1-7 部屋割りをしよう! ②
~前回までのあらすじ~
ミカルドが 駄々を こねている!
☆ ☆ ☆
「我が
「「……はあ!?」」
部屋割りの説明の際、人の話を聞いていなかったことについて。
ほかの2人の王子は謝ってくれたのだが、残るひとり――ミカルドは、かたくなに謝罪を拒否していた。
――プライドが高いんだかなんだか、どうしてそこまで意地になるかな。
「ふうん。じゃあ、別にいいけど。あんたがどこに住むことになろうが、あたしには関係ないし。ねー」
「「ねー」」
すでに7階という自分たちの理想郷を手にしたふたりが、晴れやかな笑顔で同調する。
男ってほんと単純ね。男っていうよりは……子ども?
「ぐっ……!」
そして目の前では、意地を張り続ける〝でっかい子ども〟のミカルドがなにやら身体を震わせていた。
「ぐががががががああああっ!」
「うわっ! びっくりした! 急に
全身を痙攣させるほどの葛藤の末に。
どうやらミカルドは頭を下げる決心をつけたようだった。
彼はあたしの目の前に、重たくぎこちない足取りでやってくる。
「ぐ、ぐぐ……カ、カグヤ、様……ぐ……この、たびは……ぐぐぐ……もうしわ……ぐっ、うっ」
「あんたどんだけ謝りたくないのよ!!!」
思わず突っ込んでしまった。
ミカルドの全身の震えはひどくなるばかりで、目は血走り過呼吸のようになっている。頭下げるのにこんな拒否反応示す人、いる!?
「ぜぱあっ、ぜぱあっ……くっ、もうし、わげが……うう……ヴォエエエエエエ」
「うわああああ! こいつ、吐きおった!!!」
もー! なにやってるのよ! お気に入りの
「うう……カグヤ、ごめん、おれ……人の
隣を見ると、マロンが〝もらいゲェ〟をしそうになっていた。
「やめてええええええ! この場をこれ以上大惨事にしないでちょうだい!」
子どもどころかいよいよ〝赤子〟の世話みたいになってきたわね、などと考えつつ慌ててあたりを見渡す。
「とりあえず、拭くもの拭くもの……!」
どうにかブツを処理しようと焦っていたら、呆れたように静観していたクラノスが長い溜息を吐いたあとに。
「はああああああ、もう! ――水魔法≪
まさかの〝魔法〟を使ってミカルドのゲェを綺麗にしてくれたのだった。
すごい、魔法って便利!
「クラノス!」
「言っとくけど
「ありがとう、恩に着るわ」
あたしは心からの感謝をして。
一連の騒動を引き起こしたすべての元凶であるミカルドのことを見やると――
「…………」
彼は背中を向いたまま床にうずくまっていた。
これだけ人に迷惑をかけて、さすがに少しはこたえたのかもしれない。
――
どんな環境で育ってきたかは分からないけれど。
〝人に頭を下げるくらいなら吐く〟っていう個性の持ち主。
うん、これからはその前提で接することにしよう。
……どんな個性やねんって思うけど。
「ミカルド、大丈夫? あたしもすこし意固地になってたわ。ごめんなさ――」
「む、いや、なんか吐いたらすっきりした。カグヤ、すまなかったな」
「って、謝れるんかーーーーーい!!!!!」
あれだけ嫌がってたのに、さっきまでのはなんだったのよ!
「よし。これで我も7階だな。ふはははは!」
吐いてすっきりしたら、やけに元気になってるし!!!
「もーーーーーーーーー!」
あたしは拳を空に叩きつけるようにしてから、叫んだ。
「はあ……もういいわよ、あんたたちの好きな部屋にしなさい……3人とも7階ってことでいいのね?」
「うむ」満足そうにミカルドが頷く。
「やった~!」両手をあげて喜ぶマロン。
「ふん。ボクと同じ目線に存在することを許してあげるよ」と皮肉っぽくクラノス。
これにて部屋割り、一件落着――と思ったのだけど。
「あ、そうだ。7階はいいんだけど、部屋の番号はどうする?」
「「……え?」」
「701号室から703号室まであるんだけど……って、あら?」
見ると3人の間にごごごごご、と炎が燃え盛り始めていた。
「我が〝1〟番に決まっているだろうが。異論は認めん」
「701が一番階段に近いよね!? 食卓にたどり着くのに一秒も無駄にはできないよ……!」
「
わーわーきゃーきゃー。
また喧嘩を始めた3人を。
「………………」
あたしは無言で彼らの襟元を掴んで。
「それ以上は――外でやってね☆」
きわめてにこやかな笑顔のまま、8階の窓から放り出してやった。
「「「うわあああああああああああああ」」」
3人の行方は、だれも知らない。
☆ ☆ ☆
「あ、そうだ。今回の話はゲェとか汚いワードが出てくるから、食事中の人は見ないでね☆」
「忠告が2000文字遅いわよ!!!!」
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