第五殴・部活見学 前編

それから何日かたって、地獄の日。

「そいじゃー、こないだのテスト返すぞー」

テスト返却の時間だ。成績終了のお知らせ。

順に返されていく成績。不安が募り募り増えていく。


もう、すぐ後だ。

善城先生が前に来た。

「笹間…寝てた割にはよく頑張ったぞ」

苦笑いで言う善城先生。その手から成績を受け取った。

僕の総合学力テストの結果は100点満点中の…

39点!サンキュー!

赤点とまではいかなかったけど、回答用紙を見てみるとわかること。

ほとんど寝ぼけて書いているぞ、この人…

問題を重ねていくにつれ、字がぶれだしてガタついて、五問先でヒエログリフと化してしまっている。

ラスト二十問は未回答。逆によくこれで39点取れたなとか思っちゃった。


なんかもう見ていられなくなったので、後ろを向いて科宮さんの答案を見る。

まる、まる、まる

まるばかり。

マルしかない…怖い…

ん?あれ。

「科宮さん、これ最後はどうしたの?」

「え、あ…えーっと…」

急に焦りだした科宮さん。答案の点数は81。

そして気になるのは、最後の数問。

なにも、書かれていないのだ。

空白なのだ。

ペンを走らせた痕跡はなし。

そこまで至らなかったということ?

科宮さんが、あの科宮さんがそんなことになるなんて、ありえない。

「その…ずつと見てたから…」

開かれる口。答え合わせの時間です。

「ずっと、見てた…」

その理由こそ、ありえないもの。

「科宮くんの寝言、全部聞いてた…」

「え?」

ちょっと待とう。

今なんて?

「科宮くんの寝てるのを見てたら、築いたらテストが終わってた…てへ」

てへじゃないだろ、てへだけで済ませられるような問題じゃないだろ。

「僕の後ろの人、やっぱり怖いね…」

「ん?今なんて~?」

「何にもない!」

テスト放棄してまで僕を見るって…あ、いや科宮さんなら許されるか…成績いいし…

「いやー失敗だねー!次はながらで見れるようにしよっと」

いや、どっちにしろ見るんだ…

というか、次は僕寝ないぞ!

「やっぱり怖いね…科宮さん」

刹那、飛んでくる腹パン。

椅子の背もたれと座部分の僅かな間を貫通して、僕のお腹に腹パンが決まる。

「う…嘘です…」

「それでよーし」


その日の放課後。

僕はナゼか、武道場にいる。

今日の日こそ、そう。

部活(勝手に)見学の時間です。

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