる魔界生物の腕だか手だかを放置して眠りにつかないでよ!」
『『オォオオォォオ』』『『オォオオォォオオオ』』
その間も〝漆黒の手〟はなにかを求めるように地面から腕を伸ばし這いずりまわり――
やがてさっきの続きのように、この世界をも
「うわーーーー! 暴れ出したーーーーーーー!」
ドオオォォン。ドオオォォン。
黒い手が振り回されて。
世界を破壊していく轟音が周囲に響き渡り。
そのたびに砕かれた大地の破片が勢いよく空に飛び散っていく。
『『オォォオオォ!』』『『オォォオオォ――!』』
(まずいわ……このままだとアレは、
もはやどこかの戦闘漫画のような、決してラブコメでは発せられることのない台詞をあたしは吐いて周囲に助けを求める。
「だれか! アレ、どうにかできないの……!?」
しかし王子たちは未だ震えるようにして怯え、事態を諦めたように静観するだけだった。
「あ、あんなものは、完全に
「生物でもなんでもない、ただの〝死そのもの〟の概念だよ……」
「まったく手に負えん……〝手〟だけにな!」
「クッ……! まさかセカイが邪神様以外の者の手により終焉を迎えるとはな……!」
「やっぱりそんな
だれもがアレに向かっていく気力を持っていなかった。
その間も〝黒い手〟は大地を。空気を。世界を蹂躙していく。
「っ! カグヤ!」
その中でも思案を続けていたクラノスが閃いたように言った。
「あの時地下倉庫で見つけた【勇者の剣】――あれだったら、もしかしたら……!」
「勇者の剣……ああ! あの
がくっ、とクラノスは肩を落とした。「確かに見た目は胡散臭かったけど……やっぱりあれ、ホンモノのような気がするんだよねっ! ここには持ってきてる!?」
「ええと……」あたしは地下倉庫から持ってきた武器の中から、
「さんきゅ! ……くううぅ……やっぱり抜けないか……」
クラノスは力だけでなく途中から魔法も駆使したが、やはり剣は抜かれることはなかった。
「【魔王】の
「なるほど! それじゃあどれだけ胡散臭くても、この剣に賭けるしかないのね……!」
こくり。クラノスは頷く。
――お願い神様!
あたしはいよいよラブコメとかけ離れた祈りを捧げ始めた。
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