塔の上のカグヤさま★~記憶を失くした幽閉令嬢、理想の王子様と同棲が決まりましたが毎日ハチャメチャで困ってます。え、これって彼らなりの溺愛なんですか!?どう考えても夫婦漫才にしかみえません!~
3-57 魔王の力を知ろう!(地球帰還大作戦⑥)
3-57 魔王の力を知ろう!(地球帰還大作戦⑥)
『マロンに〝本気〟は出させない方が、いいかもしれん』
ミカルドがそう忠告したが、
「全力の本気でいっちゃうよ~~~~~~~!」
当の本人であるマロンは
「ちょ、ちょっと待ってマロン!」
あたしの叫びはなおもあたりを吹き荒れる風で消されてしまう。
この時、あたしはすこし〝油断〟をしていた。
確かにミカルドは〝本気を出させないほうがいい〟と言っていたけれど。
相手はあのおバカ王子のマロンだ。素直で、無邪気で、ご飯を食べることしか考えていない彼がどんな
これまで以上に異次元なことにはならないだろうと――そう
「マロンー! 本気って、大丈夫なのーーーー!?」
強風に負けないようにあたしは叫んだ。
「大丈夫大丈夫! ボクの胃袋は……宇宙なんだ~!」
「なんか聞いたことあるようなフレーズだけど! っていうかそれ、あんたの今からの攻撃と関係あるの!?」
マロンはにっこり頷いて、「うん~! おれの能力は≪
「……え? いま、なんて?」
「だから~おれの『■@■※●◆』を『■●@◆■@※●』して『●◆■@■※●※◆』するんだよ~!」
言葉の意味ではなく。
確かにマロンはなにかを口にしている。
しかしあたしの耳には。
なにか得体の知れない生命の断末魔のようにも聞こえる不気味な発音だった。
(たしかにこれは、まずいかも……!)
あたしの背筋に悪寒が走った。しかし事態は止まらない。
「それじゃ、いっくよ~~~~~~~~」
――マロンに〝本気〟を出させるな。
そんなミカルドの言葉が意味深にあたしの脳内に響き渡った。
「マロン、やっぱり――」
止めようとしたところで。
(……え?)
違う。消えたのは音だけじゃない。
唐突に世界が
(……なに? これ……まっくら……!)
その果てしなく黒い空間の中で。
ただマロンだけが確固とした形をもってそこに存在していた。
漆黒の空間に。
マロンというひとりの人間――否。
魔王の息子だけが浮かび上がっている。
(マロン――!)
声は出ない。声は消えている。
遅れてあたしは今の状況が〝異常〟なことに気が付いた。
一切が黒に染まっている。あたしの全身から嫌な冷や汗が伝う。思考がぐるぐるとまとまらない。
その中心で。
「――≪■◆@■※●◆■◆≫」
マロンだけが例の身の毛をよだたせる〝不気味な発語〟を行っている。
呪詛めいた言葉にあわせて、前にまっすぐ突き出した両手から何やら得体の知れない〝黒い
(――っ!?)
全身をこれまで以上の悪寒が
周囲の黒の〝次元〟が変わったことが分かる。
黒がより黒く。闇がより闇に近付いていく。
前後左右の平衡感覚が分からない。今自分がどこに立っているかが不確かに思えてくる。
時間の感覚も分からない。一秒が経ったのか。はたまた一時間が経過したのか。
そして、自分が今
今のあたしには、分からなかった。
(なんなのよ、これ……!)
そんな【限界世界】の果てにて。
途方もない
前に突き出した両手をそのまま――宙に掲げた。
その先で。
(あれは、なに……?)
あまりにも巨大で。
あまりにもおぞましく。
あまりにも不気味な。
漆黒の――〝門〟が姿を現した。
「■◆@■※●、◆■◆●※◆――、」
そしてマロンが発する、この世界の言葉ではない呪文の
「――≪■■■ ■■■■ ■■■■■≫!!」
その扉が。
開
い
た
。
(~~~~~~~~~~~~っ!!???)
刹那。
これまでに感じてきたことのない恐怖が全身を引き裂いた。
扉の中からは完全にこの世の物ではない、おぞましくおびたただしい量の〝漆黒の腕〟が伸びてきていた。
爪は万物を切り裂きそうに鋭く。
皮膚は不気味に爛れ。
触れたもの総てを滅してしまいそうな覇気を
『『オオオオオオォォォォオォォオオォォオ――――』』
それは黒い腕の
強制的に生きる力を削ぐような怨霊のごとき叫び声が黒の空間に響き渡った。
そして伸びてきた無数の〝黒い腕〟は。
先にあるものをすべて滅するという確固とした意志をもち。
激烈たる凶気と勢いをもって――この世界を
『『オオオオオオォォォォオォォオオォォオ――――!!!!』』
黒の世界が壊れていく中で。
あたしは声にならない声で叫ぶ。
(想像以上に【魔王】の攻撃だったーーーーーーーーーーーーっ!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます