第6殴・部活見学 中編
この学校の隅っこに構える、剣道部と柔道部が使用する武道場。
右半分の畳は柔道部の領域になっていて、左半分の板目のところこそ、剣道部の使用場所。
入り口から真横に位置する壁際に、僕は正座で待機中。
そもそも、何で僕がここにいるのか。
時は三時間前に遡る…
『ねえ笹間くん、今日の放課後って時間ある?』
突然聞かれて、何だろうと思った。
まあ毎日暇だしなんにもないし、科宮さんの誘いなら乗らない訳がなく。
うん、と答えた僕に対して、彼女の返しはこうだった。
『じゃあ…剣道部、見に来ない?』
結果がこれ。
今日は顧問の先生が剣道部も柔道部も来ないらしく、どうせなら結託してサボろうとなった結果、柔道部はスマホでゲーム大会を。剣道部は勝手に部活見学会を開いて絶賛開催中。
ちなみに、見学会の参加者は僕一人だけ。
対して剣道部は五名。本来は六名で、男子がいるらしいけど、今日は彼女とデートすると言って帰ったらしい。
だから、女子五人に僕一人という謎の布陣になってしまったのです。
で現在、壁際。その反対の壁際に、面をつける女子たち。
非常に気まずい。人の彼氏だよ?なんて話せばいいのさ?
こんにちは?強いですね?凄いですね?
なに言っても棒読みになる自信がある。
それに、下手なことすると一貫の終わり。
僕が剣道部に嫌われる=彼女の科宮さんも嫌われる。嫌われる=関係がおかしくなる。おかしくなる=戻したい。戻したい=彼氏はいらない。つまり、カップル崩壊の予兆!?
なんとしてもヘマだけはしない。
科宮さんのため、僕のため!
「笹間くん?」
「あへゃ!?はゅ、あ、科宮さんか」
一瞬、面をつけ終え僕のもとへ歩いてきていた科宮さんが誰かわからなくなってしまった。
「もう、ちゃんと見ててね?」
「うん」
面越しだとよく表情は見えないけど、テレてるんだろうなってのはわかった。
「それじゃ、地稽古やっちゃおう」
キャプテンで3年っぽい女の人の声。
地稽古ってなんだろうと思いつつ、観覧を始める。
「礼!」
「「「「おねがいします!!」」」」
威勢よい合図の後、2対2を組んで余った一人が太鼓へ直行。
「いくよー!」
そのまま、太鼓を二度うちならした。
「「「「やあああッ!!!!」」」」
巻き起こる気迫。
科宮さんと三年生の先輩との組に。
一瞬の攻め合い。ここで、勝負が。
「めええええええんッ!!!!」
科宮さんの面は、もはや目で終えないほどの早さだった。
先輩の面に、観えないほどの速読のを吸い付くように飛んでいく面。
「かっこいい…」
改めて、息を飲む。いつもの科宮さんとはまるで違う。いや、いつもも凄くかわいいけどね!
残心を決めきり、完全な一本を入れたその姿は…
イケメンだなぁ…
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