1-8 異音の正体を探ろう!
~前回までのあらすじ~
みんなで仲良く☆ 部屋割りをした結果――
ミカルド……701(右)号室
マロン……701(中)号室
クラノス……701(左)号室
になったよ!
「701をつける意味ないわよねええええええええ!?」
☆ ☆ ☆
3人の残念王子たちをそれぞれ7階の自室となる部屋に案内したあと。
「……はあ、なんだかどっと疲れたわ」
あたしも久しぶりに自室に戻ってベッドにどかんと倒れこんでいた。
外は変わらず満月。なんだけど、雲がかかって
窓から差し込んでくるその淡い月明りが目に優しい。
「――はあ。こんな時、あたしを癒してくれる本当の王子様がいたらなあ」
もやもやもや、とすぐに脳裏に浮かび上がってきたのは残念王子ーズ。
ぶるぶるぶる、とあたしは慌てて首を振ってその幻影を外に追いやった。
「いけないいけない、あいつらに期待しても無駄だわ……それに、」
あたしは右手の薬指にはまった〝運命の宝石〟つきの指輪を見て言ってやる。
「もしかしたら
――この石輝く時〝運命の相手〟が現れん。
これもあたしの数少ない過去の記憶の中のひとつ。
分厚いフードを被った顔の見えない占術士が、そんな予言めいた台詞と一緒にこの指輪をくれたのだ。
――あたしもまさか〝運命の相手〟が複数だとは思わなかったけど。
っていうか、あいつらのことを〝運命の相手〟だなんて候補にも入れてないけれど。
「今日だけで3人も現れたんだもの。次こそ、まともな王子様が――」
そう祈っていたら――
『キ゛エ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァァァァァ――!!!!!!』
という。
耳をつんざく、あまりにも大きな轟音が鳴り響いた。
「な! なんの音!?」
異常は音だけじゃない。
重低音につられて、床が。大地が――揺れている。
まるでとてつもなく巨大な〝獣〟が目覚めるかのような
「一体、なんなのよ……? もしかして
窓から外を見るが、一見異常は見当たらない。それでも最悪の想定を脳裏に描きながら。
あたしは部屋を飛び出すと、ちょうど階段を駆け上がってきたミカルドに出会った。
「カグヤ、大丈夫か!?」
「ミカルド! うん、大丈夫、今のところは――きゃっ!」
慟哭による地響きは止まない。
揺れる地面でバランスを崩してよろけてしまった。
すると――それをなんだか慣れた動作で、ミカルドが受け止めてくれる。
「気をつけろ。もう、お前ひとりの身体じゃないんだ」
「……あ、ありがと」
きゃあ。不覚だ。
思わず胸が高鳴ってしまった。
ミカルドに3ポイント――あげたいところだったけど。
「でもこれだけは言わして。今のところ、あたしの身体はあたしひとりのものよ」
余計な一言もついていたので、ポイントは取り消しになった。
☆ ☆ ☆
「クラノス!」
7階に降りてくると、クラノスが
「この叫び声、マロンの部屋から聞こえてくるみたいなんだ」
「え? ……なにか、あったのかしら」
あたしは急に不安になった。
マロンは確かに
3人の中じゃ、一番あたしのことを気遣ってくれていた。
(最初に謝ってきたのもマロンだったしね)
「もしかしたら〝頭の角〟が関係あるのかな――」
嫌な予感が脳裏によぎった。
『秘密☆』と唇に指を当てた時の、マロンの無邪気な笑顔が思い出される。
その仕草と、さっきからけたたましく鳴り響く〝怪獣みたいな叫び声〟とは、まるで異なるように思えたけれど。
この部屋の中で、マロンはもしかしたら
「――マロン」
たとえそうだったとしても。人間じゃないそれこそ怪獣かなにかになっていたとしても。
彼が自己を失い、あたしの言葉が届かなくなっていたとしても。
――あたしはマロンのことを信じて、優しく抱きしめてあげよう。
そんなことを、思った。
「……開けるぞ」ミカルドが慎重な面持ちで言う。
こくり。クラノスは頷いて。
ごくり。あたしは息を呑んだ。
「「――マロン……!」」
扉が開いた先で――
床に突っ伏して倒れていたマロンが。
あたしたちを見つけて、言った。
「――お腹、すいた……」
「「てめえの腹の音かああああい!!!!!!」」
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次回、みんなでご飯を食べます!
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