第三殴・ネェの凶行
おはようございます。爽やかな朝です。
目覚ましを止めてもぞもぞベッドを動き回る。
春先のこの二度寝したすぎる衝動、ほんとになんなんだろう。
二度寝の悪魔を振り切って、勢いよく飛び起きた。そのまま部屋を出て階段を降り右へ直進し洗面所へ駆け込む。
そのままひんやりとした冷水を手に汲み、ばしゃんと顔を洗った。
単にこれは携帯の目覚ましの謎旋律で起きられなかった一部の脳戦士たちをたたき起こす恒例のもの。
タオルで顔を拭い、そのまま今度はリビングへ。
「おはよー」
ドアを控えめに開けつつ控えめに挨拶。
誰も起きてないのを知ってるから。
父は昨日今日と泊まり込み、母は本日も爆睡モード。妹も爆睡中。
姉は…というと、なんとびっくり起きている。
あの姉が、起きている!?
僕の姉、笹間やいろ。通称ネェ。
僕とはまったくといっていいほど、似てない。
顔もしゃべり方も性格も、唯一にてるというか同じ髪色以外は接点皆無。血の繋がりを真面目に考えたときもあった。
「おはよ…って、なんだよそのありえねえって顔は」
「いや、ありえないもん」
だって、この人がこんなに早く起きてくる意味がまずわからない。姉は同じ高校で3年だが、いつもならギリギリまで寝てるか携帯いじってるかのあの姉だ。ありえない。
「いや、別に思い立って早起きするのぐらいは良いだろ。なんなら飯作ってやったんだぞ。感謝しろ」
なんとテーブルを見れば、二人ぶんの目玉焼きと食パン、シリアルが。
目玉焼き以外作ったかどうかはあえて問い詰めないけど、少なくとも姉が料理している!?
てっきりそんなのは絶滅してるとおもってたけど、まさか生き残っていたんだね、人としての大事なのが。
それとも…
「ネェ、変なもの食べた?」
「何でだよ!私が早起きして飯作るのが天変地異とでも言いたいのか!?」
「あながち間違ってない」
「おい」
さては男でも出来たのかな。生活的な女の子が好きとか言われたのかな。なんでもいいけど、手間が省けるしこれから宜しく頼みそう。
「男?」
「違うわ」
この食らいつく感じがなきゃ、モテるんだろなァ…
いっそ黙ってたら可愛いんだけどね。
ご飯を終えて、着替えて、頭を整えて。
「行ってきまーす」
「ほーい」
家を出て、いつもの時間、いつもの道へ。
朝は剣道部は朝練があるので、科宮さんと一緒にはいけない。
だからこそ、朝練の生徒が登校する時間とその他の生徒が登校する時間、その間にある少しの隙間を狙って独り登校するのが日課。
ただの陰キャですよ。
でも、誰にも見られないってなんか良さ。
世界が僕だけになっちゃった気になれる。
中二だね
「おはよーございますっ」
朝練生徒が教室に帰りつつあるこの時間帯に、僕は登校している。
元気よくドアを開けて、元気よくご挨拶。
何人かの女子が「おはよー」と返してくれるけど、僕はとある人を探す。
と、探さずともその人はやってきた。
「おはようございます」
整った言葉で入場するは、剣道部女子三名。礼節がなって凄いんだけど、そんなのどうだってよくて。今はその真ん中の人に釘付けで。
ドアの前の邪魔なゾーンに突っ立ったまま、その通過を見届ける。というか凝視する。
やっぱり、朝でも科宮さんは可愛いのだ。
二十四時間三六五日、どんなときも。
そう思った次の瞬間、ふと気付けば自分の席へとダッシュ。そのまま後ろの席を向く形で気をつけ。科宮さんの到着をまつ。
「おはようございます科宮さん」
「お、おはよう…」
突然かしこまった僕に対して、訝しむように困る科宮さん。
次の瞬間、またまたその顔は真っ赤に染まるのだ。
「今日も変わらず可愛いね!!」
まだそんなに人気のない教室に声が響き、一同僕を凝視する。自分でなに言ってるのかよくわかっていない。けど、ありのままの思いを唐突に伝えたくなった。唐突に起きたくなったネェと同じだ。
当然こんな褒めたんだから、真っ赤になってデレデレになるはず。
「な、ななななに言ってるの?」
ドゴンッッ
「ぐふぅっ!?」
なぜ…何故殴られたんだ…?
K.O.
その数分後。一次限目に、それは唐突に告げられた。
「それじゃ、テストするぞー」
聞いてないぞ?
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