絶対王者は声を隠す〜パーティを追放された「無能」剣士と、異世界からやってきたチート級聖女の冒険記。欲しい仲間は、ツッコミ役。強さは既にSS級なので不要らしい〜
あのイケメンさんの顔は、幸運ステータスの賜物でしょうか
あのイケメンさんの顔は、幸運ステータスの賜物でしょうか
遠視魔法で森林ダンジョンを見渡すと……ああ、居ました居ました。
タンク役のリーダーに魔導士、弓、回復、それに、新しく入った剣士。
剣士さんは、荷物持ちをさせられていますね。
イケメンさんなのに、疲れで顔が歪みきっています。
あれは、荷物持ちさせられているのだけが原因じゃなさそうです。
「はあ。今日は、何を討伐しても消滅しちまって素材剥ぎ取りできねえし最悪」
「誰か、悪運でもついてんじゃないの?」
「今までそんなことなかったんだから、誰かはわかりきってるけどね」
「……え、オレは特についてないっスけど」
「はあ、イケメンくんは顔だけしか取り柄がないんだね」
……ごめんなさい、イケメンさん。
素材剥ぎ取りができないのは、私が原因です。
流石に聖女の私でも、自然の理を曲げるわけには行きません。
なので、イヴの倒したモンスターの素材剥ぎ取り確率を99%にした分、他のモンスターの消滅確率は0%に近い値になるんです。
全て数値を爆上げさせるのは、さすがの私でもできないのです。
だから、イケメンさんに悪運がついているわけではありません。
どちらかというと、彼には幸運ステータスがついていますね。
……と言いますか、あの値は人間のものですか?
幸運ステータスなんて1付いていたらめちゃくちゃラッキーなのに、あのイケメンさんには10も付いていますよ!?
見間違い……ではなさそうですね!?
おっと、落ち着きましょう。
今、気にするところはそこじゃありません。
「っつーか、あんたらの要求が剣士にするもんじゃないんスよ! 防御はタンク、属性付与は魔導士の役目でしょう。なぜ、それを剣士のオレに要求するのかわかんねっス」
「はあ? だって、あの使えないイヴでさえできてたんだよ? なんで、Aランクのあんたができないのよ。おかしいわ」
「そうよ。せっかく、もうすぐSランクになるパーティに入れてやったのに」
「素材の保存もできねえなんて」
「……だからー、その役割もタンクなんだってば。それに、もうすぐSランクっつってるけど、あんたらの適正はせいぜいB。Aも危ういぜ?」
「なっ!? それは侮辱だわ!」
「そうよ! 先日Sランクのドラゴンを倒したのよ!?」
「今までの戦闘見る限り、それは……まあ、いいや」
「ったく、自分が使えねえのを俺らになすりつけんなよ」
「はいはーい」
と、歩きながらではありますが、バチバチとした空気になっています。
イケメンさんは大人ですね。
私が貴方の立場で話せるのであれば、このまま暴言という暴言を吐ききってそのままパーティを抜けてやるのに。
きっと、イケメンさんはこのダンジョンを出たらそのままパーティ解約をするでしょう。
そんな雰囲気があります。
そんな5名のパーティは、Sランクに上がるために森林奥地に居るボスでも倒しに行くのでしょうか。
その道を真っ直ぐ歩いているということは、そう言うことだと思います。まあ、頑張ってください。
にしても私の目で見る限りイケメンさんはAランクですが、タンクと回復はB、弓と魔導士はせいぜいCランクのステータスです。
むしろ、よくそれでSランク相当のドラゴンを倒せましたねと拍手を送りたくなります。
……やはり、イヴは強いですね。
「早く終わらせて、ダンジョン抜けようぜ」
「そうしましょう。ボスって、ダブルベアですよね? 何回も倒してるし、楽勝ですよ!」
「私、終わったら予約してたプラチナネックレス取りに行くんだ」
「えー! あの限定20の!? 予約できたんだ」
「良いでしょう〜」
そうやって外見を飾る暇があったら、魔法のひとつやふたつを覚えれば良いのに。
……なんて、人の価値観はそれぞれですけど。
でも、だからってイヴにおんぶにだっこ状態と気づかず罵倒を浴びせて良いというわけではありません。
私は、そんな奴らをどうしても許せません。こんな怒りを抱いたのは、お母様が居なくなった夜以来です。
あんなやつが、イヴの幼馴染?
腐っても同郷を語らないで欲しいものです。
ほら、イケメンさんもやる気を無くしていますよ。
とっても気持ちがわかります。
ダブルベアは、Aランクの貴方がいればまあ倒せるかもしれませんが……!? ちょ、ちょっと待ってください。あれは……。
「!? 君たち、戦闘準備だ!」
「何よ、急にリーダーみたい、に……!?」
「な、何あれ」
イヴの元パーティたちが道を歩いているとそこに、ダブルベアが出現しました。
しかも、出現率0.1%の凶暴で手がつけられないという亜種です。
A+の難易度としてギルドに登録されている強者ですよ!? もしかして、私がモンスターの素材剥ぎ取りのパーセンテージをいじったからでしょうか……。
最初に気づいたイケメンさんが、背負っていたツインソードを手にとります。
「気を抜いたら、死ぬぞ!」
「え、ちょ、ちょ……亜種!?」
「おー、いいじゃん。倒そう! Sランクパーティになる俺らの敵じゃないぜ!」
「そうですね! 行きましょう」
これはまずいです。
後衛と盾が一切使えないパーティで、Aランク剣士が居ようにも倒せる相手ではありません。しかも、夜で視界は最悪。
パーティ全滅するのはどうぞ勝手にって感じですが、あのイケメンさんに罪はないです。幸運ステータスも、さほど発動しないでしょう。
私は遠視魔法を切り、イヴに向かって「あっ、あっ」と声を発し行きたい方角を指差しました。
すると、HPを回復させたサラマンデルの頭を撫でていた……何してんですか。
あ、今はそれどころではありません。私に反応してくれたイヴは「なんだ、またキノコでも見つけたんか?」と言って、楽しそうに立ち上がってくれました。
アンバーは状況がわかっているようで、イヴを急かせるように髪の毛を引っ張っています。
私なら、ダブルベア亜種を倒せます。
何度か1人で倒していますから。
イケメンさん、それまでは耐えてください。
私の確率変動魔法のせいで、ご迷惑をおかけします……。
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