塔の上のカグヤさま★~記憶を失くした幽閉令嬢、理想の王子様と同棲が決まりましたが毎日ハチャメチャで困ってます。え、これって彼らなりの溺愛なんですか!?どう考えても夫婦漫才にしかみえません!~
3-55 邪龍を目覚めさせよう!(地球帰還大作戦④)
3-55 邪龍を目覚めさせよう!(地球帰還大作戦④)
「わーーーーーー! オルトモルトの内なる邪龍目覚めたーーーーーーーーーー!」
言葉通り【巨大な黒龍】となったオルトモルトが世界に響き渡るような声で言う。
『クククク……あれほど余は警告をしたぞ……我が内なる魂に封じ込めし【邪龍】の力がやがて抑えきれなくなると……
「ほ、ほんとにオルトモルトなのね……!」
邪龍が発する声はかなり重低音になってはいるが、確かにオルトモルトのものだった。
っていうか一体オルトモルトって何者なの!?
魂に邪龍を飼っていて『いつか目覚める』と確かに言っていたけれど……完全に【中二病】のそれかと思ってたわよ!
こうなってくると他にも色々ブツブツ言ってた設定のヤツも全部
まったく信じられないけど、目の前には確かに〝邪龍になったオルトモルト〟がいるのよね……なんだか頭が痛くなってきたわ……。
「ちっ……邪龍の血が目覚めちまったか……!」
「こうなる前に対処すべきだったんだよ~!」
「邪龍は邪神の眷属――こうなると、奴の言うとおり【邪神】の復活も近いということかもしれぬぞ……!」
王子たちは相変わらず邪龍化したオルトモルトとその予言に怯えている。
今度はあたしは笑えなかった。
「何度見ても信じられないわ……」
目の前の巨大な黒龍の姿を見て(ちょうど大きさは他の怪獣たちと同じくらいだ)、あたしは首を振った。
――邪龍の力が目覚めれば、どうなるか分からぬぞ……!
まだ人間の姿を保っていた頃のオルトモルトは言っていた。
自我はあるようだけど……そのうちコントロールができなくなってしまうのだろうか。
――世界が終わらぬうちに余から離れるのだ……!
オルトモルトはそうも言っていた。
ということはつまり、目の前の巨大な邪龍(元・オルトモルト)は、世界を。あたしたちを――!?
『クハハハハ! 後悔してももう遅い! 創世時より余の中で力をため込んできた邪龍の
「ちっ! もう終わりだ……!」「あれはもう、オルトモルトさんじゃないべ……!」
「殺戮と破壊を何よりも好む邪神の眷属――」「ちっぽけな我らなど、ひとひねりにされてしまうだろう……!」
「うわ~~~、もっとご飯食べておけばよかったよ~~~~~」
王子たちは頭を抱えながら震えている。
『クハハハハハ……! 覚悟はできたか、小さき者どもよ……!』
オルトモルトは龍の姿になっても変わらず大げさな身振り手振りで。
あたしたちに向かって胸を張って高笑いをし続けていたので。
「オルトモルトー!!」
『クハ……? なんだ、小さき者よ……』
「あんたがどうして邪龍の姿になったかとか、よくわかんないけどー!」あたしは叫ぶようにしながら、いつもみたいに
「カグヤ! 何を馬鹿なことを!」
「アイツはもう人間じゃねえ!」
「我らの言うことなど、素直に聞くわけなど……」
『クハハハ……!
「「聞いたーーーーーーーーーーーーー!」」
「うふふ……いい子よー! オルトモルト!」
あたしは口の横に手を添えながら大声でオルトモルトのことを褒めてやる。
よかった。龍の姿になっても〝根は素直〟なところは変わってないみたい。『邪龍を飼い慣らすカグヤさんって、一体――!?』みたいな怯える声が後ろで聞こえてきたけど、聞こえないふりをしておいた。
『クハハハハ!
「え? 唯一無二の……? ちょ、ちょっと待って! なんか嫌な予感がするんだけど」
あたしの脳裏に走った嫌な予感なんて気にすることなく。
巨大な黒竜の姿になったオルトモルトは、おぞましい牙が無数に生えた口を大きく開いて。
『その一切を
燃え盛る灼熱の炎を、吐いた。
「うわーーーーーー! やっぱり攻撃方法被ってたーーーーーーーーーーー!」
しかも今度の被りはポータンの時とは違う。
炎を吐くという行為そのものの被りはもちろん、姿が【龍】というところでも被っている。
しかも≪偉大なる龍の火息吹き≫という攻撃名もだだ被りだ。訴えられても仕方ないレベルじゃないの!
「てゆーか! 邪龍なんだからせめてもの〝黒い炎〟とか吐きなさいよ! なんでみんな揃いも揃って真っ赤な炎吐いてるのよ! まったく唯一無二じゃないじゃない!!!」
あたしが全力で突っ込んでいる横で王子達は、
「おおお! これが邪龍の攻撃……!」
「なんてオリジナリティに溢れた攻撃なのだ……!」
「こんなの、見たこともないよ……!」
などと絶賛していた。
どれだけ素直なのよ!
デジャヴどころか数分前に見た光景とまったく同じじゃない!
あたしは念のため〝先駆者〟であるはずのドラゴンとサンショウウオのことを見やるが――
やっぱり彼らは『この炎、唯一無二……!』みたいな表情を浮かべて感心していたのでいよいよあたしは主張することを諦めた。
「で、でもすごい……! 度重なる炎で地面が
まるで燃え盛る山の火口のように地面はぐつぐつと煮えたぎっている。
クラノスが気を利かせてあたしたちに≪炎耐性≫の魔法をかけてくれていなかったら相当に熱く、ここに立っていることすらも難しいだろう。
「これなら本当に、どうにかなっちゃうかも……!?」
あたしの中で少しだけ可能性の〝芽〟のようなものが息吹きはじめる。
なんだか身体の奥からじんわりと温かいものがせり上がってくるようだ。
攻撃はだだ被りだったけれど、その超絶威力に代わりはない。
「さあ、次の攻撃はだれ――!?」
振り向いた先には――
「………………」
メイド服を着た美少女のような美少年。
アルヴェが立っていた。
「あ、あら?」
――アルヴェにこれまでのみんなが見せたような〝星破壊級の攻撃〟なんてできるのかしら……?
あたしはごくりと息を飲み込んだ。
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