第2殴・クラス

「じゃ、改めて自己紹介だ。私がこのクラスの担任になった、善城八重那。29歳独身、まだまだ彼氏募集中、趣味はイイオトコ捜しッ!これから一年、よ、ろ、し、く、なっ!」

かなり衝撃的な自己紹介をかました、黒髪ポニテのメガネ先生。場がしーんと凍りついた。

本人はまったく気にしてないっぽいけど、どんなメンタルしてるんだろうか……。

男子がちらちら先生の豊満なアレを見てる。無駄に膨らんだ、けしからん大きさのアレだ。

確かに、はっきりいうとすごくデカい。科宮さんなんて話にならないくらい。

じーっとソレに見とれていたら、後ろの席から「うーーーーっ……!」と何かが唸る声と、殺意のこもった激強の視線が。

「笹間くーん……?」

悪魔だ!悪魔がいる!嫉妬の悪魔が僕の後ろに!


そう。僕らは今年こそ、同じクラスになれたんです。


「そいじゃマァ、1人ずつ自己紹介と行こうか。名前と、趣味又は特技1つずつな。んなら…席順でお前、芦田から」

芦田と呼ばれた人が立ち上がって、自己紹介。そのまま席順で、もとい五十音順で自己紹介が回っていく。

僕ら二人はサ行、連続。出番はすぐ回ってきた。

「笹間兼継です。特技は…えーっと…編み物です!宜しくお願いします!」

男子からはイジるような笑いが、女子からは意外性からの笑いが少しずつ巻き起こった。

まあ、普通の自己紹介っていうやつだと思う。


だからこそ、次が凄かった。


席から立ち上がる科宮さん。それだけで、ふわふわしていた教室の空気がガラッと一変。皆が黙りこんで、その美貌に目を奪われた。

「科宮朋羽です。趣味は料理で、特技も料理です。一年間、よろしくおねがいいたします」

紡がれた声のかろやかさに聞き入り、その残響に心震わせ、余韻は静けさとして伝わる。

男子は心を奪われたように見惚れて、女子はその眩しさに息を飲む。

善城先生でさえも黙りこくって、ぼけーっと大口を開けてみとれているほど。


やっぱりそれほどに、彼女は。

僕の彼女は、可愛いんだ。


数時間後、お昼を回ったくらいの頃。

二人で帰る道。

「今年、科宮さんとようやく一緒のクラスだね」

「言っても二年目だけどねー」

二人で帰るのは、いつの日でも一緒。でも、この季節の二人の帰り道は初めて。

笑顔が一層新鮮に見える。

「今年もいーーっぱい、楽しもう!」

「うん、そうしよっ」

微笑みあう二人、青春してるなぁと思います。

同時に、この子に一目惚れして良かったなーって思います。

ああ、廻り合いの神様。どうもありがとう。

「ねえ…笹間くん」

「うん?どうしたの?」

突然、顔をうつむける科宮さん。いきなり、どうしたんだろうか。

「朝…笹間くんが言ってくれたことなんだけど……」

朝の記憶が脳内再生され、僕が大声で二度目の告白したシーンが映る。

沸騰しそうな科宮さんも。

「あっ、ごっごめん!人前であんな大声、しかも恥ずかしいこと言っちゃって!嫌だったよね!?ごめん!ごめんね!?」

必死になって謝る。嫌われたくない。これで嫌いになられるかもしれないって、僕は考えられなかったのか!?

「違う…」

「へ?!」

「違うよ…そ、そうじゃ…なくて」

まだ俯いたままの科宮さん。その顔が、真っ赤に染まっているのを、僕はまだ知らない。

「謝ってほしかったんじゃ…なくて」

震える声。怖がっているのか、緊張しているのか、恥ずかしがっているのか。

多分最後尾のだ。

頑張っておそるおそる、科宮さんは続けた。

「その…来年も一緒に…って、言ってくれて…」

言い、その顔をぶんっと上げて僕を見つめて。

と思えばしゅんっとそっぽを向きながら。

「う…嬉しかった…だから」

真っ赤な顔が、さらに朝と同じくらいに染まり上がった。沸騰寸前。それでも、言葉は紡がれる。

「来年も…一緒に、見よ?」

はゃ

はひゃああああ!!!

これは…殆んど二度目の告白、返し!

可愛い!可愛い!尊い!

「かわ…」

いいかけて、あややっと口を塞ぐ。

しかし、それがトリガーで。

一気にカアアアアッと赤くなり、限界を突破した科宮さん。目はぐるぐると回って、耳からは煙が出そうなほど。

「て…」

嗚呼、こんなデレデレの科宮さんが、可愛いんだよなぁ…

「て…!」

ほんと、僕の彼女が科宮さんで、良かっ…

「照れるじゃないですかああああああああ!!!!」

「なんでえええええええええええ!?」

腹パン、クリーンヒット。

僕、場外負け。

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